5

 薄暗い部屋に薄ぼんやりとした明かりが灯り、その柔らかな光が室内を浮かび上がれせていた。壁には男性アイドルグループのポスターが貼られており、その隣には、ハンガーに掛けられた制服がぶら下がっている。光量が不足する室内では、その色遣いまでは判別できなかったが、それはピンクを基調とした女の子らしい部屋だ。机の上や棚には、可愛らしいマスコットなどが置かれ、ベッドの枕元に居るクマのぬいぐるみが、その部屋の持ち主を心待ちにしている様だ。

 佳澄は机でノートパソコンを使って、しきりにネット検索を行っていた。そのディスプレイが放つ弱々しい光が、彼女の横顔を浮かび上がらせている。

 「・・・違う・・・」

 忙しなくマウスを操り、次から次へとウェブページを閲覧していた。

 「これも違う!」

 時計は既に、深夜を回っている。先ほどから佳澄は、こうやって3時間以上もパソコンに噛り付いているのだ。それもここ数日、晩御飯と入浴を済ますと直ぐに自室に閉じこもり、毎日ネット検索する日々を続けていた。

 「これも違う・・・」

 佳澄は疲れた目を休める為、左手で両目の間を掴み、マッサージするように力を加えた。そうして、凝った肩を揉み解すように首を回すと、またディスプレイに目をやった。そして新たなページを開いた時、佳澄の動きが止まった。

 「見ぃ~つけたぁ~」

 佳澄がニヤリと笑った。薄暗い空間に、彼女の不気味な顔が浮かび上がった。

 佳澄はすぐさまスマホを取り出すと、ブラウザに今見付けたサイトのURLを打ち込んだ。すると、パソコンと同じサイトがスマホ内でも立ち上がった。そして、そのサイト内のある画像をダウンロードし、スマホのストレージ内に保存した。そして舌なめずりをするように、LINEアプリを立ち上げた。

 その時、下の階から母親の声が聞こえた。

 「佳澄ーっ、まだ起きてるのーっ!? 夏休みだからって夜更かししてちゃダメよーっ! さっさと寝なさーいっ!」

 「うーん! もう寝るとこーっ!」

 佳澄は大声で答えた。

 努力が報われたことを感じていた。この夏休みは、有意義に過ごせそうだ。休み明けの新学期が待ち遠しい。佳澄は、もう疲れてなどいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る