草凪澄人の影響力⑦~救助へ~

【異界ミッション②:異界内でユニークモンスターを鑑定しなさい】

 貢献ポイント:5000


 異界に突入するとミッションが表示されるものの、今はそんなところではないので消して洞窟の外へ出る。

 先に入っていた先生は周りを見ながら立ち尽くしていたので、慌てて声をかける。


「先生! みんなはどこですか!?」


 俺の声に反応してくれないため、何かを探るように周囲を見ている先生の前に立つ。


「さっきの人から何か聞いていないんですか!?」

「聞いたんだが……二手に分かれているらしい……どちらを優先すべきか考えているんだ」


 先生が俺と先輩を見て、何かを迷っているように眉間へしわを寄せている。

 俺は大まかな位置を把握するために、周囲へ雷を走らせた。


「聖奈とその他の人が分かれた……で合っていますか?」


 雷がいくつか動いている人を感知し、その特徴から自分の予想を口にする。

 すると、ぎょっとしながら俺を見る2人を後目に、状況の説明を始めた。


「聖奈の方は暴れまわっていて若干押しています。逆に、その他の方が戦えない人がいるのか動かない人がおり、敵の数がほとんど減っていません」


 雷に意識を集中させ、感知したモノの動きを見通した。

 また、先生があの短い時間で詳しい位置まで教えてもらっていないと思うので、付け加えて説明する。


「山が見える方向には聖奈が、森の中にその他の人がいます」

「そこまでわかるのか!?」


 雷の力を応用してここまでできることを他人へ言っていないため、先生は少し戸惑いながら俺を見る。

 天草先輩も面を食らうように俺へ顔を向けていたが、気にせず先生へ意見を求めた。


「それで、どうしますか?」

「……お前なら誰がどこにいるのか常にわかるんだよな?」

「半径1キロの範囲なら絞れます」

「1キロ……探索系ハンターが不要だな……」


 今の会話で余裕が生まれたのか、苦笑しながら平義先生は俺を見ながら山を指で示す。


「澄人は聖奈を回収後、森にいる俺たちに合流してくれ」

「わかりました。みんなをお願いします」


 先生と天草先輩が森に向かって走り出すので、俺も聖奈の援助のために山へ向かう。


「なんでこんなにスライムの死骸が……」


 聖奈の下へ向かう道中、なぜかスライムが倒されたまま消えそうな気配が無い。

 いつもなら倒して数分で消えるものが点々と存在している異様な光景に、聖奈が戦っている相手が普通のスライムではないのかとも思えてきた。


(ただ、鑑定結果は全部スライム……どういうことだ?)


 鑑定をしても、地面に残されているものはスライムということしかわからない。

 また、聖奈が押していると思っていた戦況も、数が減っては補給されているため、よく分からなくなっていた。


(いた! 聖奈! でも、相手は普通のスライムだ)


 剣でスライムを次々と両断している聖奈を援護するために、視界入っているすべてのスライムを火の精霊で焼き払うために魔力を込めた。


「火の精霊よ!!」


 聖奈へ気付いてもらうために声を出し、スライムの殲滅を精霊に任せる。

 視線が1度だけ合い、聖奈が俺のそばまで跳躍してきた。


「お兄ちゃん、おかしいの! こいつら、倒しても倒しても起き上がってくる!」

「そう……みたいだな……」


 火の精霊によって消し炭になったはずのスライムが、なんともなかったかのように復活している。

 舌打ちをしながら剣を振り上げる聖奈は一振りで複数のスライムを倒しているため、このまま連れて帰ることはできそうだ。


(だけど、このスライムが増殖したら手を付けられなくなる)


 何度倒しても復活するスライムを放置したら、この辺り一帯がスライムだらけになってしまうだろう。

 それを阻止するために目を凝らして倒されたスライムを見ていたら、超高速で移動する何かを雷が感知した。


 速すぎて今まで分からなかったスライムの死骸に侵入しているものを雷で捕捉する。


【ユニークモンスター】

むげんスライム


【異界ミッション②達成】

 貢献ポイントを授与します


 ∞スライムを鑑定した直後、ミッションを達成する画面が表示された。

 このスライムは聖奈が倒した相手へ乗り込むように高速で中へ入り、一瞬で復活させている。


(これは数が減らないはずだ……)


 元凶を止めなければこのスライム地獄が永遠に続くので、俺はユニークモンスターを討伐するために雷を網状に展開した。


「聖奈! スライムを倒す時、なるべく同じ場所になるようにしてくれるか!?」

「わかった!」


 土の精霊でスライムの進行の邪魔をして、なるべく固まるように誘導する。

 それをまとめて聖奈が倒すと、∞スライムが死骸の山の中に突っ込んだ。


「捕獲!!」


 雷で感知した大きさよりも細かい目で網を作ったので、これを抜けられるはずはない。

 逃げられないように網でスライムをまとめ、火の精霊を召喚する。


「火の精霊よ!! このスライムの山を一片の欠片も残さず燃やし尽くせ!!」


 すべてのスライムが体の外側から焼かれ始め、消し炭になった死骸は網目を超えて塵になる。

 やがて網が小さくなっていき、1匹のスライムが網の中に残された。


【スライム:∞スライム寄生中】


 そのスライムを鑑定すると、∞スライムが中に入ったままになっており、いくら倒そうとしても復活してくる。

 網で確保されているスライム以外を殲滅した聖奈が俺に近づいてきた。


「他のスライムが起きなくなったけど、このスライムが原因?」

「このスライムの中に入っている奴が復活させ続けているみたい」


 俺は何度も∞スライムを倒すために、スライムもろとも精霊で攻撃しても攻撃が届かないことを聖奈へ説明した。

 聖奈は腕を組んで、あっと声を出して俺を見る。


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