瘴気の謎⑬~黒い大樹からの逃走~
澄人が黒い大樹を振り切ってはざまの世界から出ようとしています。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺の足音が響き渡る中、黒い大樹が俺の後を追うようにして根を動かしてきた。
──ブォンッ!!ブォンッ!!ブォンッ!!ブォンッ!!ブォンッ!!
「くっ! そっ!!」
数え切れないほどの根が鞭のようにしなり、俺へと迫る。
避けきれずに神器の剣で切り払った瞬間、再び黒い爆発を引き起こしてしまった。
「切っただけでこれか!!?? うわっ!!」
今度は背中越しに衝撃を受け、爆風によって体が飛ばされる。
湖に落ちた俺は、水面に浮かぶとすぐに顔を出して呼吸をする。
「ぷはぁっ!!」
空気を肺に取り込むと、すぐさま湖の岸へと泳いで向かう。
「はあ……はあっ……」
俺は荒い息を繰り返しながら、背後を確認する。
背後からは黒い大樹たちの根が迫っており、黒い根同士が絡み合って俺の進路を妨害しようとしている。
(あれに捕まったら終わりだ!!)
黒い大樹の根は、俺の身長以上に太い根がいくつもあり、それが蛇のように動いて迫ってくる光景に鳥肌が立った。
俺は捕まらないように水の中を必死に泳ぐ。
黒い大樹の根に巻き付かれたら、俺の体は簡単に引きちぎられてしまうだろう。
追いつかれないように必死に両手足を動かしていたら、黒い恐竜たちが俺の行く手を阻んてくる。
「ちぃ!! しつこい!!」
俺は苛立ちを覚えつつ、黒い恐竜を避けるように迂回して進む。
そして、やっとの思いで対岸へたどり着くことができた。
俺は急いで湖から離れようと走り出したが、黒い大樹と成長した恐竜たちが俺を追いかけてくる。
俺は走るスピードを上げて逃げるが、黒い大樹は根を鞭のようにしならせて地面を叩きつけてきた。
──ズドンッ!!ズドンッ!!ズドンッ!!ズドンッ!!ズドンッ!!
地鳴りのような轟音を響かせて、黒い大樹が叩きつけた根から黒い土埃が舞い上がる。
咄嵯に横に跳んで回避すると、先ほど立っていた場所には黒い大樹の根が突き刺さっていた。
黒い大樹の根がなぎ倒した黒い植物からは瘴気が噴出しており、木々がさらに黒く染まり始めている。
瘴気の噴出はあちこちで発生しており、その勢いが増していく。
(このままだと、俺が逃げ切れたとしても異界への影響が計り知れない……さらには地球へ……どうする!?)
俺は黒い大樹から逃れながら、瘴気を消す方法を必死になって考えた。
今の状況では、ミュルミドネスの話を聞いて考えた賭けの計画は失敗するだろう。
俺は神域で手に入れた七色の芽をはざまの世界でミュルミドネスに育ててもらうつもりだった。
(あいつがちゃんと育ててくれるかってだけの話だったんだけど……こうなってしまったらもう……)
ミュルミドネスの話を聞いて、七色の芽が成長すれば瘴気を浄化してくれると考えたからだ。
だが、はざまの世界に瘴気がまん延している今実行したら、瞬く間に七色の芽も汚染されてしまう。
(手がない! 神の一太刀ですべて吹き飛ばせるかもわからない!!)
見えている植物だけが瘴気を抱え込んでいるわけではない。
足元の地面まで黒いため、少し掘って瘴気が噴き出ても、やっぱりかとしか思わない。
「はぁ……はぁ……どうすればいいんだ……どうすれば」
モンスターを倒さずにあしらい、黒い大樹の根の攻撃を避けていたら息が上がって苦しくなる。
まだ黒い森は続き、一向に異界へのゲートに辿り着けずにいた。
俺のマークとゲートしかない地図を見ながら一直線に進んでいるはずなのに、景色に変化がない。
「……まずいな」
いくら進んでも変化のない風景と、追ってくる根が少なくなっていることに、俺は嫌な予感を覚えた。
それはあくまでも直感にしか過ぎないのだが、俺には確信に近い何かがあった。
「まさか……空間を……」
瘴気が空間に及ぼす影響について考察した瞬間、冷や汗が流れ落ちる。
もし俺の考えが正しければ、瘴気を持つ植物を殲滅しないと脱出できないかもしれない。
しかし、それを実行したときには、相手を滅ぼさない限り俺ははざまの世界から抜け出せなくなることを意味する。
(倒しても倒さなくても結果は同じ……詰んでいるのか?)
俺は絶望的な状況に歯噛みするが、諦めることはできない。
必死に頭を働かせて打開策を考えるが、何も浮かんでこなかった。
そうこう考えているうちに、黒い大樹の根が再び迫ってきたので、剣を構えて迎え撃つ準備をする。
──ブォンッ!!
風を切る音と共に迫ってくる根を剣で受け流す。
黒い根は切られても瘴気を噴出するため、極力切らずにいなすことを意識した。
(この黒い根は……触れたらだめだ)
俺がそう思っていると、俺の進行方向に新たな黒い根が現れて槍のように尖らせて突き刺そうとしてくる。
正面から向かってくる根をかわそうとした時、黒い恐竜が俺を囲んできた。
「待ち伏せ!? やっぱり空間操作しているのか!!」
恐竜と同じように根も現れ、前後左右どちらにも避けることができなくなった。
前から迫る根が俺を貫こうとする瞬間、周辺のモンスターたちが共食いを始めた。
敵の予想外な行動に一瞬呆気に取られたが、すぐに気を取り直して剣を構える。
「こいっ!!」
叫ぶと同時に根が襲い掛かってきた根を、黒い恐竜が切り裂く。
根の断面からは黒い液体が飛び散り、瘴気の爆発を引き起こす。
「なんでっ!? うわっ!!」
黒い爆風によって体が飛ばされ、無防備になった俺を根が突き刺そうとしてきた。
俺は体を捻って回避しようとしたが、間に合わず左腕に黒い根が巻き付いてしまう。
黒い根は俺の腕に巻き付くと徐々に締め付けを強くしていき、骨がきしみ始めた。
「ぐぅっ!! しまった!!」
黒い根を傷つけたくないのは山々だが、拘束されるのはまずい。
俺は痛みに耐えながら右腕で剣を振り上げ、巻き付いた黒い根を切断した。
腕が解放されて自由になると同時に、切り払った根が黒い煙と共に爆発する。
「ぐあっ!?」
俺は衝撃波で弾き飛ばされ、地面に転がった。
「痛ってぇ……!!」
俺は腕に巻き付いていた根を地面へ投げ捨て、立ち上がる。
黒い大樹の根は次々と俺に迫り、黒い恐竜たちも俺に攻撃しようと迫ってきていた。
俺は神器の剣を握りしめ、黒い大樹の根と黒い恐竜の包囲を抜け出そうとした。
その時、先ほど投げ捨てた黒い根がそのままの形で残っていることに気が付く。
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ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は【本当に】未定です。
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