第4話 依存しよう。
室内は、ただただ殺風景なシンプルな部屋だ。物があまりないくせにただっ広い。
窓際にはデスクがあり、その上にはパソコンが二台置いてある。自宅で仕事をしている人なのだろうか。
気にならないと言えばうそになるが、何しろまだ出会ったばかりだ。聞きたいことは沢山あっても、あれこれ詮索するのはよそうと思った。
俺はますます居心地が悪くなってしまい、困ったような顔で黒瀬さんを見る。
すると、目が合った。
薄茶色の瞳が美しく、今更ながら綺麗な顔だと実感した。
「そうだリュウくん、俺と話をしようか。俺たちはこれから一緒に暮らすんだから、お互いのことをたくさん知る必要がある」
「そっすね」
「素っ気ないなあ。もっとリラックスしていいんだよ?」
黒瀬さんはくすくすと笑いながら、ソファに腰掛けるように促してきた。
俺は素直に応じて、というよりはそうするしかなくて、ぎこちない動きで座る。
ソファの質などはよくわからないが、なんだか高そうなデザインと肌触りだと思った。
いや、ソファだけではない。
部屋においてある家具は、すべてセンスよくまとめられている。
どんな仕事をしている人なのかはわからないが…それなりの金持ちに違いない。
「俺、コーヒー淹れてくるね。ちょっと待ってて」
頷いて、キッチンに向かう後ろ姿を見送った。とても不思議な人だ。
この大人は、どうして俺を拾うなんて言い出したんだろう。
―そして俺は、どうしてその手をとってしまったんだろう。
分からないことは沢山、本当に沢山ある。あの人の考えていることも、俺自身が考えていることも、何一つ明確にはわからない。だから、深く考えるのはやめておこうと思った。
一度冷静になってしまったら、余計なことにまで気が付いてしまいそうだ。目的なんてぼんやりとしたままでもいい。
愛してもらえるのなら、それ以外はどうでもいい。
だから黒瀬さん、俺を、愛して……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます