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 翌朝、登校すると、教室は既に喧騒の中に有った。昨夜のサッカー日本代表の試合をネタに盛り上がっている男子グループ。電撃入籍を報道された芸能人に関して好き勝手なことを言い合っている女子グループ。宿題を忘れて、授業が始まるまでに写し取ろうと奮闘する出来の悪い奴。朝から読書にいそしむ文学少女や、アニメ雑誌に没頭するイケてない男子。色々な奴らがワイワイガヤガヤと賑やかな時間を過ごしていた。そんな中、琴美は一人で自分の席に座り、ボンヤリと前を見つめていた。祐介は彼女の横を通って自分の席に着く際、「おはよう」と声を掛けた。一瞬、教室全体が静まりかえりそうな気配を見せたが、「おいーっす!」と大声で教室に入って来た基也の声が、そんな空気を混ぜっ返した。琴美もビックリしたような顔で祐介を見つめていたが、次いで恥ずかしそうに小さな声で「おはよう」と応えた。

 「おぅ、祐介! 昨日の香川のボレーシュート見たか!?」

 朝っぱらから元気のいい基也が、いきなり教室の話題の主導権をかっさらって話しかけて来た。奴はいつだってそうだ。でもそれがイヤミじゃないのは、奴の朗らかな性格によるところが大きかった。

 「あぁ、見たよ。ってか、あれは長友のセンタリングが凄かったよな」

 そう答えると、基也は祐介の肩をバンバン叩きながら言った。

 「おぅよ! 判ってるねー、さすが祐ちゃん! 俺、バスケ辞めてサッカー部に入ろっかな、マジで」

 「バーカ。お前にゃ無理だよ。だってお前、オフサイドが判ってねぇもん」

 「んなこたぁねぇよ、バカにすんなよ! オフサイドだろ、オフサイド・・・ オフサイドって何だ?」

 教室中がドッと笑った。祐介が琴美にも笑顔を向けると、琴美も遠慮がちに微笑んだ。

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