第5話 情報リスとの出合い

「喋ってるってことは元は人間かぁ。同じだね」

リスが冷静に言う。きちんと“元”をつけて。

「僕は、犬河 試馬。えーっと名前は?」

「私は、栗鼠 志真」

「俺は……」

「わかった、都良くんでしょ」

俺が名前を言う前に、志真は俺の名前を当ててしまった。

(そんなに声が特徴的でも無かったはずなのに、なんでだ?)

「すごーい!どうして都良くんだってわかったの?」

試馬の称賛するようで探っている、不思議な声色。カラスの姿の七花の顔も、不思議だと思っているような顔つきだった。

「あははっ!だって都良くん、有名人だもん。私達のクラスではね。あの鳩柱 君子と仲良いらしいからね」

確かに、俺と君子は仲が良かった。保育園からのくされ縁で、親友だった。今はあまり話さなくなったけど、休みの日などの予定が合えば一緒に外出している。

「そうだったの?」

七花が聴いてくる。俺は静かに首を縦に振った。

「どうして言わなかったの?都良くん」

「どうしてって言われても。別に聞かれなかったし、クラスで結構ウワサになってたから、知ってたかなぁと思って」

「「いや、知らなかったよ!」」

七花と試馬、二人の声が重なる。

「んで、そっちの女の子の名前はなんていうの?」

「あっ、鴉河 七花」

「ん。そっか、よろしくね七花ちゃん」

(七花って、人見知りか?俺と試馬のときは結構グイグイ来てたけど)

「そういや栗鼠、お前君子見なかったか?」

「鳩柱くん?いや、見てないけど…、家ぐらい知らないの?」

「知ってるけど、遠いんだよ。行くのが面倒」

「そっか」

俺と志真の会話を静かに聞く二人に、俺は心底驚いた。

(以外だな、あいつらが黙りこくるのは)

「そういえば、志真ちゃん、今日学校は?」

「えっ?長期休暇期間で休みのはずだけど?」

「ああ、そっかぁ!」

(いつも思ってるけど、なんでうちの学校にはそんな変な期間があんだよ)

「じゃあ、収穫なしかぁ~」

試馬が口を尖らせて言う。どうしようか、とあたりを見回す。すると、視界の端の方の木の枝が、揺れた。

(無風、だよな。じゃあ、何故?)

俺は、を頼りに、木の上の方へと登って行った。木の枝が揺れたあたりにつくと、小さくて灰色の影が、大空へとけて行った。

「逃がすかぁ!」

俺は走った。試馬も、七花も志真だって気にせず。人という障害物をうまい具合に避けながら。途中、通学中の子供に捕まりそうになったけど、人情なんか関係無しに、そいつの手を噛んだ。少し可愛そうかな、とも思ったが、あいつを逃がすわけにはいかない。そう、あの、たった一筋の希望の光を。

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アニマル・チェンジ! 五十嵐 怜 @yukiharamio

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