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 「やっぱり女の子が家に居ると賑やかでいいな。わっはっは」

 祐介の父、泰文は一番賑やかなのは自分であることにも気付かず、琴美を交えた食卓にご機嫌だった。祐介は、人間の鼻の下ってあんなに伸びるのかと、呆れる様な面持ちで父を見ていた。一方、母はと言えば、さき程、祐介と琴美が重なり合っている現場を目撃してしまったためか、なんとなく気まずい様な恥ずかしい様な雰囲気で、どちらとも目を合わせないのであった。そのくせ、溢れ出る微笑みをその顔にやんわりと貼り付け、何だか少し火照ったように頬を赤らめていた。それを見た祐介は、母が変な具合に発情してしまったのではないかと、要らぬ心配をするほどであった。

 「で、琴美ちゃんのお父さんは、何をしているのかな?」

 デレデレした泰文の質問に、少し戸惑った様子を見せたが、琴美は直ぐに答えた。

 「医者です」

 「ほぉーっ、お医者さんかぁ。そりゃ凄い」

 それは祐介にとっても初耳だった。そういえば、琴美の家族についてなど、尋ねたことも無かった。しかし、泰文は別のことに気付いたようであった。

 「えっ、ひょっとして、栄町の山下医院?」

 「はい・・・ そうです」

 山下医院とは市内有数の大病院で、正式名称は山下総合病院という。かつては小さな町医者だったが ――その頃を知る人は、今でも山下医院と呼ぶ―― その後に拡充を重ね、今では押しも押されぬ総合病院である。赤十字病院、日本医療福祉大学病院と並ぶ規模を誇る大病院の愛娘が琴美だったのだ。ただ、しきりに恐れ入る泰文をよそに、なんとなく居心地が悪そうにしている琴美を見て、あまり触れて欲しくはないのだろうと感じた祐介であった。

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