草凪澄人の決断⑪~大蛇討伐へ~
澄人が大蛇討伐のためにフローズンフロッグを蘇生しました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
氷の親和性を俺へ付与してくれた、凍らせてくるカエルモンスター【フローズンフロッグ】。
大量に捕食をすれば親和性が向上すると予想し、首都を襲おうとしてきたフローズンフロッグを捕食した。
その百を越えるフローズンフロッグをすべて蘇生し、大蛇たちを囲うように穴へ敷き詰める。
そして、氷を付与した魔力をフローズンフロッグへ注いだ。
「「「「「キュィイイイ!!!!」」」」
フローズンフロッグは一斉に鳴き声を上げると、体から冷気を放ち始める。
これはフローズンフロッグの習性を利用したもので、周りに凍り始めた個体があれば釣られたように同じことをするのだ。
(血を流させてはダメなら、氷漬けにしてしまえばいい)
大蛇から流れた血液も凍らせたのか、グラウンド・ゼロの魔法陣が俺の元にこない。
大蛇は氷の牢獄に囚われて身動きが取れず、二匹とも凍らされて動けなくなったようだ。
「あとは粉々になるまで切り刻んでやる」
俺は神器の剣を構えて、二匹の大蛇が凍っている穴を見下ろす。
神気を開放しながら、ポイントで神気を補充していく。
「神の一太刀!! 神の一太刀!! 神の一太刀!! 神の一太刀!! 神の一太刀!!──」
黄金の斬撃が何度も何度も神器の剣から放たれる。
一回目の斬撃でフローズンフロッグもろとも二匹の大蛇が両断され、回数を重ねるごとに小さくなっていく。
バラバラに砕け散ったのを確認してから、俺はゆっくりと息を吐いた。
「ふぅー……止めだ……グラウンド・ゼロ」
最後に欠片さえも残さないため、グラウンド・ゼロで穴があった場所を焼き尽くした。
蛇は跡形もなく消え去り、地面が大きく削れているだけ。
戦いの跡は残っているが、これくらいなら復興が早いだろう。
もう指一本動かせないほどに疲労困ぱいしており、その場に座り込んだ。
(はぁ……やっと……倒せた……回復は……ダメだ疲れる……)
回復薬(特)と交換するためのポイントが残っておらず、無料のモノを選び続ける気力がない。
自然に回復するのを待つため、俺は地面に大の字になって寝転がっていた。
体力的にも精神的にも限界がきており、しばらく起き上がることができないだろう。
(はぁ……終わった……これからどうしよう……ん?)
そんな俺の前へ、いつもの画面が無機質に表示された。
【異界ミッション9 達成】
瘴気発生の原因を解決しました
成功報酬:草凪澄人の神域
(神域なんて入らない。神になりたいわけじゃないんだ)
永遠の命とか、自分だけの世界なんてものには興味ない。
成功報酬を受け取らないためにその画面を閉じると、新たな画面が表示される。
(面倒なんだけど……寝かせて……ええっ?)
画面に映されていたのは、目を疑う内容だった。
【異界ミッション 全達成】
特殊条件を満たしました
異界ミッションの完全達成に成功しました
報酬:原点回帰
特殊報酬:原点回帰(能力等引継有)
説明:原点とは試練の書を読んだ時点に戻ります
記憶を保持したまま過去に戻れます
(……これは絶対に選択しないぞ……全部やり直すなんて正気じゃない)
今まで達成してきたミッションが頭の中で駆け巡る。
苦労したことや楽しかったことを思い出しながら、俺は首を横に振って否定した。
(瘴気発生の原因を解決できた……もうみんなは大丈夫なんだな……)
ここに来た理由である、四百年後の地球にいる家族や友人の顔が浮かぶ。
自分が守りたかったものが守れたことに安堵し、ようやく意識を手放すことができた。
そんな俺の腕を誰かが勝手に動かし、選択肢を選ぶように誘導してくる。
「わかったよ。もう一度やればいいんだな? さっさと終わらせても文句を言うなよ?」
神になった草凪澄はどうしてもこの選択肢を俺に選ばせたいようだ。
こんなことに力を使わないでもと苦笑いをしながら、重い腕を動かして画面に触れる。
(選ぶとしたらこっちだよな)
今の状態でやり直させてくれるのなら、異界ミッションも軽く達成できる。
特殊報酬である【原点回帰(能力等引継有)】を選択して、俺は眠りについた。
◆◆◆
目が覚めると、そこは見慣れた天井が広がっていた。
部屋の中はまだ暗く、夜中のようだ。
体を起こして部屋を見回すと、ここは間違いなく自宅のベッドの上だとわかる。
机に置いてあるデジタル時計を手に取って日付を確認すると、俺が家を出るために部屋の片付けをしていた日に戻っていた。
「本当に戻ってきちゃったのか……どうしようかな……」
足元には試練の書を解読するための紙が落ちており、それを拾い上げる。
そこには俺が暗記した異界の文字がびっしりと書かれていた。
「最初は……挨拶だっけ? あれ? ゴミ拾いからか?」
最初に現れたミッションはなんだったかなと頭を悩ませていたら、扉の向こうから物音が聞こえてくる。
「お兄ちゃん、まだ起きてるの?」
聖奈が俺の部屋の扉から顔を覗かせて俺の様子を怒り気味にうかがってくる。
「寝ようとしていたよ。どうしたんだ?」
俺はできるだけ平静を装い、冷や汗をかきながら聖奈へ声をかけた。
ここが物置ではなく家の方の自分の部屋であることに気付かされた。
「どうしたもこうしたもないでしょ! 明日は奨学生入試で早いんだからもう寝なよ! また勉強していたの!?」
「ごめん、ちょっと……」
「明日は五時起きだからね!! お願いだから寝坊しないでよ!!」
──バタンッ!!
扉が思いっきり閉じられ、そう言い残した聖奈は俺の部屋を後にした。
聖奈がいなくなったことで緊張の糸が切れ、思わず大きなため息が出る。
「なんで俺が家の方にいるんだ?」
布団の上で仰向けになり、自分の置かれた状況を整理する。
俺はまだこの時期、物置で生活をしていたはずだ。
それに聖奈と一緒に暮らしているわけがなかった。
(じいちゃんが俺を追放しているはずなんだけど……あれ?)
とりあえず、五時には起きなければいけないようなので、さっさと寝ることにする。
枕の近くで充電がされていたスマホが光っており、通知が何件も来ていた。
一番上にあった未読メッセージをタップすると、聖奈からだった。
【まだ起きているでしょ!? 早く寝てよね!!】
「俺、もうスマホ持っているの? ハンターになってからじゃなかったっけ?」
よくわからないが、とにかく今は寝るしかない。
時計は既に深夜の二時を過ぎており、起きるまで数時間しか残っていない。
(座ったまま仮眠すれば起きれるな。そうしよう)
立ち上がって椅子に座り直した俺は、机の上にアラームをセットしたスマホを置いて眠りについた。
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ご覧いただきありがとうございました。
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次回エピローグです。
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