第15話 栞
下部に簡単な登場人物紹介があります。参考にして下さい。
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期末テストが無事に終わるとクラスメートの頭は夏休み一色。会話もより具体的になり根箱根や豆伊豆と言った地名が聞こえてくる。
「ねえ謙心くん、一緒に倉鎌倉行かない?」
「おい謙心、洗大洗にナンパしに行こうぜ」
同級生や級友から遊びに誘われたが全て断った。祥奈からは「行ってきなさいよ」と言われたが、直ぐに祥奈の所へ行ける場所にいたい。毎日足に刺激を与えて少しでも早く良くなって欲しいし、何かあったら直ぐに駆けつけたい。
美佳からは「日帰り位行って祥奈に土産話でも聞かせてあげなさいよ」と言っていたがとてもそんな気分にはなれなかった。
「さあ期末テストの結果を返すぞ。赤点があったら補講だからな」
「
「
「
総勢40名、ひとりひとりに一言添えて成績票を配るのがこの学校の恒例行事。受け取った者の表情が暗に成績を示唆している。
「3個も赤点があったー」
「よっしゃー100位以内だー」
叫ぶやつ、天高くガッツポーズをするやつ、生気を抜かれたように突っ伏すやつ、人それぞれの反応に個性があって面白い。
「謙心どうだった?」
覗き込んでくる祥奈。サポート役として席は隣、どこに行っても祥奈の傍で嬉しかった。
受け取った成績票を無言で見せる。200人中76位、中間テストの105位から成績アップ。笑顔で喜んでくれた。これも祥奈と美佳が教えてくれたからこそ。
人差し指を口に当てて内緒ポーズをとりながら祥奈は成績票を見せる。平均97点の1位、思わず「おー」と声が出てしまう。
近くに座るクラスメート数名が振り向いたが直ぐに
「(小声)ちょっと反応しないでよね。一応こんな体だし目立ちたくないんだから。絶対内緒にするんだからね」
空気が震えるほどの
「これで今日は終わりだ。結果を受け止めて2学期に備えるんだぞ。赤点の者は来週から補講があるから必ず出席するんだぞ」
授業が終わると各人が部活や「食べに行くぞー」と教室を出て行く。数名の残った生徒はテストの出来栄えや「赤点めんどくせー」と一喜一憂していた。
「じゃあ祥奈、図書委員の仕事があるから待っててね」
教室に祥奈を置いて図書室に向かった。
「オッケー。私はここで本を読んで待ってるわね」
本の間に挟まる栞をペラペラさせる。クチナシの葉が綺麗にラミネートされた手作りの栞。
「あ、それ! わざわざ栞にしてくれたんだね。なんか嬉しいけど恥ずかしいな~」
「いいでしょ~(ニコリ)。ほら早く行きなさい。送れちゃうわよ」
この栞が後に事件を巻き起こすとはこのときは思いもしなかった。
* * *
「今日は暇だな~」
図書室のカウンターで頬杖をついて不思議系の本を読んでいた……いや、眺めていたといった方が正しい。
あたりを見回しても開店ガラガラ状態。貸与履歴を見ても期末テストが始まってから貸与件数が極端に少ない。
「こんにちは謙心さん。今日は暇そうですね」
いつも通り3冊の本を両手に積み上げてカウンターに置く那奈。僕の読んでいる本をマジマジと見つめる。
──タイトル『異世界に迷い込む』 人々が不思議な駅や不思議な世界に迷い込んだ体験記。
「ああ、那奈ちゃん。これ? 実はこういう不思議系も好きでね。織田信長が本能寺の変を実は生き延びて……。そんな話しから興味を持ってこういう本を読むようになったんだ」
カウンターに持ってきた数冊の不思議系の本をペラペラめくる。UFOや未確認生物、埋蔵金など多様な本の山。
「わたしも聞いたことあります。天草四郎時貞も豊臣秀吉の孫だったとか都市伝説がありますよね。確かにそう考えると面白いかもしれません」
そんな歴史から派生するように不思議系の話で盛り上がり、いつも通り歴史の話に戻って行った……。
終業を知らせる音楽がスピーカーから流れてくる。すっかり時間を忘れて話し込んでしまった。那奈は慌てて荷物をしまうと「ごめんなさい、急がないと……またね」と図書室を出ていった。
「僕も急がないと」
荷物をまとめて祥奈を迎えに教室に向かう。校内に人はほとんどおらず聞こえる音は校庭て励むスポーツ部員の掛け声程度。
「あれ? いないなぁ」
教室に祥奈がいない。机には荷物が置かれている。トイレかな? そう思ってしばらく待ったが戻ってくる様子はない。
電話をかけると、バイブの音が静かな教室に響く。音源は祥奈のバック。一抹の不安が心を駆け巡る。
再度電話のアドレス帳をタップして電話をかけ直す。相手は美佳。3コール程で電話に出た。
「どうしたの? ちょうどいま部活が終わったところ」
「いないんだ……」
「え!? 何がいないの?」
「祥奈が教室にいないんだ。委員会から戻ってきたら祥奈が……電話をかけてもバックの中から着信が聞こえるし」
「トイレじゃないの?」
「しばらく待ってるけど戻ってこない。トイレしては長すぎる」
「分かったわ。着替えたらすぐにトイレを見て教室に行くから」
「ありがとう、女子トイレには入れないから頼むね。僕はちょっと校内を探してくるよ……何かあったら連絡ちょうだい」
電話を切るとスマートフォンを尻ポケットに押し込み廊下に走り出した。車いすでの移動を考えると1階のはず。
いない。下駄箱にあるのは下履きのみ。まだ校内のどこかにいるはず。
2階──
すでに18時を回っているが7月の明るさが校舎を照らしまだまだ明るい。
いない……
3階──
廊下に落ちている1冊の本を見つけた。見覚えのある一冊の本。
祥奈が読んでいた本。栞がぴょこんと跳びだしている。
「ん……ん」
階下からかすかに声が聞こえる。
「祥奈!」
踊り場から3階へ上がる階段の途中で伏せている祥奈の姿があった。慌てて階段を駆け下りる。
彼女を抱き起すと制服は汚れ腕には擦り傷が出来ている。祥奈に必死で声をかけると意識を取り戻した。
「け、けんしん……。わたしの栞は……」
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《登場人物紹介15:7月》
夢彩高校
1B:
平凡な高校生、読書部、夢の記憶に悩んでいる。
1B:
従妹であり幼馴染、楽器演奏得意、事故で足が動かない。
1B:
親友。中学校で仲良くなった
1E:
恭平と双子の姉、祥奈の親友、植物大好き、小4まで良く遊んだ。
2A:
読書好きな先輩。歴史小説を好む
1B担任:
読書部顧問でもある
不思議な世界
不思議な少女、那奈代に似ている。
見つけた者を消滅させるらしい
その他
祥奈の
謙心の母の妹、名前を
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