臨時世界ハンター会議③~祖父の話~

澄人が祖父である正純の話を聞いております。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「そのほかにも、初代様は光り輝く剣を取り出し、魔物を次々と斬り伏せたと伝えられておるな」


「そ、それは……」


 師匠はじいちゃんの話を聞き、口を開けたまま固まってしまった。


 お姉ちゃんは興味深そうな表情でこちらを見てくる。


「へー……澄人も光の剣を持っているわね」


「持ってるよ。じいちゃん、ほかに初代さまはどんなふうに戦っていたの?」


 草薙の剣を初代さまが持っていたことは異界で聞いたことだった。


 じいちゃんの知っている初代さまのことで、俺が知らないことがあるかもしれない。


「うむ、他にもじゃな……」


 じいちゃんは嬉しそうに話をしてくれたのだが、途中で香お姉ちゃんによって止められた。


「おふたりとも、話が逸れています」


「おお、すまぬ。澄人苦労をかけるが頼むぞ」


「うん、任せて」


 俺が胸を張って返事をすると、お姉ちゃんがじっと見つめてくる。


「……澄人、私からもお願いがあるんだけど」


「なに?」


 お姉ちゃんは真剣な顔で俺を見つめ、テーブルの上で手を組んでいた。


「いえ、私のはまたでいいわ。それよりも、一度ゆっくり家で休みましょう? あなたもあまり帰っていないでしょう?」


 香お姉ちゃんは心配そうにこちらを見ながら話題を変える。


 家に帰っていないのはお姉ちゃんも一緒なので、苦笑いを浮かべてしまう。


「そうだね……でも、それはお姉ちゃんもでしょう?」


「まあそうね……最近ギルドハウスに泊まってばかりだわ」


 二人で苦々しく笑っていると、師匠が腕を組んで大きくうなずいている。


「今日は二人とも家に戻って休むといい」


「いいの!?」


「ありがとうございます」


 驚く俺とお礼を言うお姉ちゃんの声が重なり、お互いに見合ってから頭を下げて退出した。


◆◆◆


「澄人、次の境界はどこに発生しそう?」


「南東に130メートルくらい……ランクは【F】だよ」


 俺はお姉ちゃんたちと一緒に境界が発生する場所へきていた。


 試験のために境界を確保する件が正式に草根高校から清澄ギルドへ依頼された。


(なるべく自然を装って境界を購入したから、今日で全部終わりそうだな)


 今いる4ヵ所目の境界群生地で最後になる予定だ。


 お姉ちゃんたちに境界の登録と維持の処理を担当してもらっており、探すだけの俺はやることがなくなってしまった。


「あーきれいな青空だ……みんな頑張っているな……」


 地面に腰を下ろし、空を見上げてぼやくようにつぶやく。


 白間くんや楠さんなども手伝いに来てくれており、忙しなく動き回っている様子がここからでも見える。


「俺は動くなって言われたから、休ませてもらおう」


 俺の近くにある境界探索のための拠点作りも終わっていたため、もうすることがない。


「まだ昼前だけど、余った時間はどうするんだろう? まあ、帰るだけかな」


 そんなことを考えながら目を閉じて仮眠を取っていると、誰かに体を揺さぶられる。


「ん……」


 俺はゆっくりと体を起こし、あくびをしながら周りを見る。


 そこには、俺を見下ろすお姉ちゃんの姿があった。


「真冬にこんなところで寝たら風邪ひくわよ」


「……おねえちゃん?」


「ほら、立って」


 お姉ちゃんに手を引かれて立ち上がり、伸びをしつつ手を取る。


「ありがとう」


「ええ……あなたのおかげで必要な数の境界を確保できたわ」


「それならよかった」


 俺は笑顔のお姉ちゃんを見て安心し、スマホで時計を確認する。


 午後1時を過ぎていたので、ちょうどいい時間になっていたようだ。


「もう帰るの? みんな撤収しているみたいだけど……」


 お姉ちゃんと夏さん以外の気配がこの周辺からいなくなくなっており、取り残されたような気分になる。


 返事をせずに黙っているお姉ちゃんを不思議に思いつつ、俺は質問を続けた。


「お姉ちゃん?」


 言葉が届いているはずなのに、お姉ちゃんは顔を伏せたまま何も言わない。


 その表情は何かに迷っているように見えた。


「あのね澄人……この前お願いしたいことがあるって言ったじゃない?」


「うん」


「…………今聞いてくれる?」


「もちろん」


 俺が返事をすると、お姉ちゃんは深呼吸をして顔を上げた。


「私……わたしね……あなたと勝負がしたいの……真剣に……」


「わかった」


 お姉ちゃんが何を言ってくるのかわかっていたので、驚きはしなかった。


 ただ、身近にいる女性がこんなに好戦的なのはどうしてだろうという疑問が浮かんでいる。


「……本当にいいの?」


 お姉ちゃんは俺が早すぎる返答をしたため、不安そうな顔でこちらを見つめてきた。


 いつもとは違う弱々しい姿を見た俺は、微笑みかけながら答える。


「いいよ、お姉ちゃんと戦う」


「……ありがとう澄人」


 ほっとした様子で胸をなでおろしたお姉ちゃんの顔は、とてもうれしそうだった。


「じゃあ、どこでやるの?」


「最後に見つけた危険度Fの境界内で行いましょう。それなら周りへの影響を気にしないで済むわ」


「うん、じゃあ行こう」


 お姉ちゃんと俺は並んで歩き始め、境界の中へ入っていく。


 俺が中に入ると青い光に包まれ、お姉ちゃんが立ち止まってこちらを見ていた。


「邪魔をしてくるモンスターはいないと思うけど、一応見回りましょうか」


 お姉ちゃんはそう言って剣を鞘から抜き、境界内の探索を始める。


 俺もアイテムボックスからアダマンタイトの剣を取り出し、お姉ちゃんのステータスを覗きながら後を追った。


【名 前】 草壁澄香

【年 齢】 22歳

【神 格】 7/8(+1)

【体 力】 140,000

【魔 力】 50,000

【攻撃力】 S

【耐久力】 A

【素早さ】 S

【知 力】 B

【幸 運】 B


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は未定です。

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