公園のシンボル
「やっぱ小便小僧かねぇ」
「いきなりどうして?」
「ケツから茶色い噴水出す像とか誰が見てえのよ?」
「そういうことじゃなくて!」
「じゃあ、ゲロ吐きライオンとか?」
「シンガポールに謝って!!」
何の話をしているかと言えばランドマークだ。正確にはランドマークだった。
街作りシミュレーションと言えばランドマーク。建設してニマニマ出来るアレである。
ニマニマしたいから建てようと思ったんだけど、我が家の庭に高層建築物を建てた場合、虎皮の考えなし共が酒の勢いで紐なしバンジーをする予感がして辞めた。
なぜか虎皮が神隠しにあう度に、周囲にケチャップまみれのミンチ肉が発見される所々赤い塔。取り壊し待ったなし。
ならば規模を小さくしてシンボルになるものはないか。そう思ってスズカに相談したら、公園と答えが返ってきた。ショボい。
スズカ的には子供達が増えたことで憩いの場が欲しいと考えていたところでの提案だ。気持ちは伝わったので否定はしないが、俺が欲しいのは公衆トイレという名の虫が蠢く、原始人の放牧場ではない。
あくまでシンボル。だから公園のシンボルと言えば噴水。噴水と言えば? と考えたのだが、スズカのお気には召さなかったようだ。
まあ、冷静に考えて酒飲めば丸出しの奴らだ。インパクト弱いかな? つか逆になんでアイツら普段服着てんだ?
「そういえば、話し変わるけどシュテンさんが虎狩りについて行きたいって。腕をなまらせたくないからって」
「別段俺に断る必要ないけど、あの人狩りとかできんの?」
「私も聞いたんだけど、「敵は恐れを知らぬ狂獣なれば、向かい来たところを斬るのみ」とか言ってたわよ」
「ウチのお庭はいつから脳筋牧場になったんだよ?」
「私に言われても……」
ま、やりたいようにやればいい。俺は知らん。
◇◆◇◆◇
というわけでシンボルだ。散々考えた結果人魚像にした。水と言えばウンディーネ。ウンディーネと言えば人魚だ。
実際の……というか伝承のウンディーネは普通の女性の姿だったりするが、水の吹き上がる中にただの女性の像とか意味がわからなすぎる。
昔見た何かに影響されまくったイメージな気もするが、そんなわけで人魚で。決して昨日の晩飯がカレイの煮付けだったからじゃない。
決まれば後はつくるだけ。
3Dプリンターを塗ってしまえば簡単だが、ここは敢えてこの手で作っていきたい。
なぜ? 暇だから。
シュテン登場のせいで、結局俺は工作活動をしていないのです。
しかし、スズカは先生に、シュテンは虎皮ゲットに、俺は公園作り。仕事が子供に偏っている気がする……
まあ、ケチなことは言うまい。子供がすくすく育つのは悪いことじゃない。
そんなわけでトンテンカンテン……俺のパーフェクトボディは彫刻だって余裕です。
複写とかは得意なんだけど、オリジナルで何か作ろうとすると、人間のセンスがモロに出る。
俺は自己評価をわきまえている。ああ、解っているさ……
モデルがあればいいわけだ。上半身はスズカをモデルにする。
胸は髪で隠す方向で。
俺は虎皮とは違う。スズカのお胸を他の奴に見せたりはしないのだ。
◇◆◇◆◇
「そもそも人魚の文化がなかったか……まあ、ほら悪気があったわけじゃないだろうし」
「うん……」
スズカが落ち込んでいる。出来た象を見た子供が「蛇女?」とか言いやがったらしい。おのれ……
俺も落ち込みそうだ。
人魚の像を目にした子供達は「これが王妃様の本当の姿なの? かっこいい!!」とか言ってたらしい。
何故かの正体蛇女疑惑。いや、本当になんでやねん。
安定性を増す為、尾びれを地面ベタ付きにしたのが悪かったか?
高台作って設置したから子供の目線に尾びれ映らんかもしれん。
「取り壊すか?」
「大丈夫よ」
「いや、蛇云々以外にも問題あるよね?」
「そこは、私が今後ちゃんと教えていくから」
ちなみに勝達の手も借りて突貫工事で完成した噴水は、子供達に大人気。
新たなる水遊び場として。……って、おい。
まあ人間の頃言わずもがなだったルールもここじゃ通じない。なんで考えなかった俺?
◇◆◇◆◇
『私の身体もこうなったのだ。スズカ殿の真の姿がこの像の様であったのだとしても不思議ではあるまい。でも、カネ。普段スズカ殿がどうしてこの姿を隠しているのかを考えれなければいけないよ? きっとそこには何か意味があるはずだ。もしかしたら私達が知るべきでない何かが。そして忘れてはいけない。何があったとしても私達はこの国に返せないほどの恩があることを』
『うん! わかってるよ!』
わかってねえよ。
トリイが「おっさん帰って来たで」と言わんばかりに、人魚像をボケーッと見てるシュテンを映像で送ってきた。
娘のカネちゃんに声をかけられて我に返った後、二人で像を見ながら何かを言ってるのかが気になって、音声を再生したらこのザマだ。
RABBITは壁の内側の音声を全て拾い、データは過去5年分が保存されている。
一応虎皮達が不審な行動を起こすことを警戒し、スィンに危険な単語があったら選別して報告するよう命じる上でこのセッティングにした。
尚、今まで報告があったことはない。
そんな話で壁の中の他の奴らの会話はいつでも聞き返せる。
聞かなきゃ良かった感はある。スズカには少なくとも聞かせられない。
シュテンの姿は返り血に濡れていた。その姿で娘と話すのはどうかと思うが。
車両に虎皮を乗せて持ち帰ったきたようなので、上手くいったのだろう。
なんだかんだで本日も平常運転。
うん、平和だ。
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