臨時世界ハンター会議⑫~ガーディアンオーガ戦~

森を守護するガーディアンオーガと澄人が戦っています。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(ぐぅううっ! しのぐためだけに草薙の剣を使うことになるなんて!!)


 持っていたアダマンタイトの剣を真っ二つにされたため、壊れることのない草薙の剣で相手の攻撃を受ける。


(重い!! それに速い!)


 受け流そうとしたが、あまりの重さと速さに対応できず、地面を転がるように吹き飛ぶ。


 なんとか立ち上がるが、今度は俺が攻めに転じる余裕がなかった。


「ガルルルゥ……」


 俺を睨みつけるように見ていたガーディアンオーガは、静かに息を吐き出す。


 魔法防御力が高いのか、雷による行動の制圧が一切効かず、相手の身体能力に圧倒される。


「来るか……」


「ガァアアア!!!」


 大きく吠えると、一段と速く距離を詰めてきた。


 俺は咄嵯に草薙の剣を盾代わりに使い、敵の攻撃を受け止める。


 ドゴ!!


「ぐぁあああっ!!!」


 受け止めることには成功したが、勢いを殺すことができずに後方へと押し込まれ、盛大に吹き飛ばされてしまった。


 地面に打ち付けられている俺に追いついたガーディアンオーガは、持っている剣を高々と両手で掲げる。


「まずいっ!!」


 嫌な予感がして急いで起き上がるが、すでに遅く、ガーディアンオーガが力いっぱいに剣を降り下ろしていた。


 俺はその場から横に転がり、紙一重で攻撃をかわすが、剣圧だけで体が宙に浮いてしまう。


「くそっ……なんて馬鹿げた威力だ」


 何とか着地するが、そのまま追撃されないようにすぐさま立ち上がり、草薙の剣を構える。


「グァウウッ!! グギャオオオン!!!」


 再び剣を頭上に掲げ、雄叫びを上げた。


 雄叫びが魔力を含んでいるのか、ビリビリと大気を震わせるほどの衝撃を受ける。


(これは……もしかしたら……)


「ゴアァアアッ!!!」


 突っ込んできたガーディアンオーガは、剣をさらに大きく振りかぶってから、俺目掛けて渾身の一撃を放ってきた。


「もらったぁ!!!!」


 迫りくる巨大な剣を見ながら俺は叫ぶ。


 この大振りになるタイミングを待っていたのだ。


「喰らえっ!!!!」


 草薙の剣から黄金の光が溢れ出し、俺は全力で剣を振るう。


 剣から放たれた黄金の光は、先ほどと同じように森のすべてをなぎ払いながら、一直線に突き進む。


「グルル……ギィイイッ!?」


 黄金の光に飲み込まれたガーディアンオーガは、断末魔の声を残して跡形もなく消え去った。


 俺は草薙の剣をアイテムボックスに収め、荒れ果てた森を見渡す。


「倒せたか……魔力で確保なんてできなかったな……」


 神気創造で魔力から神気を作り出し、草薙の剣へ注ぎ込んでいたせいで、ろくに戦うことができなかった。


 雷による制圧が失敗した時点で、神の一太刀による攻撃で倒すことに切り替えた。


 その結果、俺は無事に勝利できたのだが、倒したモンスターが消えてしまい、スキルを何一つ回収することができなかった。


(あれだけ強かったら、俺の持っていないスキルも持ってそうだったのに……・)


「はぁ……」


 残念という気持ちとともにため息をつき、その場に座り込む。


 しばらくボーッとしていると、急に視界がぼやけてきた。


「ん? なんだ……これ……」


 急に眼がかすんだのかと思って目を擦るが、それでも治らない。


 意識が遠退いて体に力が入らず、呼吸をするたびに頭の奥がズキズキと痛む。


(魔力欠乏症……か?)


 前にも一度だけなったことがある症状だが、その時は回復薬を飲んでしばらく休んだら回復したはずだ。


 今回は前回よりも症状が重い気がする。


 このままだと死ぬかもしれないと思い、慌てて回復薬を取り出して口に含むが――。


「まったく治まらない……神の祝福って体調も回復する……よな?」


 予想外の強敵と戦ったことで体が疲弊してしまったようだ。


 体調を治すためだけに神の祝福を使ったことがなかったため、不安になりながらスキルを実行した。


 すると、痛みが嘘のように引いていき、倦怠感までもが消える。


 やろうと思えば異界調査を続ることもできるだろう。


「よし! まだ大丈夫そうだな……」


「ふぅ……」と息を吐き、安心していると突然、背後に気配を感じた。


「なに!?」


 新たな敵が現れたと距離を取りながら振り返ると、そこには一人の女性が立っており、俺のことを見つめている。


 その女性は美しい白髪を肩まで伸ばしており、瞳は宝石のような赤色をしていた。


 身長は160cmほどで、年齢はお姉ちゃんと同じくらいに見える。


 そしてなにより目を引くのが、背中から生えている純白の大きな翼だ。


 まるで天使が目の前に現れたような感覚に陥り、思わず見惚れてしまう。


「神域に至る者よ」


 透き通るような声で問いかけられた瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。


「えっと……俺のことですか?」


 戸惑いながらも聞き返すと、彼女はコクリとうなずく。


 なぜ彼女がそんなことを言ったのか理解できずにいるのを気にせず、女性が口を開く。


「この世界を救いなさい。さすれば神域への道が開かれるでしょう」


「異界を救えば神域へ行けるんですか?」


「そうです……ですが、今ではありません……」


 女性の言葉を疑問に思い、質問を投げかけるが、答えを聞くことはできなかった。


 次の瞬間には俺の前から姿を消していたからだ。


「いったいなにが起きたんだ……」


 突然の出来事に呆然としながら呟く。


 今起きた出来事を整理しようと頭を働かせるが、結局答えが出ることはなかった。


「今じゃないならいつなんだよ……」


 不満を口にして、深い溜め息をつく。


 俺が不満を口にした途端、誰かが聞いていたかのように画面が飛び出してきた。


【異界ミッション7】

 解放条件:ユニークモンスター【???】の討伐

 条件開示まで335:59


(二週間後に解放条件を開示? ……あの女性もこの画面へ干渉できるってことか?)


 いつなのかと聞いたタイミングでこの画面がでるとなると、そうとしか考えられない。


 それにしても、どうして先ほどの女性はこんなに回りくどいやり方をしているのだろうか。


「まぁいいや……とにかく今は帰ろう」


 俺は考えることを止め、ワープを使って家へと戻った。


「ただいま~」


「おかえりなさい」


「あら? 澄人、早かったわね?」


「うん、待たなきゃいけないことになったみたいだから」


「待ちなさい」


 リビングにはいると、ソファーに座っているお姉ちゃんが声をかけてくれた。


 ただ俺の姿を見て、部屋に入るのを制止してきた。


「着替えてきなさい、全身泥だらけよ?」


「あ、うん。そうするよ」


 どうしてこの姿になったのか詳しく聞かないでくれていることが逆に嬉しい。


 自室に戻ろうとしたとき、臨時世界ハンター会議が明後日開幕するというニュースがテレビから聞こえてきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は未定です。

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