第12話 覚醒

  アレン先生が剣に貫かれる。それは一瞬の出来事で誰も反応はできなかった。

  ドンキホーテは絶望するよりも先にエイダを守ることを優先と考えアレン先生を刺した張本人に剣を向ける。それは先ほど倒したはずの骸骨兵士であった。


「コアは…複数あった…!!」


 そう考えるとよりないだろうおそらく予備のコアのようなものがあり、それを作動させたのだ。

 ドンキホーテは剣を薙ぎ払い、骸骨の兵士の胴体を真っ二つに切断する。


「エイダ逃げろここは俺が!」


 しかしエイダは逃げられない、いや逃げられないというよりむしろ逃げることを忘れて、ただアレン先生の体を見つめていた。まだ息がある。まだ助けられる。しかし自分には何もできない。その無力感と人が死ぬという絶望感がエイダの心を支配して逃げるという動作をできなくさせていた。

  エイダの脳裏にエイミーの姿を思い浮かんだ。


(また私は何も出来ないまま…)


  アレン先生を助けられない自分、何も出来ない自分、思えばドンキホーテ達に助けられてから自分は何も出来ていない、2人がいなければ自分はおそらく死んでいただろう。私は2人に頼りきりっだった。何も出来ないばかりに。エイダの頭の中にそんな後悔ばかりが反響していた。

  しかしそれはしょうがないことなのだ彼女は生まれてこのかた、戦い方など誰にも教わっていなかったのだ。だがだからといってエイダは自分を責めずにはいられなかった。無力な自分を今この瞬間は許す事が出来なかったのである。

  アレン先生の姿と自分の母の姿が重なって見えて、エイダは思わず涙を流してしまった。その時だ。声が聞こえたのは。


「泣いてるの?お姉ちゃん?」


 いつのまにかエイダは森の中ではなく。

 あの夢の世界に…地球にいたのだ。謎のベージュ色の髪の少年とともに



「あなたは誰?」


「僕のこと知りたい?」


「へ?あ、まあ、うん知りたいかな?」


 いやそれよりもここはどこなのだ、エイダは混乱していた。何故突然こんな世界に来てしまったのか。

 周りには四角い立方体の巨大な建物があり地面には白い縞模様が引かれている。赤と青に光る不思議なランプが点滅したり、ついたりしている。この世界はまぎれもない夢の世界だ。

 そんな夢の世界にエイダは少年と2人きりだ。


「いや、それよりここはどこなの?早く帰して!アレン先生が!」


「ここは交差点の真ん中かな?あと安心してここは夢の世界みたいなものだから現実ではそんなに時間が経っていないはずだよ。」


 コウサテン?というものをエイダは知らなかったが夢の世界という説明はなぜか説得力がありなっとくしてしまった。


「当たり前だよ。この世界の主は僕とお姉ちゃんなんだから、なんとなくわかるはずだよここが現実ではないって。」


 どうして私の心が


「お姉ちゃんが僕はずっと一緒に居たんだよ。魂がね。」


  あなたのことを私は知らない。


「そうだろうね、僕もこうして喋るのは初めてさ。」


 どうして急に…


「呼んだでしょ二回も?助けてって、一回目は無意識かな?2回目はいまだね」


「勝手に私の心が先読みしないで!?」


「はいこれでいいかな?口から出るまで待ったよ?」


  どうやら口にしようがしなかろうが無駄なようだ。どっちみちこっちが思っていることは相手に筒抜けのようだ。とエイダは諦める。


「正確には伝えようとした気持ちが筒抜けになるんだよお姉ちゃん。」


 少年はそう言って柔らかい微笑みをエイダに返す。


「お姉ちゃんは帰りたがってるみたいだけど、帰ったところで何も出来ないでしょお姉ちゃん。だから僕が力を授けに起きてきたのさ。」


 待ってそもそもあなたは…


「僕かい?僕は………」




剣が交わる月夜にエイダは立ち上がる、そのままアレン先生に近づくと手をかざした。すると淡く青い光と、緑の光がアレン先生を包み込んだ。

アレン先生は息を吹き返し、口に残っていた血を吐き出す。

エイダはアレン先生が回復したことを確認すると剣と剣がぶつかり合う。月夜の戦場へと歩き出した。



背中に光り輝く翼を携えて。



(僕は様々な呼ばれ方をしている。)


エイダはドンキホーテと骸骨の兵士の間に入る。


そのまま羽で打撃を骸骨の兵士に食らわせる。


(英雄、勇者、賢人…)


骸骨兵士の体は空中に打ち上げられた。


エイダは間髪入れずに飛び上がり再び羽による打撃を繰り出す。


骸骨の兵士は地面に叩きつけられる。


エイダは空中にとどまったまま、今度は羽が散っていった。


(またの名を…)


散った羽は無数の剣なり、餌に群がる鳥のように骸骨の兵士に降り注ぐ。


風邪を裂き、地面をえぐり 、剣は降り注ぐ

そしてついに



(神の使者)



地面に隠れていた最後のコアを貫いた。

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