第2話
また窓の外に目をやる。ヒナトくんがいる気がして。でもいない。
王子様じゃなかった…。
近くの公園では同い年くらいの女の子たちが遊んでいる。
羨ましくて睨みつけた。
そしてまた1人で学校の絵を描く。
どんな所かは知らないけど。
想像の世界。
ガチャ。
母「ただいまー」
ママは夢の中でいつもどこに行ってるのかな。
ふとママに目をやると血だらけで帰ってきてる。
もう何も驚かない。所詮は夢の中で私が考えた世界なんだから。
母「ユキミー今日は何描いてるの?」
ユキミ「え、あ、、何も…」
思わず隠してしまった。
きっと学校の絵を描いたなんて言うとママが悲しむでしょ。
あーあ。急いで隠したからぐしゃぐしゃになっちゃった。
これはもういいや。捨てよう。
ビリッ
ーーー
目が覚めた。今日は雨。
どうやら絵を破くと目が覚めるのかな。
都合の良い夢。
ママはぐっすり私の手を握って眠っている。
ユキミ「はぁ…。」
母「ユキミ…?あ、起きてたのね。」
ユキミ「うん…」
母「どうしたの?元気ないじゃない。」
ユキミ「別に…お腹空いた…」
母「そっか。じゃあママパンケーキつくちゃおーっと」
伸びをしてキッチンに向かうママ。
また窓辺に寝そべって絵を描く私。
ずっとこの毎日の繰り返しで
すごく退屈だ…。
ピンポーン
母「あら?誰かしら」
突然鳴り響いたチャイム。
母「はーい。」
ガチャ
ヒナト「こんにちはー!ユキミさんいますかー?」
心臓が跳ね上がる。
母「え、あ、ヒナトくん。が、学校は?」
ヒナト「学校飽きたー。俺ユキミと遊びたい。」
そう言って笑う君。少しつり目な目が笑うと余計に見えなくなるのが少し可愛い。
母「でもねユキミは…」
ユキミ「遊ぼ!」
母「ちょっと!ダメって…」
ユキミ「お家の中なら良いでしょ?私友達欲しい。」
母「でもヒナトくん学校に連絡しないと心配されるよ?」
ヒナト「大丈夫!俺いつもサボってんだー」
ユキミ「ねえ!ママ!良いでしょ?」
母「でも…」
ユキミ「お願い!」
母「じゃあちょっとだけ…」
ユキミ「やったあ!!!」
初めての友達。
この家に私とママ以外の人がいる。
なんだか不思議だ。
ヒナト「へぇー!お前絵うまいな!」
ユキミ「あのね、他にもこんな絵とか…」
自分の絵をママ以外に見せるのも初めて。
ヒナト「この絵、前描いてたやつじゃん?誰描いたの?」
そう言って私が描いた王子様の絵を手に取る。
ユキミ「あ、あのね、それはねえっと…」
言えるわけない。夢の中で君とそっくりな人を見た。その人が王子様だって。
ヒナト「……あのさ、ユキミって夢見る…?」
え?
ゴトンッ
母「ジュースでよかったかな?」
ヒナト「えっ、あ、ありがとうございまーす。」
遮られた。
ユキミ「え、何?夢って」
ヒナト「なんでもない。」
一瞬にして妙な空気になった。
ママの顔を見た瞬間ヒナトくんは話を辞めた。
何を隠したいのか…
ヒナト「これは?何描いてるの?」
ユキミ「あ、えっと学校だよ!」
ヒナト「すげー!でも先生こんな笑ってねーよ」
ユキミ「ええ?!」
そう言って端っこに怒り顔の先生の顔を書く。なんだかヒナトくんの顔も怒ってるようで面白かった。
ユキミ「あはっ!なにそれー!」
ヒナト「まじさ先生いっつも俺にばっか怒ってくんだよなー」
ユキミ「ヒナトくんが真面目じゃないからじゃない?笑」
ヒナト「はぁ?俺は真面目だ!」
ユキミ「学校サボったくせに」
ヒナト「俺はなー!」
ーーーー
たわいもない話をしてると空が赤くなってきた。
ヒナト「やべえ。もう帰らないと母ちゃんにバレる」
ユキミ「え!帰らなきゃ!」
ヒナト「じゃあお邪魔しましたー!」
母「はーい。」
ユキミ「まって!ヒナトくんランドセル忘れてる!」
あ。
ヒナト「ああ!サンキュ!」
なんだか
ヒナト「学校、来いよ。」
バタン
すごく悲しい。
ランドセルを初めて手に取った。
普通の子なら毎日触るものなのに
私は今日初めて触った。
制御出来ない大粒の涙が溢れ出る。
母「ユキミ?どうし…」
ユキミ「学校にいきたいよう…」
母「…」
ユキミ「なんで私だけ…病気でもないのに…普通の子みたいに…」
母「あのね、ママはねユキミのことを思って…」
ユキミ「嘘つき!私のためなら学校に行かせてよ!ママの隠したいことって何…?」
母「ごめん…ごめんね…。」
そう言ってママも涙を流す。
なんでママが泣くの?悲しいのは私だよ。
私は結構ママのことが嫌いかもしれない。
何を考えてるのか分からない。
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