第8話:皇太子後宮
セラン皇太子殿下と再会してから二カ月以上経ち、私の立場は激変しました。
再会させていただいた日には、私はまだアーサー王太子の婚約者でした。
思い出したくもないことがあって、私は一方的に婚約を破棄されました。
でもアーサーにも天罰が下って、今では両腕がありません。
身分も平民に落とされ、神殿という名の牢獄に中です。
妹のシャンも奴隷に落とされ、売春宿で働かされているそうです……
両者とも自業自得とはいえ、少々可哀想になるほどの落ちぶれようです。
そうそう、私の立場でしたね。
私はセラン皇太子殿下の側室という名の人質だと思います。
殿下は私を愛していると言ってくれていますが、信じることができません。
あのような事があったので、人間不信になっているのかもしれません。
二カ月ずっと側にいて愛を囁いてくださっていたなら、信じることができたのかもしれませんが、殿下は皇国に戻られて直ぐに、軍司令長官としてダンジョンに向かわれて不在です。
「太妃殿下、お茶をお持ちしました」
侍女の一人がお茶を持って来てくれました。
私が太妃殿下と呼ばれたので、正室と勘違いされた方がおられるかもしれませんが、側室でしかありません。
もっとも、あれだけの問題を起こしたエンドラ公爵家の娘が、ルセド皇国皇太子の側室になれること自体が特別待遇で栄誉な事なのですが……
話を戻しましょう。
ルセド皇国では、皇帝陛下と皇太子殿下のお二人とも後宮を持っておられます。
私は一応定員のある太妃の地位を頂いていますから、大切にされているともいえますし、一番ではないともいえます。
いえ、殿下は私以外側室を置かれていないので、今は一番なのかもしれません。
「皇帝後宮の階級」
皇后 :定員一人
皇貴妃:定員一人(皇后不在時のみ)
貴妃 :定員二人
妃 :定員四人
嬪 :定員六人
貴人 :定員なし
常在 :定員なし
答応 :定員なし
官女子:定員なし
「皇太子後宮の階級」
太貴妃 :定員二人
太妃 :定員四人
太嬪 :定員六人
太貴人 :定員なし
太常在 :定員なし
太答応 :定員なし
太官女子:定員なし
私の容姿が優れていて自信家なら一番と思えるのでしょうが、私はそれほど自信家ではありませんし、事情が事情ですから、とても一番だとは思えません。
何より王侯貴族の結婚は政略によるものです。
だからこそ、皇太子後宮には皇帝陛下の正室と正室代理である皇后陛下と皇貴妃殿下に相当する地位が設けられていないのです。
皇太子時代にどれほど愛する相手がいたとしても、正室にあたる地位には就かせないという明確な決まりがあるのです。
私はこれからどうなってしまうのでしょうか?
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