異世界の盗賊は強そう
サイズタイドとイーストウィンドの窓口ウェストサイズ。
現在そこに盗賊団が出没しているという。
盗賊。
ファンタジー世界にやられ役としていなければならない、お約束の名脇役。
定番なアレである。
主人公が転生すると、突如現われ、何故かお外を走るお姫様の馬車を襲い、主人公にやられる雑魚共(偏見)。
彼等はモンスターが闊歩する世界の野外でどうやって生活してるんだろうか?
昔は気にしなかったが、リアルがファンタジー化した世界では気になって仕方ない。
特に街の外にアジトがあるパターンね。
毎日モンスターと戦わなきゃいけない生活を送ってるんだから、誰よりレベル上がっててもおかしくないと思うが、大体の作品が雑魚だったりする(偏見)。
なぜ? あの厳しい環境下で生き抜いているのに。
場合によってはアジトがちゃんと建屋だったりするから、大工仕事まで勉強したであろう頑張り屋さんな彼等。
意外と仕事に対する姿勢はまじめなんじゃないかなって思うときある。
一方最強クラスの暗殺者集団みたいのは、街の中の拠点でのうのうと生きてるケース多いけど(偏見)。
いやまあ、それは置いといて。この盗賊団。
元はイーストウィンドの裏町に巣くっていた集団らしい。
街の中でのうのうと生きてたパターン。つまり幸いにも雑魚だ(ド偏見)。
周辺集落に代表されるように、聖教国の街は弱者に対して厳しい。優しくしてる余裕がないというべきか。
なのでそんなに治安がよくはない。
元々弱肉強食が生物の基本なわけで、持たざる者が持つ者を見つければ奪いに行くのが人のデフォなんだろうし。
そう思わせない位の抑止力を国が持つ一方で、奪わなくても生きていける程度の救済システムがあるから治安は守れるし、その治安の中で初めて財力は腕力に取って代われたりするんだろう、多分。
だから聖教国の周辺集落や貧しい者達が、街に、或いは金持ちに牙を剥くのは、昔の一揆みたいなもんで時勢的に当たり前なのかも知れない。
だったらしゃーないよねって、笑ってられるのは対岸の火事のときだけだが。
自らを“月映ゆる水面”とが名乗っちゃう、羞恥心の有無が疑わしいこの盗賊団。
ウィンドルーム領の街の溢れ者達の集まりらしいが、仕事をしくったのか兵達に追われ姿を眩ました。
その後、何故かウェストサイズの街中に姿を見せたらしい。
そしてあろう事かウェストサイズの食道楽を襲撃したというのだから、もう……
確かに提供数が限られていることもあり、オープン前から人が行列つくるから、めっちゃ羽振りよさげに見える。
金がなくてもこの店襲えば美味いもん食えるぜ、とか考えたのかもしれない。
ちなみに、ウェストサイズの“食道楽”はスズカに料理技術を仕込まれた、調理師とは名ばかりのバッキバキに武闘派な黒騎士の血統なわけで。
当然即時抑え込み、ウェストサイズの領主の元へ。
黒騎士は相変わらず余り人を人として見ない。サイズタイドでは英雄的ポジションなので基本モテモテなのだが、彼等自身は人を性欲を吐き出す為の大人のオモチャ位にしか見てない。
ヤコウの命令で人に危害を加えたりはしないし、一応表面上は恋愛の真似事はするんだけど。
とはいえ、モテモテといっても個人差はあるわけで、全然モテない奴もいる。そんな奴が心の全くこもってない愛の言葉を囁いても、ほら、ね?
そんな彼等の救済策としてサイズタイドは結構こう、えげつない事をやっている。
こういった犯罪者、特にそれが女性であった場合、生け贄として黒騎士に捧げられるわけだ。うん、どうかと思うよね。
まあ、ヤコウがちょこちょこお持ち帰りしたりするせいで、黒騎士達は男女比がどうしても釣り合わないっていう根本問題があるから、あまり偉そうなこという気はないけども。
そして“月映ゆる水面”とかいう盗賊団には、その女性がいたらしい。しかも首領。
イーストウィンドを荒らした盗賊団の首領である。
イーストウィンドは盗賊団の引き渡しを求めてきた。
「ウェストサイズにとっても奴らが犯罪者であることに変わりはないんだがな」
というシュテンの言葉の通り、本来引き渡す理由なんぞなかったし、実際ウェストサイズの領主も突っぱねようとした。
ただ、これにシュテンが待ったをかけた。
サウスサイズの魔獣問題のおかげで、外交なんぞしてる場合じゃねえよってタイミング。
しかも実質ウェストサイズの損害ゼロで抑えたのは食道楽の店員。こんなの知られれば食道楽を疑って下さいと言うようなもんだ。
聖人達にはおそらくこちらの組織である事がバレバレであろう食道楽。
下手に目立つと相手に行動する言い訳を与えてしまう。
イーストウィンドと、ここでちゃんと言葉で交渉するつもりなら、盗賊団によって受けた損害等の情報を出すことになるかもしれない。
勿論イーストウィンドはウェストサイズの言葉を鵜呑みにせず、現場の調査をさせろとが要求してくるかもしれない。
下手に探られる危険を抱えるより、盗賊団を引き渡してしまった方がいいと判断したと。悪くない判断だと思う。
シュテンに従順なサイズタイド領主は、当然素直に従うかと思いきや、初めてここでシュテンに反旗を翻した。
どうやらウェストサイズの領主、この女盗賊に一目惚れたらしい。いや、知らねえよ。
長くなったけど、これがシュテンの抱えた問題。
かたくなに駄々をこね、ついに泣き喚き始めた領主のオッサンを何日にもわたって宥め、説得したらしい……くだらね、じゃなくて、うん、お疲れ様。
「つか、領主って結婚してねえの?」
「してるぞ?」
「重婚許されてたっけ? あそこ」
「いや」
「領主なら浮気も愛人も見逃されるってヤツ?」
「まさか」
「?」
「自分では出来ないのは解った上で、せめて黒騎士達と交わるところを見たいんだそうだ」
「誰だよ、ソイツ領主に任命したアホは!?」
「性癖はともかく仕事は有能なんだそうだ」
なんか俺も頭痛え。
でもアレか。冷静に考えればAVとかエロ本も他人のやってるとこ見て喜ぶ文化だったわ。
同じ感覚なのかな? うん、結構普通の人かも。
「格別美しいとは感じなかったが。人の好みに文句を言う気はないが、今回ばかりは勘弁して欲しかったものだ」
好みって人それぞれだよね。ホント。
とはいえ、一応問題が1つ解決したシュテンはほっとした顔をしている。
しかし、こういうのを聞く度に人って面倒くせえなって思っちゃうよね。
いやだいやだ。
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