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薄暗い部屋に薄ぼんやりとした明かりが灯り、その柔らかな光が室内を浮かび上がれせていた。壁には男性アイドルグループのポスターが貼られており、その隣には、ハンガーに掛けられた制服がぶら下がっている。光量が不足する室内では、その色遣いまでは判別できなかったが、それはピンクを基調とした女の子らしい部屋だ。机の上や棚には、可愛らしいマスコットなどが置かれ、ベッドの枕元に居るクマのぬいぐるみが、その部屋の持ち主を心待ちにしている様だ。
佳澄は机でノートパソコンを使って、しきりにネット検索を行っていた。そのディスプレイが放つ弱々しい光が、彼女の横顔を浮かび上がらせている。
「・・・違う・・・」
忙しなくマウスを操り、次から次へとウェブページを閲覧していた。
「これも違う!」
時計は既に、深夜を回っている。先ほどから佳澄は、こうやって3時間以上もパソコンに噛り付いているのだ。それもここ数日、晩御飯と入浴を済ますと直ぐに自室に閉じこもり、毎日ネット検索する日々を続けていた。
「これも違う・・・」
佳澄は疲れた目を休める為、左手で両目の間を掴み、マッサージするように力を加えた。そうして、凝った肩を揉み解すように首を回すと、またディスプレイに目をやった。そして新たなページを開いた時、佳澄の動きが止まった。
「見ぃ~つけたぁ~」
佳澄がニヤリと笑った。薄暗い空間に、彼女の不気味な顔が浮かび上がった。
佳澄はすぐさまスマホを取り出すと、ブラウザに今見付けたサイトのURLを打ち込んだ。すると、パソコンと同じサイトがスマホ内でも立ち上がった。そして、そのサイト内のある画像をダウンロードし、スマホのストレージ内に保存した。そして舌なめずりをするように、LINEアプリを立ち上げた。
その時、下の階から母親の声が聞こえた。
「佳澄ーっ、まだ起きてるのーっ!? 夏休みだからって夜更かししてちゃダメよーっ! さっさと寝なさーいっ!」
「うーん! もう寝るとこーっ!」
佳澄は大声で答えた。
努力が報われたことを感じていた。この夏休みは、有意義に過ごせそうだ。休み明けの新学期が待ち遠しい。佳澄は、もう疲れてなどいなかった。
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