2.


 先ずは何はともあれ働くことだ。


 元々は健康的に幸せに暮らすことが目標だったので当然将来的にはホワイトな企業に就職するつもりでいたが、今は働けば働いた分だけ給料が入るがその分ハードな職場を選ばなくてはならない。変にホワイトだと残業がしにくかったり仕事を持ち帰ることも出来ない。僕はこれから伸びて仕事が忙しくなるであろうベンチャー企業を血眼になって探すようになった。


 ようやく見つけたその会社は従業員10名ほどの小さな会社だった。


 就職してからは文字通り死ぬほど働いた。寝る間も惜しんで家でも働いた。よその会社が可愛そうになるぐらいに働きまくった。今まで健康的な生活を送ってきたツケなのか、ある程度の無理なら通せてしまうほどの体力が僕にはあったので、通した。


 結果的に、入った当初は10人だった会社も僕が入社してから10年も経たないうちに200人に増え、僕の立場もより高い位置になっていた。


 そして、30歳の健康診断。酒と煙草もやってきた結果、今年も無事に余命を6年削ることが出来た。周りの社員からは、体は大丈夫かと心配されるが僕は会釈だけしてさっさと退避する。僕が不健康な生活を送るためには他人からの介入を出来る限り避けなければならない。そのために会話は最低限、友人も恋人もつくらない。死ににいくような生活を送っているのだから当然だろう。おかげで僕の部屋は、壁や布団は煙草の臭いが染み付き、冷蔵庫の中は酒とつまみぐらいしかないとてもじゃないが人をあげられるような状態ではなくなっていた。


 余命は残り140年。20代の間に実質50年も削ることができた。後は40代辺りでペースを落として緩やかに余命を縮めていくだけだ。全てが順調に進んでいる。このときの僕はそんな風に考えていた。

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