第8話 デートwith彩 Part1

さて、俺たちは一体どこに向かっているのか。

それは俺だけが知っている。


俺と彩さんは目的地の最寄りの駅に降りる。


「今日はいい天気だねぇ」

「そうですね。少し暑すぎる気もしますが」


今日は五月晴れ。

まだ、5月というのに8月なのではないかというほどの晴天。

雲ひとつないお天気だ。

天気に比例して気温も高い。


「そういえばどこに向かうの?」

「そうですね。水族館にでも行きましょうか」


まず最初の目的地は水族館だ。

というよりも午前中はここですごすつもりだ。

そして実は午後のことは昼食以外一切考えていない。

女の人と遊びに行くことなんてほとんどなかったからどこへ行けばいいのか分からなくなってしまったというのが理由だ。

申し訳ない...。


「どうしたの?そんなしかめっ面しちゃって」

「いや、経験不足の自分を呪っているんです」

「?」


駅から徒歩で15分ほど歩くと目的地の水族館が見えてくる。

俺たちが向かう水族館は日本でも三本指に入るといわれるほどの大きさを持っている。

魚はもちろんのことたこやら貝やらなんか色々いるらしい。

サメもいるとかなんとか。


2人並んで入場料を払い、中へと入る。

もちろん彩さんの分も俺持ちだ。

大丈夫。

アルバイトで稼いだ給料がある。


「なんかありがとね?私の方が年上なのに」

「大丈夫です。こういう時は男が払うべきだと思ってるので」


そのまま目の前にある大きな水槽へと向かう。


「ねぇ、見て!サメ!小さいサメがいる!」

「ほんとだ。あ、カクレクマノミもいますよ」

「ほんとだ!きれーい」


水槽をらんらんとした目で見つめる彩さんはいつものキリッとした雰囲気と違って子供っぽくて可愛く見えた。


「政宗!次行こう!次!!」

「分かりました。そうしましょう」


彩さんが俺の手を引っ張って連れていく。


そこからはひたすら水槽を見て回った。

ふれあい水槽みたいなものがあり、小さな魚達と手だけで戯れる彩さんは絵になった。

イルカショーに行った時は少し水がかかって彩さんの服が少し透けたが俺は平常心を保つことが出来た。


水族館に2時間ほど滞在した後はレストランで昼食をとる事にしている。

時計の針は12時きっかりを指している。

お腹がすくちょうどいい時間だろう。


「彩さん、そろそろお昼ご飯を食べましょうか」

「そうだね。そろそろ出よっか」


そして水族館を出て、徒歩で数分のところにある有名なイタリアンレストランに向かう。

ここの店はすごく人気で予約無しで入店しようとしたら待ち時間がとんでもないことは既にリサーチ済みだ。

もちろん予約を取っている。


「あっ!ここってテレビで紹介されてたところだよね!?」

「そうですね。めっちゃ人気のところです」

「すごく行ってみたかったんだここ!!連れてきてくれてありがとう!!」


気に入られなかったらどうしようと思っていたところだが、そんな心配はいらなかったようだ。

彩さんが喜んでくれて良かった。


店内に入ると、紳士的な店員さんに案内されて窓際の席へと移動する。

ちなみに景色が別段いいわけではない。

でも、どうせなら窓際で景色が見える方がいいだろう。

開放感もあり、食欲も増すのでは?

というのが俺の持論だ。


「ん〜。何食べよっかなぁ」

「どれも美味しそうですね」

「ほんと!!うーん。カルボナーラも食べたいけど明太クリームパスタも捨て難い・・・・」


カルボナーラと明太子パスタの写真を交互に見ながら眉間にしわ寄せの彩さん。

確かにカルボナーラと明太クリームパスタは麺類でかなり美味い部類だと思う。

実際、俺の好物の1つがカルボナーラなのだ。


「俺が片方頼むのでシェアしますか?」

「え!?ほんと!?お願い!!じゃあ、私カルボナーラで!!」

「・・・・うん"ん"っ。じゃあ、俺は明太クリームパスタで」

「どうしたの?具合でも悪い?」

「いえいえ、気にしないでください(ニコッ)」


俺は顔に笑顔を貼り付けながら内心は涙目だった。

というか声を出して叫びたい。

心の中では既に叫んでる。


ぐっはぁーー!!

正直言うとここのカルボナーラめっちゃ美味しそうだから食べたかった!

というか俺が食べたいがためにここを選んだかもしれないと思う所まであった!!

でも、背に腹はかえられん・・・。

また今度食べに来ればいいさ・・・・・。


「ふふ............」

「ほんとどうしたの?大丈夫?」

「あ、ほんと気にしないでください」


ヤバい。

余りのショックに顔に出ていたらしい。

こういうのは今後やめないと。

また1つ学習した。


店員さんを呼んでカルボナーラと明太クリームパスタを注文する。


待ってる間、軽い世間話でもする。


「そういえば政宗って高校じゃどんな感じなの?」

「んー。今と大して変わらないですね。これといって差はないです」


実際ほんとにこんな感じなのだからしょうがない。

委員長とかみたいにカリスマ性があればいいのだが生憎俺はそんな長所は持ち合わせていない。

というかめんどくさくてやりたくない。


「へぇ~。ということは常に女子を口説いているみたいな感じなんだね」

「いやいや、変なこと言わないでくださいよ」


俺はモテない。

年齢=彼女いない歴どころか告白さえされたことがない。

そんな俺が女子を口説いてるなんて・・・・。

恐れ多い。まったくもって恐れ多い。

そういうことはクラスの陽キャ軍団に全任しているようなもんだ。


それから大学の話や他愛もない話を続けているとお待ちかねのパスタがやってきた。


「うわぁ~!おいしそ~!!」

「ほんとですね。すごくおいしそう」


正直カルボナーラが食べたかった(ここ重要)が目の前の明太クリームパスタもすごくおいしそうだ。


「「いただきまーす」」


フォークでくるくると麺を巻いて口の中に運ぶ。

明太子の少しの辛さと濃厚な生クリームがマッチしていて最高にうまい。

そしてその濃厚さをさっぱりとさせてくれる青じそも良い。

これはカルボナーラにも勝る新たなダークホースが誕生したかもしれない。


「おっいし~!!」


カルボナーラを口に含んだ彩さんが頬に手を当て目をキラキラさせている。

そして再度フォークで麺をくるくるさせて口の中に運ぶと今度は口に手を当てて固まった。


「ここのカルボナーラすごくおいしいよ。やばいよ。ほら政宗も」


そういってフォークで巻いたカルボナーラを俺の前に持ってくる。

いわゆるあーんのシチュエーションだ。


「あの、彩さん・・・」

「あーーーん」


これは断れるような雰囲気じゃないな。

彩さんだって顔を真っ赤にしてやってくれているんだ。

フォークだってプルプルと震えてる。

ここで断ったら彩さんにも恥をかかせてしまう。


「あ、あーん」


ぱくっ。

口の中に明太パスタとはまた違った濃厚さが俺を包み込む。

カルボナーラ特有の甘さが口いっぱいに広がる。

濃厚さで言えば明太クリームパスタよりも高い。

これは・・・・・。


「おいしい・・・。めちゃくちゃおいしいですこれ」


このカルボナーラは完全に俺が今まで食べたカルボナーラの中でダントツに美味い。

ほんとに美味。

マジで至福。

ずっと口の中に入れていたい。


チラッと彩さんを見てみるとあーんしたフォークをまじまじと見ていた。


「どうしたんですか彩さん」

「へっ!?いや、なんでもないようん!!??」


その後彩さんは顔を真っ赤にしながらカルボナ―ラを食べ進めていった。

なんか話しかけると彩さんがパニくりそうな感じがしたので何も触れずに俺も明太クリームパスタを食していった。


めちゃくちゃ美味かったな・・・・・・。

またこよう・・・・・・。





――――――――――――――――――――――――――――――

筆者はカルボナーラと明太クリームパスタが二大巨頭だと思ってます。



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【10000PV感謝!!】 気がつけば5人のデレ女子に好意を向けられていたんだが俺は一体どうすれば? 気候カナタ @kokixyz

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