gentleman (正義漢)
アルフレッドはいわゆる引きこもり体質で、平気で1日中室内にいることがあった。
新作「雨音」のサイン会も終わり、今はオフシーズン。
今日は珍しくアルバートとカフェテラスに来ていた。
ここのケーキは月変わりなので毎月チェックしているそうだ。
「ねえねえ!
フレッドはどれにする???」
「そうだなー…モンブランだな結局。」
「毎回モンブランじゃない!
たまには違うの頼まないの?」
「俺は好きなのモンブラン。」
「私は…ううー迷うなぁ…!」
幸せそうに悩むアル。
フレッドのモンブランとブラックコーヒーが先に来た。
「先に座ってるぞー」
「うんー!」
ここでは頼んだ順に品が出てきて
お代が後払いなのだ。
今日はおそらくデートなので少しおしゃれをしたフレッド。
リチャードに紹介してもらった仕立て屋で買った革靴、スラックス、コートを着て大きめの眼鏡をかけた。
街では女二人だと思われナンパにあった。
「似合ってるよフレッド!」
「あんがとさん」
そういうアルバートも白いワンピースにカーディガンを羽織って着飾っていた。
並んで歩くと正に白と黒のコントラストの二人だったが
最近フレッドの身長がアルに並びつつあるのをフレッドは隠していた。
急に周りの席の女子がざわつき始めた。フレッドに対してではなくそこにやってきた男にだった。
「やあアルフレッド。今日は一人かい?」
男は長身でスーツをびしっと着こなした顔のいい紳士だった。
茶髪で鼻筋のとおった凛々しい顔。
「おお、エド。今日はデートだ。」
「デートは一人ではできないぞ?」
「茶化すなよ。あ、そこはアルの席だ。」
「これは失礼。でも彼女が来るまでならいいだろう?椅子も冷たいからね。」
「お好きにどーぞ。」
彼はエドワード・スパロウホーク。
20歳。
リチャード・スパロウホークの息子で
検察官。
その見た目と正義感でかなり有名人だった。性格はまさに紳士。
アルバートに好意がありたまにちょっかいを出しに来る。
フレッドとは仲のいい兄弟のような関係であり、ライバル心も燃やしている。もちろん恋の。
ケーキを買って席にくるアルバート。
「アルバートさん。ごきげんよう。」
「あ、エド君!ごきげんよう。」
エドはそっと席を立ち
「どうぞレディ。」
「ありがとうございます。」
「ズズズ……あーコーヒーうめぇ」
「ちょっとフレッド、はしたないよ」
「ははは。アルバートさんは何をご注文されたのです?」
「私は今月のケーキのブドウとマスカットのタルトをご注文したのです~」
「ふーん」「いいチョイスですね。」
「でしょ~えへへ~。」
「大きめのブドウやマスカットは今が旬ですから。安くおいしく食べられる時期は今なんですよ。」
「そうなの?知らなかった~!」
「アルはケーキならだいたい同じ反応だろ~」
「フレッドは黙っててよ」
「へーい」
「エド君、今日のお仕事は?」
「もちろん終わらせてきましたよ。
午後はオフなんです。」
「すごーい!優秀なんだねー。」
「そんなことは。」
「アルも締め切り間に合うように見習ってほしいねー」
「なんでばらしちゃうのフレッド!」
「ホントに困ってるからですー」
「ははは。まあまあ。」
「だいたいさ~
今日は
アルと俺の
デート
なんだから
邪魔すんなよエド。」
「「デッ…デート……!?」」
「……なんか今一人多くなかった?」
「デートだなんてそんな……
えへへ……」
「デートだなんて……まあ……
そんな気はしてたが……」
「エドはあれだが、アルはちょっとは気づけよ。
俺もめかしてきてるんだからさ……」
「ああ……うう……ごめん……でも、今日のアルフレッド、かっこいい……よ?」
「ありがとう。
今日も可愛いよ、アルバート。」
「あわわわ……」
顔がどんどん赤くなるアルバート
二人だけの世界が出来つつあった。
勝ち誇った顔でエドを見るフレッド。
今日の勝敗は決した。
勝因は珍しくしたおしゃれだった。
「ああ……嘘だ……君は雇われのアシスタントのはず……。」
「なんでだよ」
「ふう。スミマセン、アルバートさん。これから用事があるのでここで失礼します。」
エドは去り際にフレッドの所にきて
「今日は譲ってあげよう。紳士だから」
「噛ませ犬お疲れ様です。」
「うっ……また会おう。」
用事もない男は足早に去っていった。
-スパロウホーク邸-
「ただいま戻りました。」
「おお、お帰りエド。ん?元気ないねー我が息子?」
「いえ、そんなことは。」
ソファーに座りコーヒーをのむエド。
「仕事……じゃないね。もしかして愛しのアルバートさんかな?」
「ぶっ!!ゲホッゲホッ……」
「まーた実らぬ恋をしてるのかエド。
あの二人の間には入れんと言ってるだろ?」
「いえ。アルバートさんはまだアルフレッド君の好意にはっきりと気づいていません。」
「なんとなくは気づいてるけどね~」
「息子の応援をしてくださいよ……」
「負け戦と分かってるのに応援はできんよエド。」
なんでも挑戦
当たって砕けろ!というのが通常のリチャードだ。
そのことが少し気になったエド。
「父上がそこまで言うのも珍しい。
あの二人といえば、やはりあの事件ですか。」
「・・・・」
リチャードの表情が少し曇った。
「父上も歳を取りましたね。
表情に出てますよ。
私もあの事件については気になっているんです。
近々少し調べてみようかと。
あの事件の後、アルフレッド君のお見舞いに行ったことはありましたが当時はよく事情を知らなかったので。」
「……そうか。わかった。
私は明後日14時ごろここにいるから調べて分かったことを必ず報告しに来なさい。」
「?? わかりました。」
「では自室に戻ります。」
「ん」
部屋を出ていくエドワード。
「そろそろ、時期かもしれんな。」
その日リチャードは二件電話をかけた。
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