瘴気の謎⑤~エスリンさんに対する澄人の答え~
エスリンさんの質問に対して澄人が真摯に答えます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺はその視線に応え、自分の意見について口にする。
「はい。そして、瘴気はモンスターを生み出す存在だと俺は考えております」
「つまり……モンスターとは自然発生的なものではなく、何者かが生み出しているということですか?」
「そういうことになります。まぁ、それが何者なのかまではわかりません」
エスリンさんは真剣な眼差しで俺の話に聞き入っている。
俺は少しだけ間を置き、話をまとめるように言葉を続ける。
「瘴気を消してモンスターがいなくなったら、開拓者が弱っても何も問題がありませんよね?」
「たしかにそうですね。でも、どうやって……?」
エスリンさんは俺の話を素直に受け入れてくれたようだ。
だが、具体的な方法はわからないらしく、首を傾げている。
俺はそんなエスリンさんを安心させるように笑みを向けた。
「俺に任せてください。この資料と弱体化の話をしてくれてありがとうございます」
エスリンさんは俺の言葉を聞くと、ホッとした様子で微笑んだ。
「いえ、お役に立てたようでよかったです。こちらこそ、貴重なお時間をいただき感謝しております。何かあればいつでもギルドに来てくださいね」
エスリンさんは優しい声でそう言うと、椅子から立ち上がり、俺に一礼した。
俺も立ち上がって一礼すると、エスリンさんは資料を抱えて部屋から出て行った。
(さて……どうしたものかな……)
エスリンさんを見送った俺はベッドに腰掛け、思案に暮れていた。
エスリンさんは俺に期待するようなことを言っていたが、俺は未だに瘴気消滅の解決策を思いついていない。
(リリアンさんは資料が揃ったら連絡してくれるみたいだし……できることを探すか……)
現状の課題を洗い出すために、俺は頭の中で整理を始める。
(なによりも解決しないといけないのは、瘴気の発生場所だ。理由も気になる――)
俺は目を閉じ、腕組みをしながら思考の海に潜っていく。
まったく問題が解決しないまま意識が落ち、気づいた時には朝になっていた。
◆◆◆
翌朝、朝食を終えた俺は首都の大聖堂へと足を運んだ。
リリアンさんの通信によって起こされ、朝一で資料を集め終わったとの報告を受けた。
(2階の隅にある会議室って言っていたな)
大聖堂の1階奥の階段を上り、廊下を進んで目的の会議室の扉を開ける。
部屋の中央には巨大なテーブルが置かれていて、その上に大量の紙束が置かれていた。
「おはようございます。使者さま」
俺が入室したら、リリアンさんが満面の笑みを浮かべ、席を立って軽く会釈をする。
挨拶を返すと、リリアンさんが自分の隣の椅子を引いて座るように促してきた。
(資料が多いな。これだけ集めるのに結構時間がかかったんじゃないか?)
俺は歩きながらテーブルの上に積み重ねられた紙束を見て、心のなかで呟いた。
感心しながらリリアンさんの横に座った俺は、両目の下に隈ができていることに気付いた。
「すいません、昨日の今日で無理させてしまいましたね」
心配になって尋ねると、リリアンさんは笑顔のまま首を振る。
「大丈夫ですよ。これくらい平気です! それに、使者さまから頼まれて嬉しかったです!」
明るい口調でそう言った後、照れくさくなったのか頬を赤らめて俯く。
その仕草はとても可愛らしいものだった。
「それで、どれから読めばいいですか?」
思考を切り替えるように発した俺の言葉を聞いたリリアンさんは顔を上げると、姿勢を正して口を開く。
「はい。まずはこの資料を読んで頂きたいのですが――」
リリアンさんはテーブルの上に置かれた紙の山の中から、1枚の紙を取り出して俺に手渡してくる。
そこには細かい文字で文章が書かれていた。
俺は興味深い内容に思わず黙読してしまった。
【雨によるモンスター出現頻度の変化について】
雨が降るとモンスターの出現率が上がるという現象が確認されている。
この原因については未だ解明されてはいませんが、いくつかの説が存在する。
1つ目は、モンスターたちが水を求めて人里へやってくるというもの。
この説によると、大雨が降っている日にモンスターが出現しやすい。
2つ目が、雨によりモンスター自身が強くなるという説。
この説では、強い力を手に入れたモンスターが人間の血肉を求めるとされている。
3つ目に、モンスター自体が進化するという説。
------
(雨とモンスターの活動状況については調べられていたのか……こんなに?)
リリアンさんから渡された資料を読み終えた俺は、机の上に広げられた大量の資料集に視線を向ける。
ざっと見ただけでも、百冊以上の本が置かれている。
大聖堂の地下にある巨大な資料庫の中から持ってきたものだろう。
(この量の情報を1人で集めたなんて凄いな……)
リリアンさんの努力と苦労を考えると、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。
(よしっ! やるぞ!!)
気合いを入れ直した俺は、早速読み始めることにした。
だが、この大量の資料を読むためには、かなり時間がかかることが予想される。
別の資料を手に取ろうとした俺はリリアンさんが疲労を隠しきれずにフラフラとしていた。
「資料ありがとうございます。リリアンさんは休んでください」
「ですが……これから資料を……」
「大丈夫です。資料を片付けるときに手伝ってください」
遠慮しようとするリリアンさんにそう伝えると、俺は積み上げられた資料に手を伸ばした。
リリアンさんは俺の方に顔を向け、申し訳なさそうな声を出す。
「すみません……お言葉に甘えさせていただきます。何かあればお呼びください」
そう言うと、リリアンさんは俺に一礼してから部屋を出て行った。
(さて……始めようか……)
俺は積まれた資料に向き合うと、一心不乱に資料に目を通し始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は【本当に】未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー&いいね】をよろしくお願いいたします。
これからも頑張るので応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます