Second case [outside] (禁止図書事件:表)
-アルフレッド家前-
「アルフレッドー!!!!」
アルバートの声が雨の中で響き渡る。
「うう…うわあああああああ!」
「ああああああああああああ!」
雨の中
膝をついて泣き崩れるアルバート。
泣き叫ぶ彼女の声が
さすがに隣に聞こえたのか
「アルバート……?どうしたの!?」
エリーゼだった。
「ううっううっ……エリー……フレッドがぁ……フレッドがぁ!」
「とっ、とりあえず中に入りましょう?また風邪ひいちゃう」
アルバートは事の顛末を説明した。
「…そっか。」
「(…すごいなぁフレッド。そこまでアルの事を想ってるんだ。)」
「どうしよう……どうしよう……」
「落ち着いて、アル。署には信用できる人がいるからきっと穏便に治めてくれるよ。」
「だからフレッドが帰ってきたときのために家の事やっておこう?」
「うう……」
「ほら涙ふいて。お風呂入って。ご飯作ろう?」
「……うん……。」
エリーは署長になったのがリチャードだと知っていたので何とかしてくれると思いながら、フレッドの行動に尊敬と不安を感じていた。
-護送車-
車の中で口を開くフレッド。
「あーそういえば検察官は指名できるんだったよな?髭の衛兵さん?」
「ああ?」
「一応こっちの権利としての話だよ」
「知らん」
「まあまあ。確かにできるよ。誰か心当たりが?」
もう一人の衛兵が答える。
「ああ。ついたらリチャード・スパロウホークさんをお願いしまーす!」
「ぶっ!!ははは!こいつはお笑いだ!その人は今や検察署署長だぞ!」
「あー署長になったのかあのおじさん。」
「おい失礼だぞ貴様!」
「まあまあ。とりあえずダメ元でも聞いてみてよ?アルフレッド・クレインで通じるからさ」
「無理に決まってるだろうがな。」
「お願いしますよー」
署についたころには完全に夜になっていた。
雨は強くなっていた。
取調室に連れていかれ
しばらくして
見慣れた顔の紳士がやってきた。
「いやーどうもアルフレッド君。ご無沙汰だねえ」
「どうもリチャードさん。お久しぶりです。署長になったんですね。」
「いやいや形ばかりだよ。それにしても…」
リチャードは煙草に火をつける。
「ふうー。正直この件でまた会いたくはなかったなあ」
「はは。ご迷惑おかけしてます。」
「いやいや仕事だしね。さて、まあ単刀直入にきくけど…」
取り調べは夜まで続いた。
「今日は遅いからもう泊まっていきなさい。雨もやんでないし。おもてなしは掛布団だけで。すまないけど。」
終わった後は朝まで取調室のソファーで眠った。
ここでのやり取りはアルフレッドとリチャードの二人の中で封印することにした。
今後、誰かが事件を調査するまで。
-朝-
「うーん…体いてえー」
しばらくしてリチャードが部屋に来た。
「おはようアルフレッド君。よく眠れたかね?」
「早くかえって寝なおしますわ。あいつも心配だし。」
「そうだね。早く帰っておやりなさい。」
「あ、リチャードさんにお願いがあるんだった。」
「ん?」
「今度、仕立て屋教えてくんない?リチャードさんスーツとかコートとかいいの持ってるからさ」
「んん?はは。お安い御用だよ。今度一緒に行こう。にしてもそういうの興味出たの?」
「あーなんか…ろくな服もってないなって思って。」
「ふふ。君も色を知る歳か。」
「嫌われたくはないからねー。」
「承知した。電話するよ。」
署長になってもリチャードはあまり変わっていなかった。
エントランスまで見送ってくれたリチャードとは、じゃ、と手を振って別れた。
「(ふー帰ったら大変だなアルフレッド。)」
自分にあらかじめ慰めの言葉を送った。
-アルフレッド宅-
ガチャ
「ただいまー」
フレッドが帰宅する。
「……フレッド……?」
「おう。ちゃんと寝たか?アルバート」
「……ばか……!」
抱き着いてくるアルバート。
疲れた顔をしている。
あまり寝れなかったんだろう。
「あ、おみやげわすれた!」
「そんなのどうでもいいから……」
「フレッド!帰ったのね!」
二階からエリーゼが降りてくる。
「エリー!うちに来てたのか!
あー……アルが迷惑かけたな。」
「気にすんな!でもよかった。」
「リチャードさんがよくしてくれたから罰金で済んだよ。」
「そう……なんだ……。とりあえず二人で朝ご飯作ったから食べよ?」
「ああ。腹も減ったが寝なおしたい。署のソファー硬すぎ。」
「ちゃんと風呂も入ってね?」
「はーい」
日常が無事帰ってきた。
アルは心底ほっとしていた。
だがそう思っているのはおそらくここでは彼女一人。
エリーはこの時思っていた。
盗作や禁止図書の問題は創作者主権のこの街において大問題なのだ。
他人のオリジナリティやアイデンティティを侵害する行為は非常に罪が重い。
それがいくらリチャードさんが知り合いだとはいえ、罰金で済むはずがないことを察していた。
いつかフレッドの口から真実が語られるまでは
聞かないことにした。
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