第6話
空いているソファーに乱雑に座って伸びをしながら
その様子に眉間に皺を寄せはじめるゼフェルにランティスは声をかける。
「で 爺さん10分以内にこいって言う急用ってなんだよ・・俺だって暇じゃねーんだぞ」
「お前はこのお方を見てもそんな事が言えるかっ」
このお方?と言いながらゼフェルより上座で自分の
斜め前にいる男物の服を着ている少女を見ると
呆然とした顔をする。
「アル・・?アルっいや・・若すぎ・・まさか」
「初めてお会いした時のアルフィージ様に瓜二つで
いるらっしゃる。お前に会いに来られたのだ」
ゼフェルからそう言われてランティスは俺に?と
言いながら自分を指さすとその少女はこくんと首を縦に振る。
「養親からこれは母が残した物でこれをランティス・イリューザー様に見せて返事を貰ってこいと」
そう言って手紙と緑の石の入った細工のペンを見せるとランティスはペンを手に取ってぎゅっと握りしめる。
「俺が誕生日祝いに送ったもんだ・・これからも
ここであいつの事支えてやってくれって」
そして慌てて手紙を開けると懐かしい字を見て
そして内容をみて泣き出しはじめる。
「警護をうちの者だけにしておけば・・」
「母君はどうされましたか?」
ゼフェルが聴くとディスティニーは首を横にふるふると振る。
「今まではどうされておられたのですか?」
国中にお触れを出して銀の髪の赤子を探していた。
年が経つたびその年の少女を探してはいたが見つけられなかったのだ。
「色々なとこ回って、魔獣を倒して稼ぐとかあと 私を育てる為に貰ったって言う宝石や魔石を販売したりして生活してましたけど?」
「この国にはいなかったのか?」
ランティスがハッとしたようにいうとディスティニーはこくんとうなづく。
「この国は危ないから他所へ 自分を殺したと罪人にされるって言われたから遺体埋めて違う国に駆け込んだって言ってた」
しれっとそう言っているとノックがされてさっきとは比べものにならないほど気品のある茶器や色とりどりの菓子が机に置かれる。
「他に何か持ってないか?その養親は今どこに?」
「あっ 指輪ーこれだけはこの子にって言ってたっていって渡されてる」
首にかけていたチェーンを外すと二人の前に青いサファイアの入った細い指輪を出す。
ランティスはそれを手に取ると内側をみてそっと彫り込んである字を撫でる。それをゼフェルにへと渡すと同じように中の彫り込みをみて堪らないと言わんばかりに目に涙を浮かべる。
二人のこの様子に女官長は驚きながら市井の子供だと思っていた相手をよく見てから呆然として膝をつく。
「ア・・アルフィージ様っっ」
驚いて声をあげるがこんなに若く子供なはずはない
そうするとここに居ているのはずっと行方知れずだった。第一王女様だと 宰相があの女官にあんなにも激怒したのはそのせいかと不敬罪として処理されたらと冷や汗がでてくる。
「姫様っ先程は女官が無礼を働き誠に申し訳ございませんでした。あれはランドリーメイドよりやり直しさせます故 ご容赦をっ」
「え? 私には関係ないことですからどうでもいいですよー お気になさらずー」
しれっというと二人が見終わった指輪を首にかけて
ランティスのほうを見る。
「すみませんが返事もらえます?そろそろ暗くなりそうだし宿を取らないと泊まるところが」
その言葉にランティスははぁ??と言わんばかりに
半分頭を抱えゼフェルのペンと紙を黙って借りると スラスラとメモを書いてそれを畳むとふっと
息を吹きかけて飛ばす。
「おい 取り敢えずディスティニーに湯浴みと着替えをさせてこい。言っておくがさっきみたいな女官は使うなよ」
それだけいうとはいっと立ち上がり一礼してソファーに座っている少女のほうへとくる。
「姫様 こちらに・・」
「いや・・その・・」
断ろうとしてみるとランティスが声をかける
「泊まるところも食事も何もかも用意するから
取り敢えず湯浴みと着替えをしてくれないか?
その姿で城を歩くとさっきみたいなのが湧くんでな」
「はぁ・・なら・・」
そう言って立ち上がると案内された方に向かいはじめる。
それを見送るとさっきと同じように何かをかいて紙を畳んでふっと息を吹きかけて飛ばす。
「その手紙は?」
「ここにいてはこの子は殺されてしまうからこの子が自衛出来るようになるまでは姿を隠す。
もしもの事があった時は頼むって書いてあった」
あの時 もっと話を聞いていれば・・
あの時 信頼できる部下を1人でも置いて行けば彼女が子供を連れて身を隠すような事にはならなかったのかも知れない。
あの日からずっと後悔ばかりだった。
「あいつが王位を取り戻して調子に乗った時にもっと諌めてりゃこんな事にはならなかった」
「それはわしも同じだ・・」
侯爵家の娘だからと言い後ろ盾のない彼女に嫌味や嫌がらせをし続けていた。
目に入っていたものは止めていたが影でされるものは本人が気にしていないからいいと言い切り証拠もなく何も出来なかった。
その結果 二人が急務で城を開けている間に彼女は
赤子を連れて消えてしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます