第39話 1-39 修行
そして、それからしばらく平穏な日々が続いたので、俺はエリーセルが外出するような日以外は、修行というか自分の能力を磨く事にしていた。
また何事かあってもいけないしな。
まず飛行能力の精進からだ。
今までこういう能力は、地上すれすれで移動速度を上げるために使っていたり、ジャンプしたりとかで、あまり墜落する危険を冒すような危険な事は避けていたのだが、これもあると便利なので完全に習得したいと思い精進している。
何しろ人間という奴は空からの攻撃には圧倒的に弱い。
ICBMだの地上攻撃機だのの剣呑な例を出すまでもなく、その辺にいるカラスに上から突かれただけでも、もう駄目駄目なのだ。
凶虫オオスズメバチなどは論外なのだが。相手が大群ならヒヨドリ相手にも負けそうな気がする。
大昔の名作で、鳥に襲われる映画があったよな。
米軍ではないが、やはり戦いは制空権を手にしなければ。
それと、いざとなったら姫を連れて逃げられるようにしておかないとな。
大地を奔る地磁気のような物、雷を呼ぶような大地が帯びた電荷、そして大気その物が帯電している事もあるので、そういう物を使って本格的に飛ぶ訓練だ。
こいつは危ないので慎重にやっている。
さすがにまだ誰かを抱えて飛ぶなんて怖くてできない。
いざとなったらやるしかないのだが。
それらの力が足りなければ大気を自力で帯電させて、そいつと自分を反発させて飛ぶのだ。
あと空気を動かして気流を作り出して、それに乗ってみる事も試してみた。
ディクトリウスに訊いたところでは、風魔法を使う者はこういう真似もできるらしい。
後は、糸のついていない凧を作って気流に乗せて乗り回してみたが、さっそくエリーセルが乗りたがって困った。
さすがにお姫様をあれに『載せる』のはなあ。
あのグラッセルでさえ遠慮したというのに。
奴は権力者に一番近い場所にいるので、表ではどっしり構えていたいので、表立ってあのような物で遊ぶわけにはいかないのだ。
内心では奴も乗りたいのだろうと踏んではいたが。
フローセルも乗りたがったが、またグランに抱えられて大人しくさせられてしまった。
あいつは空からいろいろ検分したかっただけなんだろうが、さすがに『帝国の偉大な頭脳』を、そんな怪しげなものに大っぴらに乗せるのは俺としてもマズイので。
サンボーイはもちろん試乗してみたし、それについては誰からも苦情は来なかった。
そしてゴリさんにもおやつのバナナ付き大凧ツアーは大好評だった。
大空で食べるバナナはまた格別な味だったらしく、俺と彼の友情は更に深まった。
グライダーなんかを作ってみるのもいいかもしれないと思った。
何事かあって急に空を飛べなくなった時にも、あれに乗っていれば助かるかもしれない。
気球なんかもいいかな。
そっちの方が作るのは簡単そう。
風任せにしか飛べない地球の物と違って、俺が方向や速度も自由にコントロール可能だ。
そういう物って収納に入れておけば困らないしな。
あと電気を使って、そいつから自在に磁力を生み出す事に成功した。
鉄の槍などは電磁力で強力に打ち出したりもできるようになった。
またスマートブレットのように姿勢制御のための羽根はなくても、自分の能力による気流や周囲の電荷の調整でかなりの精度で目標に命中させられる。
サイコキネシスのように物体を動かす事は可能なのだが、電磁槍はまた別物と言っていい攻撃的な能力なのだ。
普通に放ってもあの重装歩兵を数人まとめて貫通できるだろう。
撃ちやすいように、小型の槍のサイズに合わせた砲身を作ってもらってみた。
次弾装填も補充は収納バッグから直接装填する技術も身に着けた。
槍は不要になったような物などを、あちこちからもらってきた。
今度簡易な、ある程度撃ったら使い捨てに出来るタイプのレールガンなんかの製作にトライしてみてもいいかな。
電力や磁力の発生などは自分の力で可能だが、打ち出すための砲身が持たないだろう。
いつか俺専用の装備として、マギメタル製のレールガンが作れないか相談してみたい。
そのためには一度自分で実際に撃てる物を作ってみる必要がある。
砲身がシンプルなだけ、制御が複雑になるので俺も精進が必要だ。
あれは元々、近代的な今の大砲が実用化される前からあった構想なのに技術的に困難であったため、最近まで作られなかったという、一種の古代兵器なのだ。
その威力やシステムなどを考えると最新技術の超兵器みたいに見えるんだけどな。
最初の自動車は電気自動車だったのにバッテリーの性能が低かったので、最近までは産業用以外は殆ど作られていなかったのと似ている。
コイルガンの方が手軽で簡単に出来るはずなのだが、その代わりあれは大型にしても威力が低く実用化は困難だそうだし。
あのイロモノ兵器開発なら世界一の技術を誇るアメリカでも、荷電粒子砲と同様に兵器としての開発競争からは早々に脱落した代物だから却下だ。
後は必殺の電磁バリヤーと磁力反発フィールドみたいなものだな。
魔法でいえば、魔法障壁とかリフレクションのような物だろうか。
防御力を上げないと、あの馬車の中で矢が怖くて外へ出られなくて往生したようになってしまう。
俺は所詮、生身の人間に過ぎないのだから。
今はあの時とは違って姫君の騎士なのだから、それではいかん。
どうも、相変わらず電磁力を基本とした物理的な魔法擬きしか使えないな。
元のエネルギーは魔法と同じマナを利用しているはずなのだが。
まあそのお蔭で、魔法を阻害するジャマーなんか使われたって俺だけはどうってことがない。
大元のマナを絶たれたら、さすがにどうしようもないのだが。
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