第123話 白
甲高い金属音が鳴り響く。
白銀の聖剣は宙を舞い、地面に突き刺さった、その突き刺さった聖剣を瞬時にドンキホーテはテレポートの魔法を併用し取り戻す。
そしてそのまま、走る。向かうは、ライジェル王の元だ。再び聖剣同士がぶつかり合い、衝撃波が発生した。
ドンキホーテとライジェル王の戦いは、今、ドンキホーテ側が押される形になっていた。それもそのはずである。
ドンキホーテは戦いの中覚醒していく、ライジェル王についていけていないのだ。
剣を合わせるごとにドンキホーテの徐々に傷は増えていき、今や身体中に傷を負っている。
それでも未だに彼が立っていられるのは、強靭な精神力と優秀な戦士の肉体を備えているおかげであった。
おそらく常人ならばすでに地面に伏している所であっただろう。ライジェル王は剣を交えながら言った。
「私の勝ちだドンキホーテ……今や私に敵うものなどいない」
「はん、まだ俺は倒れちゃいねぇぜ? もう勝利宣言かよ?」
そうはいうもののドンキホーテは内心、焦っていた、ポーチの中には例のグレン卿から奪ったエリクサーが存在しているが、それを飲ませてくれるような隙はない。
そのため傷の回復というものがドンキホーテにはできずこのままでは防戦一方だ。
――なんとかしねぇとな……!
強くゼーヴェリオンを握りしめて、押し、ライジェル王を吹き飛ばす。
距離を一旦取った、ドンキホーテは、ゼーヴェリオンの白き炎を解放する。それは地面をえぐりながら、真っ直ぐとライジェル王の元へと向かっていく。
ライジェル王は、白き炎を相殺すべく、白き炎を二本のゼーヴェリオンから放つ、白き炎はぶつかり合い、しばらく渦を巻いた後、消える。
「目くらましのつもりか?」
ライジェル王はドンキホーテの考えを看破した。その通りであった、ドンキホーテ先ほどの白き炎を囮にラ王の頭上の上空にテレポートしたのである。
ドンキホーテは落下しながら、腰にあるポーチからグレン卿から奪い取った、エリクサーの最期の一口を飲む。するとあっという間に、傷は塞がった。
そのまま瓶を投げ捨て、頭上からライジェル王を斬りつける。
しかし剣がライジェル王に届くことはない、寸前で気付かれ、水晶の盾に阻まれてしまう。
「くっ!やっぱダメか!」
ドンキホーテは思わず口に出し、バックステップで再び距離を取った。
「ドンキホーテ無駄だとわからないのか、この水晶の盾は貫けん、近接戦では私に勝てんよ」
その言葉はあからさまな、誘いだった、ゼーヴェリオンの白き炎を使って来いという。ライジェル王からの挑戦状に等しい、誘い。
その言葉にドンキホーテは覚悟を決めた。
ドンキホーテは頭上高く、ゼーヴェリオンを上段に両手で構えて白き炎を解放すべく、ゼーヴェリオンに己の力を、闘気を注ぎ込む。
聖剣の力の源は戦士の闘気だ、ゼーヴェリオンの場合闘気を白き炎に変え、放出している。注ぎ込む闘気が多ければ多いほど、聖剣の力は強くなるのだ。
先ほどまではドンキホーテは目くらまし程度の弱い火力でしか解放していなかったが、今度は違う。
今度は先ほどとは比べものにならないほどの闘気をゼーヴェリオンに込めた。とてつもない威力の白き炎が発揮されるはずだ。
ゼーヴェリオンが白く輝いた、ドンキホーテは思い切り振り下ろすかと思いきや、ドンキホーテは瞬時にテレポートの魔法を連続で唱え、ライジェル王の十メートル背後に移動する。
そして無防備な背中めがけて。ゼーヴェリオンを振り下ろす。白き炎は先ほどの目くらましの炎とは比べものにならないほどの凄まじい速度で放たれる。
ライジェル王も瞬時に後ろに振り向き二本の聖剣を振り下ろし白き炎を、解放させた。
互いの炎がぶつかり合う。両者の炎は絶えず剣から噴出し続けて、さながら炎の鍔迫り合いというべき光景が繰り広げられる。
「ライジェル!!」
「ドンキホーテェ!!」
互いの炎は最初は互いに均衡を保っていたものの、段々とライジェル王の炎がドンキホーテの炎をのみこんでいく
そして白き炎の鍔迫り合いはライジェル王が優勢となり、ついに、ドンキホーテは炎の中に飲み込まれようとしていた――
一方、精神世界でのエイダは飛翔を続けていた。直感に従い、空を飛び、上空へ、上空へとエイダは突き動かされる。
そしてついに、雲の上を抜けた。エイダの眼下に広がったのは雲海などではなかった。それは一面の白い空間だった。何もない白い空間。
いやよく目を凝らして見れば、その白い空間の中に一人、うずくまっている少年が見えた。その少年はその白い空間と同じ色の服を上下に来ていた。
エイダはこの少年の正体に気づき、側に降り立ち、少年の名を呼んだ。
「ヨータ……さあ行こう、この世界から逃げるの……」
「逃げられないよ……」
「どうして?」
ヨータは顔を上げ自分の足を指差した、指の先には白い鎖があり、その鎖は地面につながっていた。この鎖がヨータをこの世界に、魔王の肉体に繋ぎ止めているのだ。
エイダはそう感じて、妖精の剣を取り出し、白き鎖を断とうとしたその時。
「よくないな、勝手に連れて行こうとしてもらっては」
あの男の声が聞こえた。エイダは声の主に目をやり、忌々しそうに、その名を呼ぶ。
「ライジェル王……!」
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