西部開拓時代の末期、ある男の首に賞金がかけられた。翌日、酒場に持ち込まれた首の数は何と、百六個。どれも紛れもなく本物だ。これは一体どういうことか。
開幕から最大風速で始まった物語は、過去と現在を行き来しながら、賞金首ジョー・レアルと敵対する六人のアウトローの因縁を紐解いていく。酒、暴力、汚れた手で手を取り合う仲間意識と、マカロニウェスタンの雰囲気たっぷりで、往年の映画好きなら思わず嬉しくなる。
真実がわかるほど、語り手含たちは皆、西部劇なら悪役に当たる人物だとわかる。だが、話を追うごとに思わず彼らにシンクロしてしまうほど魅力的な六人だ。本作のホラーとしての真髄は、解明不可能な超常現象や惨劇だけでなく、読者がいつの間にかいずれ因果応報で酷い目に遭うとわかっている悪人の視点に立っていることかもしれない。
報復に来る善良な義賊の主人公の影に怯えながら、破滅に向けて西部の荒野を突き進む、スリリングな読書体験を楽しんでください。
(「ホラー×〇〇」4選/文=木古おうみ)