都市伝説週刊誌【ミステリーサイン】

-45号 記憶の在処-


 常識というのは時に簡単に覆される。


 例えば、人は脳で記憶する。

 

 こんな台詞を聞かれれば、それはそうだと100人中100人が答えるだろう。

 だがその常識は、とある人達の体験によって打ち崩されようとしている。


 その一人、朝野さん(仮名・女性)は心筋症治療の為、心臓移植を受けた。

 ドナーの名前は彼女に知らされていないにも関わらず、彼女はドナーの名を呼び、そしてドナーの家族の名を呼んだという。


 本来レシピエントにドナーの情報は知らされない。

 その為レシピエントとドナーの遺族が会うこともないのだが、彼女は術後自らの足でドナーの遺族に会いにいったという。


 あまり知られていないが、移植手術により記憶が転移する報告は何例も存在している。

 術後のレピシエントの人格変化は、自覚症例だけでも20%を越えるというのだから驚きであろう。


 この結果を受けセル・メモリーの研究は続けられているが未だ解明には至っていない。

 未だ明かされぬ生命の神秘。記憶の在処は?

 

 その神秘に一歩でも近づくため、本号では記憶転移の実例を特集する。


 ……




-46号 もう一人の自分-


 ドッペルゲンガーという言葉を聞いたことがあるだろうか?

 本来は自己像幻視-自身の姿を自身で見る幻覚の一種だ。


 文学などでは不埒な目的を持つシェイプシフターとして描かれることも多く、今では自身とそっくりな外見を持つ何者か、という意味合いの方が強い。


 実際、実像を持つドッペルゲンガーの存在は何もあり得ない話ではない。


 一卵性双生児も考え方によってはドッペルゲンガーと言えよう。


 そしてクローンも。


 前号でセル・メモリーについて特集したが、ではクローンが元となった者の記憶を持つとすれば?


 アメリカで誕生したクローン犬“サンディ”。

 ある日飼育係の隙をついて施設を脱走したサンディが向った先は、サンディの元となった犬“ベルリ”が飼われていたオーソン家であったという。


 ベルリは嘗てテレビCMで有名になった名犬だった。

 そんなベルリの復活を。 

 賛否別れる意見を受けながら誕生したクローン、サンディ。

 

 果たしてサンディはベルリの記憶を辿ったのだろうか?

 サンディがベルリの記憶を持つのなら、もはやサンディはベルリであると言ってもよいのではないだろうか?


 だがサンディをベルリと呼ぶ者はいない。

 サンディとベルリは別人ならぬ別犬だと。

 

 他ならぬオーソン氏が涙ながらに語る。


 ベルリの魂はベルリの肉体に宿っていたのだと。

 ベルリの死と共に天に昇っていったのだと。


 ではサンディの魂は?


 オーソン氏はサンディについては何も語らなかった。


 複製された肉体“クローン”。

 ならば魂は?

 複製かそれとも……


 本号では今まで誕生したクローン生命体達の生涯を特集する。


 ……




-47号 宇宙からのギフト-


 先日一つの理論がインターネットを騒がせた。


 我らが住む母なる大地、地球。


 この地球を一つの生命体とする理論、ガイア理論についてはご存じだろうか?

 名前は知らなくとも、地球は自己調整機能を有しているという考え方を知る人達は多いだろう。


 地球環境に対する人為的介入はこれを妨げるものであり、地球の寿命を縮める行為になり得る。

 環境問題を考える上でこの理論を基本とする人達は大勢いる。


 このガイア理論を根本の部分で真っ向から否定する理論、それが今話題の新ガイア理論である。


 地球を1個の生命とする、その一点に違いはない。

 異なるのは人の位置付けである。

 人も地球の造り出した生命体であり、人工は自然の一部に過ぎない、と新ガイア理論では位置付けられるのだ。


 つまり地球に人為的介入など定義としてあり得ないのだと。


 ではなぜ地球は、人などと言う自らを破壊する生命を生み出したのか?

 その答えこそが新ガイア理論の核である。


 理論を要約するとこうなる。


 地球、つまり星が1個の生命であるならば他の星もまた生命である。

 しかしながらその地表に生命を宿すのは地球だけだ。

 生命がいる。

 それ自体が“異常”なのである。

 ウィルスや細菌に身体が抗体を作り出すように、地球も異常を排除すべく人間を生み出した。


 人の技術は爆発的に進化している。

 環境を守ると言いながら、人は地球への介入をやめられない。


 それが地球の与えた人への役目であるならば、人は悲しくも破滅に向かって進む足を止められはしないのかもしれない。


 新ガイア理論を唱えるアークレス氏は言う。


 快適な文明の利器の下で安眠を得る者達よ。

 貴方は進化の先にあるタイムリミットに、まだ気がついていない。


 我々はこのアークレス氏と直接コンタクトをとることに成功した。


 驚いたことにアークレス氏は新ガイア理論は既に事実であると、アメリカ政府は知っていながらそのことを隠しているのだと言う。

 その理由はアークレス氏によると、遠い宇宙から送られたギフト「ダークミスト」にあるという。


 果たしてダークミストとは?


 本号ではアークレス氏との会談と、彼の語る新ガイア理論の根拠「ダークミスト」について判明したことを掲載する。


 ……




<あとがき>

12章完

13章「魔人の咆哮」 3/23以降更新予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る