臨時世界ハンター会議⑧~アイテムの譲渡~
澄人が夏澄へ八咫鏡を渡しております。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「八咫鏡を私のために!? それは……えっと……求婚ですか!!??」
「そんなわけないでしょう!?」
「お兄ちゃん!? 結婚しないで!!」
お姉ちゃんが思わず突っ込むと、聖奈が悲鳴のような声を上げて抱き着いてくる。
「違うから! 夏さんは八咫鏡に選ばれた人だから作ったんだよ!」
「選ばれた人? どういうこと?」
「聖奈さん、落ち着いてください。私が説明いたします」
聖奈が興奮した様子で俺の肩をつかんで揺さぶっているのを、夏さんが必死に止めてくれた。
聖奈が落ち着いたところで、夏さんが持っていた八咫鏡を見ながら口を開く。
その説明が始まったとき、俺の前へ新たな画面が表示された。
【報告】
神器【八咫鏡】を制作したため
休止中だった【八咫鏡】を消滅させます
(なるほど……形を保てる神器は一つだけなんだな……まずいことをした)
俺が新しく八咫鏡を作ってしまったため、異界にあるヨルゼンさんの持っている八咫鏡が消滅してしまったようだ。
神官長だけが持つことの許されるものを消滅させてしまい、今頃混乱しているに違いない。
「ということがありまして、私は八咫鏡と相性が良いようなのです」
夏さんが丁寧に説明している横で、俺はふとあることが気になった。
(それならどうして異界とこちらに八咫鏡があったんだ?)
水鏡家に保管してあった八咫鏡を割ったせいで夏さんは水上家を追放された。
(異界のヨルゼンさんが持っていたものと、水上家で保管されていたもの……どうして【2枚】あるんだ?)
同じ神器が二つ存在できないことは、俺が今証明した。
なによりも、神器の特性として【不壊】というものがあるため、壊れてしまったのもおかしな話だ。
(もともと壊れるように仕組まれていた? いや、それだったら夏さんの手元に欠片が引き寄せられたのも――)
俺が2枚あった八咫鏡について考えていると、聖奈が俺の顔を覗き込んでくる。
「お兄ちゃんどうかしたの?」
「いや、なんでもないよ。夏さん、説明は?」
「終わりました……でも、本当に私がいただいてもよろしいんですか?」
聖奈へ笑顔を見せたあと、夏さんが両手で大切そうに八咫鏡を持ったまま上目遣いで俺を見てきた。
「もちろんですよ。八咫鏡に選ばれたのは夏さんですから」
「ありがとうございます!!」
俺が笑顔でうなずくと、夏さんが嬉しそうに満面の笑みを浮かべてお礼を言ってくれた。
ついでにお姉ちゃんにも渡すものがあったため、アイテムボックスから例の物を取り出す。
「あと、お姉ちゃんにもこれ」
「ん? なに……えっ!?」
俺がお姉ちゃんへ手渡したのは、侵略戦で皇高校に勝ったときの戦利品としてもらった八尺瓊勾玉だ。
今は【陽】という表記があるが、使用できるスキルは変わっていない。
(結界を作って身を守るお姉ちゃんなら、この勾玉との相性も良いはずだ)
突然の出来事に驚いているお姉ちゃんへ、夏さんが手元を覗き込む。
「澄人さま、香さんは勾玉と接点がありませんよね? やはり求婚ですか?」
「えっ!? えっ!? 澄人!?」
夏さんの言葉に反応したお姉ちゃんが顔を真っ赤にして、俺と勾玉を交互に見ている。
真っ赤に染まったお姉ちゃんの表情を見て、笑いながら否定をする。
「違うよ。お姉ちゃんの結界を強化しようと思ってね」
「あー……そうなのかー……そっかぁー……」
「その勾玉には精神攻撃に対抗する手段もあるので、持っているだけで守ってくれます」
俺の説明を聞いて落ち着きを取り戻したのか、お姉ちゃんがパタパタと手で顔を扇いだ。
そんなお姉ちゃんの横にいる聖奈が期待するような視線を俺へ向けてくる。
ここにいる3人のうち2人に何かをあげておいて聖奈だけ何も渡さないというのも心苦しい。
(手持ちにはもう聖奈が使いそうなものがないから……アイテムショップに何かあるかな?)
アイテムボックスから何か探すふりをして、手持ちの貢献ポイントで交換できるアイテムを眺める。
武器の項目へ目を移し、聖奈の持っているアダマンタイトの剣よりも良い物を探す。
(聖奈が喜ぶような刀……どんな物がいいかな……)
交換できる武器の中にはスキルを付与されている物があるため、聖奈の戦闘スタイルを助ける刀にしてあげたい。
聖奈は刀による攻撃をメインに戦っているため、身体能力の向上などの補助してくれるものが良いだろう。
(スキル付きは高いけど、聖奈にあげるんだけらポイントは考えないようにしよう)
【剣術】や【体術】など、戦闘に役立つスキルが付いている商品を探していると、1つの品が目に止まった。
『準神器:
聖属性が付与されており、攻撃力上昇、状態異常耐性、衝撃緩和といった効果を持つ。
名前も聖奈に似合いそうだと思い、値段を確認すると持っているポイントギリギリだった。
(……いや! 聖奈のためだ! これがいい!)
俺は思い切って購入ボタンを押し、冷静を装って聖奈へ声をかける。
「聖奈にはこれをプレゼントするよ」
「え? 何これ?」
「【光清】っていう日本刀だよ。光る清いって書いて、光清。使ってみてほしいな」
俺が説明しながら聖奈へ手渡すと、彼女は不思議そうに刀を見ていた。
「……こんなに高そうなものもらってもいいの? すごい刀ですよね?」
聖奈が武器の鑑定もできる夏さんへ同意を求めるように刀を差し出す。
刀をじっと見つめていた夏さんはみるみる顔色を変えていき、震えるような声でつぶやく。
「これは……準神器!? それにスキルが4つも付与されています!」
「えっ!? 嘘!? お兄ちゃん!! どういうこと!?」
夏さんの発言で聖奈が慌てて俺の肩をつかんで揺らしてくる。
その勢いで【光清】を落としそうになるが、しっかりと持ち直させてから答えた。
「聖奈にぴったりの武器だと思うんだけど、受け取ってくれるかな?」
「…………ありがとうお兄ちゃん……大切にするね」
聖奈は俺が問いかけると、光清を大切そうに抱きしめながら笑顔でお礼を言ってきた。
喜んでくれたことにほっとしていると、夏さんが少し不安げな表情をしている。
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次回の更新時期は未定です。
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