第7話 飽きるまで、ずっと



俺は子供だ。だから、悪い大人に騙される。





黒瀬さんは“恋人っぽいこと”ならなんでもしたがったけれど、この生活を始めてすぐ、それがただおもしろがって興じている遊びであるということに気づいた。


遊びだとわかっているつもりでも嬉しいから、俺はいつも簡単に受け入れる。リュウくんのことが好きだと諭されれば、じゃあいいか、と納得してしまう。



俺は子供だ。



抱きしめられて眠りについたある日のこと、夜中に目を覚まして天井を見つめていたら、寝返りを打った彼が知らない人の名前を呼んだ。



『…レイコ…』



『好き、だ』






俺は利口なタチなのでしばらくは気づかぬふりをしていたが、彼が自分のものにならないと分かったから執着してしまったのか、単に一緒にいるうちに愛が深くなっていったのか…どちらでもいいが、とにかく時間が経つにつれて、胸につかえる嫌な気持ちに気づかないふりはできなくなっていった。



レイコって誰ですか。



ある時、ついに聞いた。





『ねぇリュウくん』



『人を愛するってどういうことだと思う?』



『俺の愛は、少しおかしいのかもしれない』



『本当は、好きな人がいるんだ』



『レイコは俺の』



『血の繋がった妹だよ』






歪んでいるー



でも、理解してしまった。

黒瀬さんは本気なんだ。

気持ちが溢れて、夢にまで見るほどに。









黒瀬さんに言わせると「俺はリュウくんのことがだーい好き」らしく、俺も俺でそんなぺらぺらな言葉に絆されて馬鹿みたいに喜んだりしてしまったが、冷静になってみれば当然そんな訳もなく。



少しは申し訳ないと感じているのか、単なるご機嫌取りなのか、最近の黒瀬さんは頻繁に贈り物をくれるようになった。



それは時に花束で、本で、服で、アクセサリーで。

これでもかというほどプレゼントをもらった俺は、どんなお返しをしたら喜んでくれるだろうかと、毎日そんなことばかり考えている。

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