第3話

「薄情な父親は側妃との間に二人も子供作ってるらしいしー引っ掻き回して 母様の恨みをはらしてきたいんだよねー」

「あれはそのようなことを望むような者では無かったが・・」

静かにそう窘められるように言われると頰を膨らませながら言う。

「じゃあ 私の恨みって事で・・自分の妻が殺されて一緒にいた子供を探しもしないような父親ってのがどんの奴なのか観察してみたい」

ふふーんとそう言うと椅子に座って冷めた紅茶を

クイッと飲む。

「ドクズならぶち殺す。ついでに国も戴く予定」

物騒な事をいうのを聞くと目の前に座っていた相手はクックっと笑いはじめる。

「あの国の乱世を治めたのはそなたの母の尽力があってこそだ あの男一人ならばあの時に殺されておったわ」

昔を思い出してそう告げると紅茶を飲んでいた少女は目を輝かせながら言う。

「慰謝料と養育費としてもぎ取ってやろうっと」 

きゃははと笑うのをみると頭を下げていた二人は

あぁ・・と頭を抱えはじめる。

唯一 止められる人物が面白いと言わんばかりに後押しをし始めたのだ。

「御方様っ お止め下さいませっ 姫様はまだ

保護者の庇護が必要な子供でいらっしゃいます」

セーラが必死にそう言うとその少女はちょっと困った顔をしはじめる。

自分の事を思って言ってくれているのはよくわかるがこの好機を逃したくはない。

「セーラ 私の事思って言ってくれてるのはよく分かってるし嬉しいよ・・でもごめんなさい。」

ペコっと頭を下げて謝るのをみると二人は止めようとする言葉を飲みこむ。

「今が好機なの。そうでないと王太子が決まるし そこから出ても政略結婚の為だけの道具にされるだけだからね」 

「そうだな・・」

飲み干して空になったカップをトントンとつつくと

跪いていたセーラは起き上がり手に洗浄の魔法をかけて温かいお茶を注ぎ始める。

「剣も魔法もこの私が仕込んだのだ。少々の事で

怪我をする事などないだろう」

だから大丈夫だと言わんばかりに注がれたお茶を優雅に飲みながら言うと昨日までは大反対だと言わんばかりで話も途中で切り上げて出て行ってしまったカイスターンの態度が軟化している。

今だと言わんばかりに目の前にいた青年に少女はガバッと抱きつく。

「カイ ありがとうー 大好き 愛してる」

突進してきた相手を受け止めながら背中をトントンと撫でながら頭に軽く口付ける。

「ただし 手は貸してやれんぞ」 

「うん わかってる」

にっこりと笑うと立ち上がって用意とか準備とかしてくるとだけ告げるとパタンと扉を閉めて楽しそうな足取りでそこを出て行く。

それを見ると不満そうな顔をした2人が何かを言おうとするとその前にカイスターンは二人を見ながら言う。

「我とて反対はした。話を聞く価値もないと言って大反対した。そうしたら・・」

盛大な溜息と共にソファーに手置きに置いている手で頬杖をつきながら言う。

「なら家出して冒険者ギルドに入って冒険者になると言い出してな・・部屋には置き手紙が置いてあるわ。いらない装飾品の宝石だけ外して資金準備までしているわで・・」

その案にふたりはえ??と言って言葉をなくす。

ここにある蔵書やたまにくる外部の者に色々と話をしたり冒険談を聞いていたのは知っていたがまさか資金準備の仕方まで聞いていたとは接触させるのではなかったと後悔しはじめる。

「そらならばまだ目の届くところに行かせた方がマシだ。何かあっても間に合うからな」

推奨ではなくマシだからの選択だったのかと思いつつもそれを聞いて二人は諦めの境地に陥る。

大体 苦労などしなくてもここに居ていれば姫として何不自由のない生活が送れるし、ここの館の主人とて親友の子という事で目に入れても痛くないと言わんばかりに溺愛し、基本的に望むものは何でも与えている願いとて叶えている。

「どこで育て方を間違えたのだ?・・淑女の教育とてきちんと施したと言うのに・・・」

深いため息を頭を抱えて嘆きはじめるのだった。






  

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