魔術の展示会
ここでいきなりですが結果発表~!
各種族の欲しい物アンケート結果をお知らせします。
サイボーグ……っつーてもシュテンだけだけど。
新しい刀。理由は流石に刃こぼれが目立ってきたから。
因みにそれ、マグロ包丁ね。
野獣との戦闘となれば扱いも荒くなる。
包丁メーカーも生きて突進してくる魔獣を斬ることまで想定しちゃいなかっただろう。
虎皮共は族長みたいなかっこいい武器。
多分バイデントのことだろう。
“強い”ではなく“かっこいい”武器である辺りが奴ららしいといば奴ららしい。
使用時ガラクタの尻にコードを突っ込む槍がかっこいいだろうか?
知らね。
エルフから多かったのはガスグレネード。
なんで? と思ったが、魔法を使える者と使えない者との格差を埋めたいというのが理由だった。
炎上トマトを育てる街で、農民が火炎放射器で武装するのか……
事件が起きる予感がする。
ヤコウチルドレンからは軽くて丈夫な鎧
意外と現実的で驚いた。
金属って重いからね。
聖教国の騎士も、よくあんな重たい物纏って動いているものだ。
野獣に襲われるリスクがあるんだから仕方ないんだろうけども。
あちらさんの情報伝達が遅いのはそのせいもあるのだろう。
因みにヤコウは……鎌?
農業でも手伝う気だろうか? パパは農耕馬から卒業したろうに。
「クサリ、フンドウ、ツイテル、イイ」
……鎌といえば鎌だね。
ドワーフからはタイヤ。
鍛冶や大工の技術でゴムタイヤは作れないからな。
で、タイヤなんぞ何に使うのだろう?
「戦車を造りたいそうよ?」
「はい?」
多分デカい砲身もったアレではあるまいが。
「馬に引かせる装甲車を造りたいみたいね。自分達の動きの遅さをカバーしたいからって」
ドワーフは役立たずではないが、食料とかライフラインは他の種族に頼っているのが現状だ。
何かしら思う所があったのかもしれない。
そして街人の末裔達。
トイレ。
平和。
「ときどき糞を食ったであろう清掃虫が穴から出てくるので困るのだそうだ」
一部の人達は温泉施設にあるウォシュレットを知っているからね。
俺はどこぞのクラフトゲームでも、家を建てるときは使いもしない風呂とトイレを造る位に様式に拘るタイプだ。
自分が大便をしない身体であるにも関わらず、温泉施設にはトイレがある。
とまあそんなわけで、展示会場には多数の武器が並んでいる。
渡してイイか悩んだものもあるけれど、欲しいモノが手に入るようになっていないと稼ごうとするモチベも維持できまい。
展示販売会が開催までに半年間必要となったのは、金のばらまきだけに時間がかかったからってだけではない。
超硬合金を刃金とした防錆ステンレスの日本刀や鎌を打ったり、バイデントの代替えとして開発したトマト果汁を燃料に燃える槍“ルーン”(命名スズカ)の開発期間が必要だったからだ。
循環型の水洗トイレなど前時代にあったとはいえ、再現するとなるとそれなりに時間はかかる。
最近マサル達が頑張りすぎである。
またマガミが妬くかもしれない。何か考えねば。
展示会は大盛況。
欲しいモノが並んでいるのだからそりゃそうだろう。
冷蔵庫や洗濯機も好評でよかった。
『おい、今上から新しい氷が出て来たぞ!?』
『さっき俺も落ちてきたの見たぞ』
そりゃ製氷機ですもの。
『この上に氷が入っているのか?』
『おかしい……どう見てもこんな量の氷を入れておけるほどの大きさはないぞ……』
後ろの管から水が来て、順次氷になる度に落ちてるだけだ。
氷をそのまま入れてるわけじゃねー。
『まさか……これが、光の書に出てくる空間魔法……』
違えよ。
『あの光の書に出てくる伝説の!?』
つーか光の書って?
『おお、スズカ様の仰っていたあの……』
「スズカー。ちょっとおいで」
「え……と……何かしら?」
目が泳いでんぞ、オイ?
「えーと、まず光の書とは?」
「あの、私がそう教えたわけじゃないのよ? ある日ライトって何ですか? って聞かれて光かなって……それで、ちょっと後にノベルって何ですか? って聞かれて書物のことよって……そうしたら光の書にいつの間にかなってて」
「ラノベかい!?」
どこのRPGのアイテムかと思えば。
「ほら、オーガさんとか時々遺跡とか行って、なんか色々拾って来るんだけど、中にまだ文字の残ってたページがあって」
「まあ、居候達英語知らねえからなぁ……」
意味ないかと思って教えてないもん。
「で、彼等なりにラノベの欠片を集めて研究したらしくて」
「絶対ロクな研究結果出てないよね?」
「鑑定と空間収納が二大能力だって結果になったみたいで」
結構ちゃんと研究できてる!?
そうこう言っている間に展示販売会は進行していく。
売れる物がなくなれば販売会は当然終了だからね。
場を仕切りつつも、販売は銀行員達に任せ、自身も客として刀を手に入れたシュテン。
顔がにやけてらっしゃる。
買うわけでなくとも他の商品が珍しく、興味はあるらしい。
閉会式もいなきゃいけないから、買い物終わったから帰るわけにいかんというのもあるだろうが、色んな商品を手にして見ては置いてを繰り返している。
『? これはメガネ、だったか?」
自然に生きる居候達には、あんまり目が悪い人がいませんからね。
馴染みもなかろう。
因みにシュテンが手にとったのはスマートグラス。
スマホの後に世に出て、余り広まらずに終わった前時代の遺物だ。
出会った野獣達を効率的に倒す上で、野獣の習性を知っていることは重要だ。
そこで通信エリアであることが条件だが、野獣を視界に入れると、シェルターのサーバーにあるデータと視界の野獣をスィンが照合し、データを送付する。データを受け取ったスマートグラスはその習性なんかを表示する機能がある。
倉庫に余っていたスマートグラスをついでなので出してみたってだけだが、使いようによってはかなり良いアイテムなのではないだろうか?
『これは……まさか……鑑定!?』
シュテンよ……お前もか。
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