第7話:人質?

 何故かセラン皇太子殿下が傷ついたかのような表情をされます。

 止めてください、期待してしまうではありませんか!

 これでも私は自分の事をよく理解しているのです。

 私は今流行りの可愛い令嬢には絶対になれない性格なのです。

 それに、そもそも、ブスではありませんが美人でもありません。

 ごくごくありふれた十人並の容姿でしかありません。

 セラン皇太子殿下の婚約者候補として選び抜かれた、皇国の令嬢とは比べものにならないのです。


「ふう、これは、口で何を言っても信じていただけないようですね。

 どうでしょうか、私と一緒に皇国に来ていただけませんか?

 来ていただければ、私の本心を理解していただけると思います。

 いえ、理解していただけるだけの真心をお見せしましょう」


 ええと、これを言葉通りに受け取れば、私へのプロポーズになりますが、それを鵜呑みにするほど私は愚か者ではありません。

 今のこの国の状況と、エンドラ公爵家の立場を考えれば、間違いなく人質ですね。

 皇国のような大国では、露骨に人質を出せとは言えないのでしょう。

 それなら理解でしますし、納得もできます。

 ですが、これはエンドラ公爵家にとってチャンスです。

 人質を要求するという事は、問答無用で潰す気がないという事ですから。


「やれ、やれ、また何か大きな勘違いをされていると、表情にでていますよ。

 先程までの聡明なユリア嬢はどこに行ってしまわれたのでしょうか……

 やはり口で何を言っても無駄ですね、でも、そういうユリア嬢も可愛いです」


「ああ、殿下の話は聞き流しておいてくれ。

 それよりも諸卿に対する要望と忠告を伝えておく。

 王家に味方して軍を動員したり、陰で兵力や兵糧、軍資金を融通したら、潰す。

 単に潰すのではなく、一族一門皆殺しにする。

 その覚悟があるのなら、無礼卑怯なプラット王家に味方するがいい」


 ザウェル辺境伯モントがとても優しい宣言されています。

 これは逆に考えれば、王家に味方しなければ家を潰さないということです。


「家を潰さない条件は、皇国軍の侵攻にあわせて軍勢を整え、共にプラット王家を潰す事だ、そうすれば皇室に忠誠を尽くす気があると認める」


 それも当然の条件ですよね。

 皇国の貴族になりたいのなら、皇室に忠誠を尽くす証拠を見せる必要があります。

 当然それは一緒にプラット王家を攻撃する事です


「同時に、日和見する卑怯者も許さない。

 皇室とプラット王家の両方に媚を売る者など信用できない。

 だが、代々仕えたプラット王家の剣を向けたくない、向けられない気持ちも分かるから、そういう家は私財を持ってこの国を逃げ出すか、庶民になると届けを出せよ」


 とても優しい、本当に優しい心遣いですね。

 多くの貴族はどう決断するのでしょうか?

 父は、エンドラ公爵はどんな決断を下すのでしょうか?

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