テレビ見ながらスマホ弄ってるときのアレ
『では、これから我らの次期族長を決める為、狩りによる対決を行う。フウガ、ライガ』
『ああ』
『おう』
『お前達が相手こそ族長に相応しいと思っていることは知っている。謙虚は美徳だが、この対決で手を抜くことは許さんぞ』
『解っている』
『承知した』
『うむ、では始めぃ!!』
なんか運動会みたいだ。種目がちと物騒だけど。
一応相手が相手だから、2人にはかなり手厚い保険をかけてる。
事前にヤハタ隊が赤虎は今どこにいるかは調べているし、狩った後の輸送も考えて後発でシュテンとヤコウも向う。ヤコウは今回役目はないが。
アギョウ隊を2つに分け、5体ずつを同行させてるし、虎皮達も5人ずつ同行者を出す。
正直次期族長がどうこうより、珍……赤虎を確実に仕留める事を優先したい。
Eの熱線はダメージを与えきれなかったが、Wの熱線は火力がEとは違う。最悪Wの熱線連射で焼きミンチになって貰おう。
加えてシュテンもいるしな。
車両モードで時速100キロで突進しながら突き出す刃は、当たり所さえミスらなければ生物であれば確実に葬れる。
というわけで虎皮族長決定戦はまあ、おもしろそうなのでモニター越しに観てはいるが、年末特番位の興味しかない。
重要なのは、あの赤虎だ。
調べにゃ確実なことは解らんが……まともに考えれば人工生命体だよな。
いくら謎の霧が蔓延するこの世界とはいえ、あんなのが自然発生するわけないし。
正直あの虎単体の戦闘力にはそこまで驚異を感じてはいない。どちらかというと怖いのは副産物的に起きる火事。
相手は虎だ。知能と呼べるものなんてない。そして今、世界は大体の場所が緑豊かだ。
ファンタジーもので火を吐くモンスターがそこらをウヨウヨしているのは鉄板だが、アレ実際だったら地球規模で火事になるよね。
あの虎が特異な一体なら話は簡単。ヤツを狩って終わり。
流石にないと思うが、Wの熱線が効かなくとも、シュテンの特攻が効かなくとも、ドランの電磁加速砲で撃ち抜けばいい。
だが、俺の予想が外れて、生命体として誕生し、繁殖してたとしたら?
WやEみたいに中身がアンドロイドで理性があるならいい。
本能と欲望しか持たない野獣が炎を放つ。
よく子供に爆弾持たせたらどうなる? みたいな例えがあるが、それより酷い。
そんな奴らが周囲に溢れ始めたのだとしたら? 明日世界中が焼け野原だ。地球温暖化が偉いことになる。
人工生命体だからとて繁殖能力がないと決まったわけでもない。
だからマガミ隊とトリィ隊にはシュテンに同行し、狩りの決着が着いた後の周辺調査を指示した。
巣とか見つかったら最悪だ。
あ、でも人工生命体なら燃えるのは日本だけか? だったら周囲の発生体をプチプチ潰しとけばウチへの影響はそこまででもないかな。
考えるべきはもう一つ。人口生命体だとして誰が造ったか。
いや、思い当たるところ一つしかないんだけどね。
聖教国……かね。
勇者パで奴らがそれなりに高度な生物科学を実現していることは解った。
加えてガスグレネードの量産に成功していることも知っている。どの勇者パも皆持ってくるもの。
だからあの赤虎は聖教国がこしらえた、虎+ガスグレネード+HC細胞による生物兵器と考えるのが妥当だと思う。
HC細胞があれば、自分が吐き出した炎で爛れた喉もすぐに復活するだろう。
ただこれ、本当にそうだとするとおかしい気もするんだよね。
虎の頭にアンテナはなかった。少なくとも。
じゃあ、虎をどうやってここまで連れてきた?
自分の縄張りで暴れられたときの保険がないんだよね。普通つけない?
幼体の状態で連れてきて、無事大人になるのを待った?
他の生物に食われて終わる可能性の方が大きかろう。そんな確率低すぎる手使うか?
聖教国がやったとしたら目的があるはずだ。
勇者でも勝てないことに業を煮やした連中が送り込んだとしよう。それで虎がウチに勝てたとしたら、次は聖教国の番だ。
あちらさんが俺達に勝てない奴に勝つとか無理だよね。だったらあんな化物造らんで直接攻めてくるだろうし。
ふんむ……いい加減、山田頼りをやめて深刻にスパイを考えるべきだな。
ヤコウの子供達は見た目人間だ。ヤコウ経由のシュテンの命令には従順だし、シュテンが鍛え上げてる。
ここ100年勇者パしか来なかった。
勇者パはサイズタイドで捕まる度に、男はシュテンにお注射されて黒騎士団に編入され、女はヤコウにお注射されて子供産んでたから、まあ気にしなくていいかって思ってたんだけど……
とはいえ、聖教国でスパイってバレたら只じゃおかないだろうし。
ヤコウに親の愛情とか責任感があるかはすげえ疑問視なんだけど、ヤコウの子供達なんだよな……
あー、多分こうやって他のことに気をとられて、また来年スズカの誕生日プレゼントを直前で悩むんだよ。
うーむ……ふーむ……んんん……
『よくやった!! 今日の結果をもって次代の族長はライガとする!!』
……お?
あ、気がついたら競争終わってた。
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