不幸幸福①

 

 朝稽古を終え帰宅したフレッド。


「おかえり~」


「ただいま。シャワー浴びてくる。」


「うん。ご飯作ってる」


「はい、お願いシマス」


 シャワーを浴びながらさっきの自分の動きについて反芻する。

「明日は筋肉痛だな。」


 初日から飛ばし過ぎたと後悔しながら

「まあ実家に帰るころにはマシになるだろう」と気持ちは前を向き始めていた。アルのおかげだ。


 朝食は目玉焼き、トースト、ベーコン、サラダ。

 一人で暮らしていた時には考えられない彩のあるメニューだ。


「「いただきます!」」

 うまい。

お嫁さんの料理が上手くてよかったとつくづく思った。


「フレッドは朝に和食食べないよね?」


「あーあんなに朝から食えないからな」


「そういうもの?」


「俺はな。人によるんだろう」


「ご実家いったらお料理教えてもらいたいなあ……」


「おふくろに?」


「うん。」


「んー聞いてみるか。」


「やったぁ!」


「とりあえず近いうち手紙書くよ。」


「うん。お願い!」


「ん」


 ・・・・



 朝食を終えさっきの手紙を確認する。


「ホントに差出人がないな。」

 

 差出人がなくても住所があっていれば手紙は届くのだろうか。


 そんなことを考えながら手紙を開いた。





 開いて、しまった。








【 アルフレッド・クレイン様



これはあなたにあてる不幸の手紙です。



 あなたの不幸はここから始まる。


 

もしあなたの大切なものを守りたいなら


 

 今日の夕方


 

指定された場所へ来るといいでしょう。


 

来るも、来ないのも自由です。


ですが、来たほうが良いと思います。

  

  


  





 そ の 女 を 

 守 り た い な ら。   】








 ガタッ!


立ち上がっていた。

窓から外を見回した。


「?フレッド?」


 最後の一文だけ声がした気がした。

 冷汗が出る。


「(誰だ……?)」


 確かに視線を感じた気がした。

 声すら聞こえた。


 もしアルバートに危害を加えようというなら全力で叩き潰す。


 目からそういう殺気が漏れていた。


「だっ大丈夫?怖い顔してるよ……?」


 アルの不安そうな声で我に返る。

「あっ…いや大丈夫だ。なんでもない。」


 座りなおすフレッド。


「コーヒー、飲もう?」


「あ、ああ。ありがとう。」


 こういうマイペースさは正直ありがたかった。


「ふう。今日夕方少し出かけるから」


「そうなの?わかった。それまでは製本作業手伝ってね?」


「ああ、もちろんですとも奥様。」


「あ、元に戻った♪よかったぁ……」


「ははは」


 こんな幸せ、だれにも譲ってたまるか。

 そう硬く決意した朝。


 手紙には略された地図が入っていた。



 ・・・・



 アルフレッドは準備する。

 護身用のコートに中は動きやすくフードのついたいつものパーカー。

 護身用の短杖も忍ばせた。


 指定された場所はメーティス・ポートの、長い階段を登った先の人がほとんど来ないような雑木林だった。






そこには



 背を向けて立つ男が一人。

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