第104話 謎の島
エイダ達の目の前に現れた謎の島。その島は実に緑豊かであった。
そしてその自然の豊かさから、考えられるのは、どうやらここには人の手が入っていない、所謂、原生林なのではないか、という事だ。
船に乗船した誰もが島の自然に対し、そのような感想を持っていた。だが島の、中央にそびえ立つある物のせいで、エイダ達を含めた船員達は考えを変える。
それは塔だった、天を貫かんばかりの巨大な塔だった。
この塔を見た瞬間、船員達のこの島の印象というものはガラリと変わる。
「遺跡……か…?」
ドンキホーテが船に乗船している全員の、考えを代表するように言った。
ここは人の手が入り込んでいた、だがこの自然の豊かさ、から見るに相当昔の遺跡なのではないかと、その場にいる誰もが感じた。
それほどに、この島は不気味なまでに人の痕跡がないように思われたのだ。
「エイダ、どうだ?アイラ達の波動は感じるか?」
ドンキホーテの問いにエイダは頷く。そして塔を指差して言った。
「あそこから気配を感じる、あの塔から」
それを聞くとドンキホーテは船長に、陸に行くための小舟を出すよう頼み、それに付け加えて、一つ約束をした。
「船長いいですか、俺たちがもし一日たっても戻らないようなら遠慮なく帰ってください、いいですね。そしてここのことは一切他言しないでください。」
「わ、わかった、しかし他言しないでとはどういう事だ?犯罪者がいるのだろう?君たちがやられたらどうやって犯罪者を懲らしめるのだ?私たちは報告しなくてもいいのか?」
ドンキホーテは、ウインクしながら言う、あくまで心配させないために。
「俺は悪党を前に、ただ死ぬなんてことはしませんよ! 相打ちにでも持っていきます! それにもし俺が死んだらちゃんとほかの仲間が来るように魔法の信号が送られるので大丈夫です!それにあなた方が港町で、凶悪な犯罪者について喋ってしまうと、犯罪者の生き残りがいた場合、事件に巻き込まれる可能性があります。なのでこの事は、船員達のためにも他言無用でお願いします」
その説明を聞いて、船長は大人しく了承した。確かに船員達の命の安全を優先したいと考えたからだ。エドワード船長は大人しく、ドンキホーテ達を見送った。
そうしてエイダ達は島に上陸する。地面についた途端、アレン先生は、エイダの腕の中から降り背伸びをし「さてと」と話を切り出し始めた。
「ようやくテレパシーなんぞ無くても話せるようになったのぅ」
「全くだね」
それにマリデも同意する。動物の姿に変化すると、混乱を避けるためとはいえ、中々喋れないというのは困りものだ。
しかし、そのおかげで面倒な船の手続きなどはドンキホーテに丸投げできるので、「動物になるのはいい面もあるがの」などと冗談交じりにいう。
そしてアレン先生は本題に入る。
「マリデも恐らく気づいていようが――」
「ごめん僕はもう殆ど力のない蛇だから何もわからないよ」
「話を折るでない!マリデ!」
若干エイダ達一同の間に、柔らかい、温和な空気が流れる。「ゴホン」とわざとらしい咳払いをしてその空気を切り裂きアレン先生は話を続ける。
「いきなり現れたこの霧、恐らく人々の目を欺く魔法じゃ」
ドンキホーテは意味がわからず「つまり?」と聞き返す、アレン先生が説明する代わりにエイダがそれを引き取った。
「人の目を欺く、魔法…多分、霧がいきなり現れたんじゃなくて、霧は元からそこにあったもの、ただし辺りの景色と同化して見えなかっただけ」
「こういう事じゃないかな?」とエイダは説明を締めくくった。するとアレン先生は無意識に頬が緩み、エイダを褒める。
「さすがエイダじゃ、勉強の成果が出ておるの!そうじゃ!エイダのいう通り、霧は元からあったのじゃおそらくこの霧は、外から見ると周囲にあたかもただの海原が続いているかのように見せることができる、そういう性質を持っている。所謂魔法の霧じゃ」
「なるほど」とドンキホーテはようやく理解する。そこでマリデはある事に気づく。
「ということはだ、こんな巨大な魔法を維持できるほどの魔力の持ち主がいるということだね、気をつけていこう」
マリデの言葉にエイダ達は頷き、早速木々が茂る、森の中を進んでいった目指すは、あの謎の塔だ。
しばらく歩いた頃、ドンキホーテが枝や長い草を剣で切り落とし道を作りながら、おもむろに話し始める。
「最近、謎の遺跡ばかりだよなぁ」
「急にどうしたんじゃドンキホーテ?」
今話せる余裕があるのは、アレン先生だけだった、なにせエイダは、悪辣な道にまだ慣れておらず、マリデに心配されながら歩いている。
「いやよ」とドンキホーテは話を続ける。
「ガデレート山にもあったじゃねえか謎の遺跡、そして今度もまた謎の遺跡だ何か、繋がりがあるような気がしてならねぇ」
ドンキホーテはそう言いながらも迷わないよう、塔へ辿り着けるよう方角をコンパスで確かめながら、再び、枝や葉を切り進む。
ドンキホーテの勘は馬鹿にできない、それにアレン先生自体もそれには気になっていたため、「そうじゃのう」と同意する。
「確かに、ガデレート山の遺跡とここの遺跡は繋がりがあるかも知れん、調べたかったが仕方がないのぅ、あの時はグレン卿を追わねばならなかったしのぅ」
「そうだな」と、ドンキホーテはドンキホーテの身長以上はある草を切る、すると今まで草で塞がれていた、視界が明け、塔の壁が姿を現した。
塔の周りには都合よく木々や草は生えていないまるでそこに群生するのを嫌がるように。
「エイダ、ボス、塔についたぜ」
こっそりとした声でドンキホーテは言う。
「わかった」
エイダはそう言うとマリデとともに、ドンキホーテとアレン先生の近くに行く。
「よし…入れるところを探すぞ…!」
ドンキホーテの言葉に全員が頷く塔の周囲を周り入り口がないか探し始めた。
塔の円周はかなり広い。一周するのにかなりの時間を要しそうだ、その分この塔の内部もかなりの大きさであるということがうかがい知れる。
ドンキホーテ達はゆっくりと塔の周りを回る、そして何分か歩いた後、扉を見つけた。
扉は鋼鉄でできており、両開きで、加えて巨大であった。
ここから流石に正面切って入るのはまずいかと、一応、エイダ達は一周してみたがどうやら、扉は一つしか無い。
「ここから入るか?」
ドンキホーテの提案にマリデは首を縦に振る
「ここしか、出入り口はないみたいだしね」
「アレン先生、壁抜けの魔法は?」
エイダは、アレン先生に壁抜けの魔法を試せないか提案をする。壁抜けの魔法とはその名の通り、壁に魔法で穴を開ける魔法だ。
穴といっても物理的に開けるわけではなく、地点と地点、壁の外側と壁の内側にに入れるよう空間をつなげる一種のテレポートに近い魔法である。
しかし、アレン先生は「ダメじゃのう」と否定を口にした。
「特殊な魔法で防御されておる、壁抜け魔法はできんよ最初から試してはいるんじゃがのう、一周してみてもどこにも、入れる場所は無かった」
その言葉を聞いて、エイダは扉を見つめる。塔には窓がない、窓から入るということもできないのだ。ならばもはや、内部に入る方法は一つしか無い。
ドンキホーテは覚悟を決めて、言う。
「いいか?俺が蹴破る、その後に続くんだ」
皆が頷くのを確認して、ドンキホーテは「1、2、3で蹴破るぞ」と言い扉の前に立つ。
「行くぞ…!1、2の――」
蹴破る前に、扉はひとりでに開いていった。
「開くのかよ…」
ドンキホーテは肩を落としながら「皆んな俺の後についてきてくれ」と言い扉の中に入っていった。
ここにいる全員が思っていたこれは罠だと。
塔の中は光源が無かった、そのため暗く、唯一の光は、扉の外から入る光のみだ。しかしそれでもわかる、この塔内部の広さが。
「チッ、いるぜこいつは」
ドンキホーテは敵の気配を察知して呟く。
「流石に僕たちを待っていたわけか、まあ、そちらからもどうせ僕たちの行動は筒抜けだろうしね」
マリデもため息をつきながら言う。
すると突如、塔の内部に光がともる。その光は塔の内部の広大な空間を全体的に映し出した。
内部は大理石のような材質の床と壁でできているが、その美しさは時間の経過により失われている。
そして照らされた部屋の中央には謎の人の身の丈以上もある巨大な水晶玉とグレン卿とアイラ、アル、エールがいた。
「グレン卿!」
エイダがグレン卿を睨みつけながら言う。敵意があるとみなし、三兄妹たちもそれぞれ武器の構えを取る。
「エイダ、きてくれたのだな?全く嬉しいよこれで私たちの計画も最終段階を迎える。実に素晴らしい」
にやりとグレン卿は笑い言う。
「魔王の復活を、始めよう」
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