第38話 転校生
下部に簡単な登場人物紹介があります。参考にして下さい。
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突然引っ越してきた亜巫、同じ年だという事もあって夢彩高校への転校手続きを進めていた。
転入試験を無事合格、僕の学力なんてとても敵わないほど頭が良かった。
天音とはなぜか家族のように直ぐに気が合い良く一緒に出かけていた。
「今日から亜巫ちゃんも学校に通うから、連れて行ってあげなさい」
母に強く背中を叩かれた。女の子と学校に行くなんてことがあっただろうか。大人しく後ろをついてくる亜巫。家ではだいぶ慣れたが、家庭環境からあまり学校にいい思い出がないらしくとても緊張していた。
天音が住んでいる屋敷の前を通ると窓から外を眺める女性、ツインテールの可愛い女の子。何かとても懐かしい。
「お兄様、何を見ているんですか」
「ああ、2階の窓に座っている女性に見覚えがあるなぁってね」
「そんな方どこにも見当たりません……」
あれ……確かにいたはず。幻覚か……でも確か屋敷に住む天音は1人暮らしって言っていたはず……。
「本当だ。気のせいかな」
空を見上げて頭をぼりぼり掻いてしまう。そんな様子をみてクスクス笑う亜巫。口を抑えて上品な笑う。
狐につままれた気分のまま学校に向かった。
* * *
「お兄様、また後でお会いしましょう」
亜巫と別れて教室に向かう。教室はいつも以上の盛り上がりを見せている。
亜巫の今までの経歴から、僕のいるクラスに入る事に決まっていたからだ。それに隣のクラスにふたり転校生もくるようで、全員女子なこともあってか特に男子は異様な盛り上がりを見せていた。
「なぁ恭平、転校生が同日に3人って珍しいな」
「まあ細かいことはいいじゃん。隣のクラスにはいる女の子、双子らしいぜ」
「そういえば僕も妹の亜巫と生まれた日が同じだったんだよ。偶然って凄いよな」
教室に
「えー、今日からこのクラス入ることになった、
先生の言葉と共にクラス中の視線を一手に浴びる。なんとも言い難い雰囲気、隣に座る亜巫の姿を見守る。
休み時間の度に亜巫の周りには沢山のクラスメイトが詰め寄せた。教室の外には他クラスの生徒たち、亜巫は怯えるように受け答えし僕がフォローをする。そんなあわただしい1日となった。
10月に入ってから文化祭の準備に追われる日々。僕たちクラスも例外ではない。
出し物は喫茶店、ただの喫茶店ではなくストレス発散を兼ねた“ぶっ茶店”。
コーヒーや飲食物を提供するのは同じだが、瓦を模したプラスチックの代用品を用意し瓦割に挑戦。クリアした強度によって特典をつけるというものだ。
知らぬ間に僕が提案したらしい。男子は意中の女子に良いところを、女子は彼氏の良いところが見れるかもという期待から決まったようだ。
「じゃあ後で迎えに来るね」
亜巫を教室に残して図書室に向かった。文化祭の準備は亜巫とクラスメイトに任せ、毎週恒例の図書委員会、いつも通りカウンターに座って本の貸与手続きをする。
文化祭準備の真っただ中のこの時間、図書室には誰一人学生はいなかった。
暇を持て余して不思議系の本を読んでいた。
目の前に人の気配……自然に目線が向かう。カウンター越しにふたりのそっくりな女の子が椅子に座った。
「こんにちは謙心さん。お久しぶりですね」
彼女たちは僕の記憶になかった……ただどことなく懐かしい。
「君たちは?」
「今日からこの学校に転校しました、1Aの那奈代といいます」
「わたしは那奈代の妹で三花といいます」
お団子頭の小柄な女性、入れ替わったらまったく分からないほど瓜二つ。これほど同じ顔だと──
あれ、那奈代……重なるようにツインテールの女性、三花にはナチュラルボブの女性が重なって見える。
なんだろう……ふたりを見ていると恋人にでも会ったように心がドキドキする。
「「謙心さん、突然ですが私たちのどちらかを恋人として選んでほしいんです」」
いきなりの言葉に目は見開き口は半開き、周りの風景が真っ暗になる。なんて答えたらいいのか分からない。
「ちょ……」
「「謙心さん、決まったらこのカードの持ち主に結果を伝えて下さい」」
呆ける僕をしり目に彼女たちは図書室を出ていった。残されているのは1枚のカードがカウンターの上に置かれている。
空でラッパを吹いている女性。ラッパには十字の旗が描かれているカード。何か見覚えがある……喉元まで出てくるような感覚、
真っ暗な闇の中にある小さな光を探るように記憶を探索する。奥底に見える小さな小さな光、その光に向かって意識を向かわせる。
小さな光は脳内を照らすほどにまばゆい光となってとある人物の姿を照らす。
「亜巫……」
終業を知らせる音楽がスピーカーから流れてくる。
あれ……さっき考えていたことが抜けてしまっている……大事なことを考えていたのは覚えている。でも何を思いついたのかどうも思い出せない。
カウンターには1枚のカード。拾い上げたカードをポケットに入れると荷物をまとめて教室に戻った。
教室は準備はそっちのけでいくつかのグループに分かれて遊んでいた。
亜巫は数人の女生徒に何やらカードを使った占いをしている。机に並んだカード、広げられたカードには太陽の絵柄が書かれたものや人が吊るされている絵柄があった。
「あらお兄様」
振り返る亜巫、その言葉を聞いた周りの女生徒が冷ややかな言葉が浴びせられる。
「謙心くん、亜巫ちゃんにお兄様と呼ばせているの」
「い、いや……亜巫がそう呼ぶんだよ。謙心でも兄さんでも好きなように呼んでって言ったんだけど」
慌てて弁解する。首に背筋に冷たい汗が流れる。
「わたしがそう呼びたいんです。こんな私を優しく受け止めてくれたお兄様に親しみを込める意味で呼ばせてもらってます」
祈るようにゆっくりと話す。神々しいオーラ、優しい雰囲気が亜巫を包んでいるように見える。
そんな彼女を守るような女性陣の声が次々あがった。
「「いい、謙心くん。もし亜巫ちゃんを泣かすようなことをしたら私たちが許さないからね」」
口を揃えて攻め立てる女子。遠くから男子たちからも「そうだそうだ!」と声があがった。
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《登場人物紹介38:10月》
夢彩高校
1B:
平凡な高校生、読書部、夢の記憶に悩んでいる。
1B:
不幸な少女、家を転々として謙心宅にたどりついた。
1A:
那奈代と三花は双子の姉妹。歴史系の本が好き
1A:
那奈代と三花は双子の姉妹。不思議系の本が好き
彩光高校
1C:
屋敷に引っ越してきた。
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