開拓者⑧~他の開拓者との交流~

澄人(ジョン)がイアン以外の開拓者と交流しております。

お楽しみいただければ幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おう、坊主。依頼を探すなら、俺が取ってやるぞ」


「いえ、大丈夫です」


「そうか……あの嬢ちゃんたちが張り終わったみたいだから、もう少しすれば落ち着くと思うぜ」


 筋肉質な男性は肩を落としてじゃあなと言い、依頼書を提出するために受付へ向かった。


「じゃあ私も行くね。またね、ジョン」


「ああ、またね」


 アルマも依頼書を持っており、その男性へ付いていくように俺たちから離れた。


 俺たちは邪魔にならないように移動する。


「なんなんだ、あいつらは!」


「イアン、落ち着いてください」


「だって、いきなり俺のことを無視するように話を始めて……」


 イアンは俺の服の裾を握りしめ、必死に訴えかけてきた。


 そんな俺とイアンが座っているテーブルへ挨拶もなく、1人の男性が椅子に腰を掛けた。


「まあ、そう言ってやるな。ジョンは俺に勝ったんだからな」


「レックスさん……そうですよね……ジョンはすごいやつです……それに比べて俺なんて……」


 急にレックスさんが表れてもイアンは表情を曇らせたまま頭を両手で抱え込み、机へ突っ伏してしまう。


 俺はその言葉を聞き、周りがこちらを気にしているのはその理由なのかと納得してしまった。


「すみません。僕のせいで」


「いいって。それより、ジョンは依頼を受注するのか?」


「いや、こんな状況なので今日は辞めておきます」


 椅子から立ち上がり、集会所を出るためにマントを羽織る。


 イアンは机に伏せたまま、片手を上げてあいさつをしてくれた。


「それではまた」


 二人に背を向けて集会所を出た俺は、路地裏に入り身を隠す。


 しばらくしてから俺のことを見ている人がいないことを確認した後、永遠の闇を発動させる。


 所長室や受付の後ろにある職員のスペースに色々な資料があった。


 あの中に俺の欲しい情報がないのか探す。


 俺はもう一度集会所に入り、誰にも気づかれないまま所長室の前に立つ。


 誰かが来ないと入れないな……ん?


 息をひそめていると、中から所長が誰かとしている話し声が聞こえてきた。


「シエンナ、さっきの二人が言っていた村の資料はあったか?」


「ありました……が、二人の話していた内容に相違はありませんでした」


「……ふむ。ご苦労だった、下がってくれ」


「はい。失礼します」


 グリーンバーグさんに退室するように言われたシエンナさんが扉を開けてくれたため、体を滑り込ませる。


 所長室に一人になったグリーンバーグさんは窓の近くに立ち、外を眺めていた。


「ジョンは神の使いではないのか? だがあの力は……」


 独り言をつぶやき、机の上に置いていた書類を手に取り、目を通す。


 グリーンバーグさんは眉間にしわを寄せて、険しい顔をしている。


「ジョンは神に選ばれた存在なのか? だとしたら、なぜ今まで誰もその存在に気が付かなかったのだ?」


 一人で呟き続けるグリーンバーグさんが何を読んでいるのかと思い、手元を覗き見る。


「ん? これは……俺のことが書いてある?」



【H級開拓者 ジョンについて】

 能力不明

 職員の鑑定スキルによる能力判断ができませんでした。

 何かしらの保護が働いている可能性があります。



 グリーンバーグさんが手に持っていたのは、誰かに俺のことを調べさせたメモのようだった。


 いつの間にか俺の能力が誰かの鑑定によって暴かれそうになっていたようだ。


 俺は能力がバレなかったと安心しつつ、神格が6になって追加された機能に感謝する。



【秘匿機能】

 指定した対象者の能力と使用したスキルがわからなくなります

 対象者(草凪澄人本人 従者)

※使用の際は、必ず使用者が対象を指定してください

※この機能は、他者からの認識を阻害できます



「はぁ、彼が神の使いだったら領主さまに良い報告ができたんだが……わからないじゃ何も言えんな……」


 グリーンバーグさんはため息をつき、椅子へ座ってから引き出しへ持っていたメモを入れる。


 椅子へ腰を下ろしたグリーンバーグさんが机の上に重ねてあった別の資料を手に取り、目を通し始めた。


 後ろから見ている感じでは、所長としての仕事を行なっているようだ。


 作業に集中しているようなので、俺は壁沿いの棚に並べてある資料を漁ることにした。


 神の使いについてなにか載ってればいいんだけど……。


 グリーンバーグさんは俺のことを神の使いと呼ぼうとしていた。


 それが何を表しているのか俺にはまだわからないが、おそらく異世界の人よりも強いことを示す言葉だと思われる。


 推測じゃなく、俺は確信が欲しい。けど、これだといつ分かるのか……。


 さっと目を通すだけでも一日以上かかりそうな資料の量にめまいがしてきた。


 俺は一番下の段にあった資料を手にとって、パラパラとめくっていく。


「ビンゴ……これだ……」


 俺はページをめくる手を止めた。



【異世界からきた神の使者に関する記録】

・約100年前、当時の領主様は神の使いの訪問を受けた

・神の使いは見たことがないような素材で作られた武具を持っている

・当時、開拓民の中で一番強かったA級開拓者10人が束になり、やっと互角に渡り合えた

・神の使いは領主様に、自分と同じような人間が召喚されていることを伝えた



 ここに記載されている内容は、俺が読んだ本と同じ内容が書かれている。


 つまり、俺以外にも異界の人と接触をした人間がいるということだ。


 俺はその記述を見つけた後、すぐに他の資料も確認していく。



【神の使者についての考察】

・使者は、我々の想像を超える力を有している

・使者の来訪により、我々は未開の地へ足を踏み入れることができるようになった

・現在、使者は1名のみ確認されているが、他にも存在している可能性がある

・使者は、我々が知らない言語を話している

・使者は、神の力の一端を行使することができる



「神の力……神器のことか?」


 俺はそこで読むのをやめ、資料を棚へ戻す。


 神の使者に関する資料を読み終えるまで1時間ほどかかってしまった。


 俺は【神の使い】という言葉について、考えを巡らせる。


「神の力か……」


 神器による能力行使は確かに神の力と呼べるものかもしれない。


 でも、ハンター協会には俺以外に神器を使う人の情報はなかった。


「そもそも、俺以外の神の使いはどんなやつだったんだ?」


 俺はそう呟いてから、神器に関する情報がないか、もう一度資料を探し始める。


 俺がここに来てから、2時間が経とうとした時、部屋の外から足音が聞こえてきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。

大変励みになります。


次の投稿は12月24日に行います。

次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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