6

 「ちょっと待て。親同士のいざこざを子供が引き継いでいるってことなのか? くっだらねぇ!」

 「ほんと、下らないよね。お父さんはそのことを何とも思ってはないんだけど、佳澄は中学の頃から、何かと私にちょっかい出してくるようになったんだ。てか、何とも思われてないことが腹立たしいのかもね。断るにしても、もうちょっと言い方が有ったと思うんだけど・・・」

 「バカバカしいっ!」

 「ねっ、そんなことよりさ・・・」

 琴美が話を変えた。おそらく、これ以上この話題を続けたくはないのだろう。確かに、下らない連中の下らない生態に関する話題など、生産的な話にはならなそうだ。

 「講習受けるの、こっちのほうが良くない? エントリーCカードで総費用6万5千円! プール講習2回と海洋実習2回が込みだよ! 安くない!?」

 琴美が差し出す雑誌を覗き込んだ祐介が、気乗りしなさそうに言った。気の重い話が続いたので、わざと彼女を煽ったのだ。また少し、ワイワイガヤガヤとした会話を琴美と楽しみたいと思って。

 「大洗? 茨城かよぉ・・・」

 祐介の思惑通り、琴美が食って掛かってきた。またいつもの調子に戻ってきた。

 「何よ。大洗の何が悪いのよ。ココ、お店の人が親切に色々教えてくれるんだよぉ! 魚だって美味しいし!」

 「だって、この前言ってた茅ケ崎の方がオシャレじゃね?」

 「オシャレは関係ないでしょ! バカ!」

 「バカとはなんだ、バカとはっ!? このぺちゃパイ!」

 「あーーっ! 人間、言っていいことと悪いことが有るんだぞーーっ!」

 琴美は祐介に飛びかかると、その首を絞めながら前後に揺すった。祐介はガクガクと揺すられるがまま、白目をむいた。

 「て・・・ 撤回します・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る