第6話:急転直下
こうなっては仕方がありません、私は全てを諦める事にしました。
公爵令嬢としての誇りを守るために、皇国と戦うしかありません
セラン皇太子殿下と敵対するのは哀しい事ですが、プラット王国の貴族として、護らなければいけない矜持があるのです。
貴族たるもの、抵抗もせずに侵略者の軍門に下るわけにはいきません。
開戦の原因が、我が国の方に圧倒的な落ち度があろうとも……
「最初にプラット王国の緒卿に確認しておくが、この開戦の責任がプラット王家の非礼卑怯である事は理解しているな?
その上でセラン皇太子殿下のお考えを伝えておく。
今回の件は、プラット王家がセラン皇太子殿下に無礼な態度で戦争を吹っかけたからうけた、しかも卑怯にも背後から斬りかかって来たのだ。
だから諸卿にプラット王家に援軍の義理はないはずだ、違うか?」
これは正直意外でした、王家だけでなく貴族も皆殺しにした方が、皇国の直轄領が増えますし、参戦した皇国貴族に与える領地も増えます。
皇国は大国ですから、対外的な見栄や建前が必要なのでしょうか?
それとも他に何か理由があるのでしょうか?
もっとも、流石に王家の流れを汲む貴族は許されないでしょうし、元凶となった妹がいる我が家は、絶対に許されないでしょう。
「ユリア嬢、大切な婚約披露パーティーを台無しにしてすまなかったね。
皇国の密偵がたまたまアーサーとシャンの不義密通を知らせて来てね。
僕は立太子式に来てくれた時の君の事が忘れられなくてね。
何かあってはいけないと身分を隠してきたんだけれど、ここまでアーサーが愚かだとは思っていなかったんだよ」
ええと、これは、どういう、意味なのでしょうか?
あまりにも多くの事が起こり過ぎていて、私の理解が追いつかないです。
アーサーとシャンが不義密通していた、これは理解しています、大丈夫。
二人は私を陥れて婚約を解消しようとしていた、大丈夫これも理解しています。
その事を皇国の密偵が知り、セラン皇太子殿下に知らせた、これは今聞きましたが、予測していた事ですし理解できています。
ですが、ここで、なぜ、十年も前に会っただけの私の事が忘れられないという話になるのか、全く理解できません。
夢見がちな貴族令嬢が好む、甘ったるいおとぎ話なら、ひとめぼれの初恋話となるのでしょうが、政略結婚が当たりまえの現実の王侯貴族では、絶対にあり得ません。
こんな話を信じる貴族令嬢は、頭がおかしいのです。
私は至極真っ当な貴族令嬢ですから、そんな話を信じたりはしません。
これには絶対に何か裏があるはずです!
「優しいお言葉ありがとうございます、セラン皇太子殿下。
ですがもう覚悟はできております、真実をお話しください」
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