死屍累々

 

 はぁ……はぁ……


 なんとか立ち上がり、近くの階段の手すりをつたいながら歩き出すフレッド。

 ここから家まで歩けば30分もかからない距離なのに、今日は無限のように感じた。


「(なんなんだよ……呪いって……)」


 頭の中で今日の出来事がぐるぐる巡る


「(オヤジがそこまで俺を憎んでいたってのか……?)」


 怒りや悔しさよりも、悲しさが心を蝕みはじめた。


 胸がさっきより苦しくなる。


 寒い。

 寒い。

 寒い。


 寒くはないはずなのにとにかく震えるほど寒い。




 家に……



 家に……



「(……アルバート……)」



 暗い呪いの海に投げ出された

 小舟にとって

 頭の中の彼女の笑顔だけが

 灯台だった。



 鼓動が遅くなっていく気がする。

 

 暗い夜道がどんどん暗くなる。


「(嫌だ……死にたく……ない……)」



 はぁはぁ……



 いくら夜とはいえ

 なぜか誰とも会わなかった。



 『最初の試練』


 男はそう言った。



 家まで残り半分くらいの距離。


 ……




 無理だ。




 たどり着けない。


 そう感じた。


 覚悟した。



 

 死を。





「(式だって挙げてない、新婚旅行も行きたかったなぁ……)」

 



「ご…めん…、ア…ル…バー…ト……。」

 


 バタッと草むらに倒れこむ。

 目には涙 。


 振り絞った最期の言葉は


 約束を守りきれなかった事への

 謝罪だった。









 その時










「あのぉ~大丈夫ですかぁ?」


 闇の中で赤い目が見える。


 ついに死神がきたのかと思った


 やけに艶っぽい妖艶な女性が不安そうにこちらを見ていた。

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