Coincidence and destiny(偶然と必然)

 -2日後-

 エドワードとの約束の日が来た。

 外は雨だ。

 リチャードの予定では

 午後から客人が来ることになっていた。

「やあ、よく来たねアルバートさん。」


「こんにちはリチャードさん。今日はお招きいただきありがとうございます。」


「ああそんなにかしこまらないでくれ。隣の部屋が書庫だよ。案内しよう。」


 2日前リチャードはアルバートに電話をしていた。

「どうもアルバートさん。物書きは順調かな?」


「はい何とか!」


「それは結構。実は君にききたいことがあってね」


「何でしょう?」


「君はフレッド君の昔の作品を読んだことがあるのかな?」


「えーっと……禁止図書の……」


「ああ~それより前に独りで彼が書いてたシリーズだよ!」

 慌てて言葉を付け加えるリチャード。


「あっ!いえ読んだことないです!どこにも置いてなくて……」


「公共の施設には置いてないからねえ。実は私の本棚に全巻あってね。近々読みに来ないかい?」


「え!?いいんですか!?ぜひお願いしたいです!」


「うんうん。で日取りなんだけど、明後日とかどうだろうか。」


 ・・・・


 このようなやり取りがあったのだ。

「うわあ~本がたくさん!」


「机の上のが例の本だよ。ほかにも気になったら読んでいいからね。」

 

 机の上にはかつてフレッドが著作した「三海四山」が置いてある。

 この本も今は個人での所有は問題ないが、公共施設では取り扱いできないものになっていた。2つの事件のあおりを受けている。


「これをフレッドが……!」


「コーヒー淹れたよーミルクと砂糖はー?」

「あっ、お願いします……。」

 まだブラックは飲めないアルバート。


「それじゃごゆっくり・・・・」


「ありがとうございます。」


 ・・・・


 雨の音が小窓から聞こえる。弱い雨がずっと続いているようだ。


 リチャードの部屋につながるドアは少し空いていた。


 一巻を読み終えたあたりだった。

 リチャードの部屋から


ドンドンドン、ガチャ!


「どういうことですか父上!」

 

聞き覚えのある声、エドワードだ。


「おお、エド。どうした?」


「アルフレッド君の例の事件について調べました。この二つの事件、担当した検察は父上ではありませんか!」


「(今……アルフレッドって……?)」

つい聞こえてしまった聞きなれた名前。事件。鼓動が、早い。


「しかも調書はファイルだけで中身はなし。関係資料は秘匿扱いになっている。これでは調べようがないです。」


「そこまでは自分で調べたんだね?」


「?? はい。」


「では聞くが、お前は検察官としてこの事件をさらに知りたいと思うか?」


「……私は真実が知りたい。彼はライバルではあるが、昔からの友人でもある。検察官としても、友としても調査を続けたいと思います。」


「わかった。」

「さて……そろそろか。」


 時刻は昼の3時。

 リチャードの机の電話が鳴った。


 ガチャ

「 はい、うん、お通ししてくれ。」


 誰かが来たらしい。


「もう一人来るから座って待っていなさいエド。」


「は、はあ。」


 するとすぐにもう一人が現れた。


 コンコンコン、ガチャ


「こんにちは!リチャードさん!

 お花をお届けに……んん?エド君?」

 

 それはエリーゼだった。


「いや~エリーゼちゃん今日も元気だねえ。昨日の今日ですまない」


「いえ~それは大丈夫ですけど……お邪魔でしたか?」

エリーゼは人一倍空気を読める女性だ。


「いや、君を呼んだのも理由があって。まあ座って。あ、コーヒー飲むかい?」


「いえ、お気遣いなく!

 エド君元気だった?」


「ええ。エリーゼさんもお変わりなく、花がありますね。」


「うふふ。花屋ですから!」


「はははは。

 これは一本取られました。」


 世間話をはじめる二人。

隣の書庫では様子が気なって仕方ない少女が一人。

「(なんでエド君にエリーまで?!

 私、来る時間間違えた……?)」


 そんな事を考えていると、エリーが話し始めた。


「なんだか……真剣な話をしてたんじゃないんですか?私、外しますよ?」


 検察官二人は目を丸くした。彼女はおおらかではあるがよく人を視ている。


「……私たち偶然居合わせた感じじゃないですよね?リチャードさんに限って予定をブッキングさせるなんてないだろうし・・・・」


「……エリーゼさん。検察官になる気ない?多分めちゃくちゃ向いてるよ?」


「僕もそう思いました。」


「わーたーしーは花屋でーすー。それよりどうなんですか?」


「うむ……観念するとそうなんだ。じゃあ、彼女も呼ぶとしよう。聞こえているかな!??」


「「???」」


となりの書庫に呼びかけるリチャード。


おずおずと出てくるアルバート。


「アルバートさん!?」「アル!?」


 驚く二人。


「君らより前に来てたんだけどね」


「「えええ!?」」


「コンニチハ、ミナサン」


「「ああ、こんにちは?」 」


「とりあえずこちらに座りなさいな。」


「あ、はい」


 ・・・・


「さて、さっき話してたのは、この四人に関係する話だ。」

「フレッドの事……ですよね。

 あの事件の。」


「あれは私が!」あわてるアル。


「まあまあ落ち着いて。実はエドワードが色々調べてくれたからまずはそれを聞こう。」

 

エドワードはさっきの話をする。


「というわけなんだ。そこで担当だった父上に話を聞きに来たんだよ。」


「うん。でも教えられない。」

「え!?」

「守秘義務があるからね。でも、今日は皆さん次第で話す気でいるんだ私は。」


 リチャードは一枚の紙を出した。


「これは情報開示要求書だ。事件の情報を開示するには


①当時の担当検察官

②今回調査する検察官

③事件に関わる人物


この三名のサインがいる。

私から自発的に話すことはできないがこれにサインすれば私は君たちに説明せざるを得なくなる。


頭いいでしょ?」


「えーっとつまりこの紙を書かせるために意図的に全員が集まるようにしたって事かい?」


「うん。用事もなしにアルバートさん呼んだら、一緒にフレッド君も来ちゃうかもっておもってね。」


「「「あーたしかに」」」


3人が声をそろえて言った。


「過保護なので・・・・」


「愛されてるんだよ~」


 顔が赤くなるアルバート。


「あー続けてもいいかな?」


「はい、お願いします。」

 アルバートが真剣な顔に戻る。


「正直な話、だれにとってもつらい話だ。だがね、君たちには知っておいてほしんだ。彼の友人として。・・・・覚悟はいいかな?」


 全員すでにサインしていた。

 覚悟はしているようだった。


「ふう、では……」


 といってリチャードは机の引き出しから何かを出して来た。

 鍵付きの小さい金庫のようだった。カギと番号を合わせるタイプらしい。


「【0909】っと。」

それはフレッドの誕生日だった。


中から出てきたのはカセットテープだった。


「これは当時の聴取の音声をとったものだ。調書で残すよりこれのほうがいいとおもって調書にはおこしてないんだよ。」


「さて、ふう。気が重いな。」


 機械にセットし、

 リチャードが三角形のボタンを押し


 テープのA面がスタートした。



 ジジジ・・・・

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