第108話 魔王の正体
「貴方が、ヨータをこの世界に転生させた神様?!」
目の前の神、リナトリオンの言葉にエイダは驚愕する。
ヨータが神の使者であることはわかっていたが、まさかその転生させた神自身が目の前に現れるとは、エイダの予想をはるかに超えていた。
エイダの驚きとは裏腹に、リナトリオンは落ち着いて喋る。
「貴女の存在も密かに感じていました、私はこの場所で、ただ泣くばかりで、見ることはできませんでしたが」
「なぜ私のことを…」
エイダの疑問に答えようと、リナトリオンが喋りかけた時ふと、何かに彼女は気づく。
「エイダここでは話せません、少し移動しましょう彼らがきます…歩いた先で、貴女のこともヨータのこともお話ししましょう」
「彼らとはなんですか? えっとリナトリオン様」
「リナトリオンで構いませんよ、エイダ…有り体に言えば死の化身とでも言えばいいのでしょうか、貴女を死の世界に連れて行こうとしています」
そう言ってリナトリオンはエイダの手を引いていく。そこでエイダは気づくここが何処なのか、自分は何処にいるのか。
エイダがふと呟く。
「もしかしてここって…」
するとリナトリオンが「気づきましたか?」といい、信じがたい事実を口にした。
「ここは冥界、エイダ、貴女は今、死の淵にいるのです。おそらく原因は魂を傷つけられたから。ヨータと共にいない所を見ると、ヨータの魂を無理やり剥がされた時に同時に貴方の魂が傷つけられたのでしょう」
喋りながらリナトリオンは、エイダの手を引っ張って行く。そこでエイダも気づいた、自身の後ろに何かいることに。
それはズルズルと何か砂上の上を這いずるような、音を出しながら着実にエイダの元へと向かっているようだった。
エイダは思わず、その音に釣られて、後ろを振り向いてしまいそうになる。
「後ろを見てはいけません!死の世界に呑まれてしまいます!」
リナトリオンの制止がなければエイダはその死の世界とやらに呑まれていただろう。エイダはその言葉に従い、後ろを振り向かなかった。
「いいですか、私が良いと言うまで、私の背中だけを見ていてください」
「は、はい!」
こうしてエイダは砂上を進む、リナトリオンに手を引かれながら。
「魔王ヨータだと?」
一方、塔の頂上、ライジェル王の言葉にドンキホーテは疑問符を浮かべる。
「ヨータと言うのはよぉ、神の使者で、勇者の名前じゃねぇのかい?」
ドンキホーテはそうライジェル王に言い返した、エイダから今まで聞いた話によれば、ドンキホーテの見解はあっているはずだった。
しかし、ライジェル王はその言葉を聞くと「一から説明しよう」と話しはじめた。
「はるか昔、魔王討伐より以前、世界には危機が訪れていた、はるか昔にも魔王と呼ばれる存在がいたのだ」
ドンキホーテが食いつく。
「待てつまり、それは2000年前に討伐された魔王とは別の魔王か?!」
「その通りだ、ドンキホーテ」
「そして」とライジェル王は続ける。
「その魔王を討伐し危機を救ったものがいた、それが英雄ヨータだ」
ドンキホーテは息を呑んだ、確かにその説明ならば例の少年、ヨータが夢の中で勇者を名乗ったのも理解できる。
「ヨータは、様々な力を持っていたことは知っているな? その力のおかげで様々な呼び名を持っていた、賢人、英雄、勇者、そして神の使者などだ」
マリデは黙ったまま王の話を聞いている。するとライジェルはわざわざ黙っている、マリデを指差して言う。
「ヴァルデ、貴方はもう知っているはずだこのヨータの結末を」
「ボス…本当かよ…!?」
ドンキホーテの問いにマリデはこう答えた。
「それは…答えられない、いや答えを知らない、僕の本体は答えを確かに持っているが、僕は分身体、その答えの記憶は持っていないんだ」
「ふん」とライジェルは鼻を鳴らして「ならば答えよう」と話を続けた。
「当時のソール国は、弱小の国であった…資源も無く、産業も少ない、優れているのは魔法の技術力のみ、ソール国はそのため他国との貿易でなんとか自身を食いつないでいた」
「しかし」とライジェルはさらに続ける。
「だが、世が乱れれば話は変わる、他国が戦争をしだすと、たちまち貿易どころの話ではなくなる、当時ソール国は、いわば巨大な魚のおこぼれに預かる小魚、大国が乱れれば当然ソール国も打撃を受けた」
「たがここで魔王が登場する」と言い、ライジェルは両手を広げる。
「各国の共通する敵が現れたのだ、その時の乱れていた国々は魔王を討伐しようと一致団結をした。結果的に魔王は英雄ヨータが倒したが、それでも共通の敵が現れた時の人々の団結する様は凄まじかった。当然ソール国もそのおかげで貿易を仲介する国となり、また食いつなぐことができたのだ」
「その話と何が関係あるんだよ」
ドンキホーテの疑問に、ライジェル王は「まあ、まて」と言いながら話を続けた。
「当時のソール国の王は思った、共通の敵、もしくは共通の信仰が必要なのだと。それがあればソール国、そして世界の人々は平和を享受できると。王は禁忌に手を染めることにした」
「まて…まさか…まさか!」
ドンキホーテは嫌な予感がしていた、その予感の正しさを裏付けるようにライジェル王は話を続ける。
「王は作った、新たな魔王を、自国の最新の魔法技術を最大限に使ってな」
「そして」とさらに王は続けた。
「その魔王の核に、ソール国、国王は英雄ヨータを使ったのだ。」
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