終章 ~封印されし魔王~

前編

ASR2000年 語り継がれるお伽噺

「さあ、もう寝る時間よ」


「えー? まだ眠くなーい」


「そんなこといって。また明日もお寝坊したらリンカちゃんに嫌われちゃうわよ?」


「うー。

 じゃあ、お話して」


「お話って……また勇者様のお話?」


「うん」


「トリルは勇者様の話が本当に好きね」


「お願い!

 お話してくれたら寝るから」


「本当? 約束する?」


「うん」


「はいはい。仕方のない子ね……


 昔々、このヤマト大陸の東にとても悪い王様がいました。

 魔術で人々を苦しめ、魔獣を生み出して人々を襲わせたのです。

 人々は恐怖し、悪い王様を魔王と呼びました。


 そんな風に苦しめられる人々を、神様は見捨てはしませんでした。

 神様は4人の天使を使わし、一人の若者に力を与えたのです。


 若者の名はラスティス。


 ラスティスは皆に見送られ、魔王を倒す為に旅立ちました。


 ラスティスの旅は大変なものでした。

 いつ魔獣に襲われるか解らない、そんな道中を疲れ果てながらも歩き続けました。


 ですがラスティスは諦めませんでした。

 彼には彼を支える仲間がいたのです。


 時には危ない戦いもありました。

 それでもラスティスは仲間に支えられ、魔王城に辿り着いたのです。


 魔王には四天王と呼ばれる配下がいました。

 四天王は皆強く、ラスティス達の仲間は一人、また一人と倒されてしまいます。


 ラスティスにとって仲間の死はとても辛いものでした。

 それでもラスティスは悲しみに耐え、進み続け、そして遂に魔王と対峙したのです。


 四天王ですら統べる魔王はラスティスが出会った中で最も強い相手でした。

 ラスティスは戦いの中で自分では勝てないことを悟りました。


 それでもラスティスは諦めませんでした。

 仲間の死を無駄にはしない。

 その強い心で、神様に貰った力……魔王を封じる力を解き放ったのです。


 流石の魔王も神様の力には勝てませんでした。

 ですが魔王は封じられる直前に、この世界に呪いをかけたのです。


 人間共よ、呪いに怯えよ!

 呪いを解く手段はただ一つだ!

 我を倒しに来るがよい!

 我を倒す為の力を! 魔の力を求めるがよい!

 そのとき我は再び現われ、今度こそこの世界を滅ぼしてやろう!


 ラスティスは聖都に帰り、皆にこう言いました。


 魔王は封じた!

 だが、もし皆が心を悪に染め、魔の力を欲するとき、きっと魔王は蘇るだろう。

 正しく生きよ!

 我らが愛すべきこの世界のために! 


 今も魔王は東の魔王城に封じられています。 

 四天王に守られて。


 だから……


 早く寝ない悪い子は、また魔王に呪われちゃうわよ~!」


「アハハ、やめて。

 くすぐらないで~!

 寝る、寝るから~!」


「フフ」


「もう!」


「あら。

 そんなことで怒るような人は勇者になんてなれないわよ?」


「やだ。

 僕は勇者になる!」


「じゃあ、明日お寝坊しないで起きて、ドウジさんのところにお稽古行かないとね」


「うん、僕寝るよ」


「そう。

 それじゃ、ちゃんと毛布をかけて」


「は-い。

 お休みなさい、ママ」


「はい、お休みなさい。

 私のトリル」

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