第3話 序盤から、気が合わず

試馬と情報交換をして、数分後。

(それにしても、何故人間が動物に……)

「なんで僕ら、動物さんになっちゃったんだろうね」

「ああ、そうだな」

(試馬も考えていたとは。見かけや言動のわりには考えるんだな)

俺なりに、二人の共通点を考える。だが、同じ中学というところしか、共通点がない。

「な、なぁ、試……」

「あっ、都良くん、見て見て!美味しそうなケーキ屋さんだよ!」

「そう、だな」

(こいつ、話ぐらい聞けよ!)

試馬は、「いいなぁ、食べたいなぁ」などと言っている。

俺は溜め息をつくと、犬の姿の試馬の方を向いた。

「試馬、聞いてくれ」

「うん?どうしたの?」

「試馬。俺はな、俺らが動物になったのはなにか共通点があると思うんだ。今のところ、俺が見つけられている共通点は一つ」

試馬の顔を見ると、真剣な表情で俺の話を聞いている。

(こんな表情も出来るんだな。試馬って)

「同じ中学だということだけなんだ」

「あっ!確かにそうだねぇ」

(こいつ、気づいてなかったのか?)

俺が驚いた顔で試馬を見ると、試馬もまた、俺の顔をじっと見ていた。

「なんだ?どうした?」

「都良くんって、トラ猫さんなんだね。ホント、名前にピッタリ」

「えっ?だったら試馬だって、柴犬だぞ?」

試馬は、目を丸くした。自分が柴犬だとは、夢にも思わなかったようだ。

しばらくの沈黙の後、意を決したように、試馬が口を開いた。

「もしかして、僕らのクラスの、名前に関係があるんじゃない?都良くん、クラスメイトで名前が動物の子、居ない?」

(試馬に言われ、思い返してみる。確か、三人くらいいた気がする。栗鼠くりしょ 志真しまと、鴉河からすがわ 七花なのか。そして、鳩柱はとばしら 君子くんし

「三人居るな。栗鼠と鴉河と鳩柱」

「鴉河って、七花ちゃん?」

「ああ、そうだ。鴉河 七花」

「う〜ん、七花ちゃんは知ってるけど、他の二人は知らないなぁ」

「俺らと同じクラスだけど、まあ、しょうがないか。来たばっかだし。栗鼠は、栗鼠 志真。たしか、バスケ部だって言ってたっけ。んで、鳩柱は、鳩柱 君子。学校での人気者だ。お前も、君子には気をつけろよ?まぁ、正確には君子のファンクラブに、だけど」

(あいつら、君子のこととなると本気だからな)

そう。鳩柱 君子にはファンクラブがある。ファンクラブの奴らいわく、学校公認の、れっきとした部活動だそうだ。

「君子くんって、すごいんだねぇ」

試馬が目をキラキラさせていると、地面が暗くなった。

(なんだ?人間か?)

「あれ?仲間かと思ったら、犬と猫って。全然種族が違〜う!」

それは、人間ではなく。ましてや動物とも言えるのかを疑う存在。

カラスだった。

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