第1話 高校合格
「あった」
掲示板に貼り出された数字の山からお目当ての数字を見つけると、私はたいした感動も覚えず、その場から立ち去ったのを覚えている。中学で学年1番の成績だった私は、市内で一番偏差値の高い第1志望の高校に当然受かるだろうと思っていた。
仲の良かった友達は、みんな別の高校を志望していた。同じ高校に進む友達はいなかったが、何の問題もないと思っていた。自分には素晴らしい高校生活が待っていると、根拠のない自信があった。中学時代の友達全員と疎遠になり、誰とも会えなくなるなんて、この時は想像もしていなかった。
鬱蒼と茂った森の中を身ひとつで進んでいくような、暗くて、痛くて、息苦しい日々が待っているなんて、どうやって想像できただろうか。
県立K高校入学式の朝、真新しい制服を身にまとい、春のさわやかな空気を胸いっぱいに吸い込んで、母とともに笑顔で家を出た。高校3年間の中で、この日の私が一番輝いていた。
高校に着くと、入学式会場の体育館に向かう母と別れ、私は下駄箱に向かった。下駄箱の前には、クラスの振り分けが書かれた大きな紙が掲示されており、そこには大勢の新入生が密集していた。人々の頭の間から覗き、私は1年D組の欄に自分の名前を見つけた。
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