3.
30代も終わりとうとう40歳。僕と歳の近い同僚達は、もう歳だな、なんて口にするようなってきた。健康診断も今まではなぁなぁだったのが色々な数値が気になるようで僕以外の面々で見せ合いなんかして、やれ血圧がどうだの体脂肪がどうだのと勝った負けたと話のネタにしている。僕はといえば健康診断は今までの人生設計の結果発表の場と捉えるようになっていた。ここまで着実に余命を減らして夢への道のりは安泰だ、とここまでは思えていた。
余命が6年減っていた。僕の中では5年減っている筈だったのに。
まぁ多少のズレぐらいはあるだろうとこの場では思っていたがここから僕の予定はことごとく崩れていく。
次の年、もうペースダウンを考える歳だった。6年減っていた。
次の年、煙草と酒の量を減らすと考え、減らせなかった。6年減っていた。
次の年、健康診断の結果を穴が開くほど見るようになった。6年減っていた。
次の年、6年減っていた。
僕はここに来てようやく自分の甘さを痛感した。
若いうちに染み付いてしまっていた不健康習慣は歳を取った僕の体を想定以上に衰えさせていた。そしてその不健康習慣を若い僕は簡単に考えすぎていた。
やめることができない!
酒も煙草もバランスの悪い食生活もやめられない! 昔の引き締まった体は見る影もなく腹の肉はベルトに乗っかり顎と首は区別がつかなくなっている。
仕事もそうだ! 仕事も責任もドンドン増えていく! 死ぬために働いている僕の仕事ぶりは周りからも普通になってしまっていた。最早僕がいなければ会社は成り立たなくなってしまっている。
気付けば50歳の健康診断。
「余命20年です」
昔はこの数字を聞くたびに達成感があった。だけど、今はどうだ? 20年といえど僕の生活からしてみれば容易く終わってしまう数字だ。このままでは60代で死ぬことができない。夢がまた、潰えてしまう。それは、嫌だ。僕は最後の最後の最期まで死んでも夢を諦めたくない。
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