第323話 探索者
「大丈夫か、あんたら?」
砂に埋まる大きな魔石を回収しつつ、煉は訊ねた。
四人の男女は、煉の力に呆然とするも首を縦に振る。
「そりゃよかったな。それで、あんたら何者?」
煉が問いかけると、軽鎧を纏った小盾と長剣の男が答えた。
「お、俺たちか? 俺たちは古代遺跡で一山当てきた探索者だ。俺はリーダーのダイレン。こっちのちっこいシーフがマロンナ。後ろの魔術師の男がライハット。最後、エルフの女が弓使い兼治癒士のアスミス」
「あたしをちっこいとか言うなっ!」
マロンナと紹介された見た目少女のようなシーフが、リーダーのダイレンに短剣で斬りかかる。
笑って宥めているのを見ると、仲は悪くないのだろう。
それよりも、煉は彼らの紹介に一つ引っかかりを覚えた。
「探索者?」
彼らの纏う装備などから冒険者だと思っていたが、実際は違っていたらしい。
聞き馴染みの無い言葉を反芻する。
「なんだぁ。探索者を知らんのか?」
「ああ、聞いたことないね。冒険者とは違うのか?」
「全然違うね。簡単に言えば、冒険者ってのは様々な依頼をこなす何でも屋みたいなものだろ。実力とやる気さえあれば誰でもなれるのが冒険者だ。
探索者は違う。探索者の仕事は宝探しだ。ここにある古代遺跡や秘境に隠された宝を探し、一攫千金を狙うんだ! だが、探索者になるためには必要な知識を身に着け、過酷な試練を乗り越えることで探索者として認められる。冒険者に比べ数は少ないが、少数精鋭ってわけだ。……まあ、どっちも命の危険があるのは変わりないがな。どうだ? 夢のある職だと思わないか!?」
物凄い熱量で探索者について語るダイレン。
彼の仲間は、いつのものことかと呆れ顔でため息を吐いている。
「へー。いわゆるトレジャーハンターみたいなもんか」
「とれ、じゃ……まあ、わかったんならいいか! そんなわけで、俺たちの本職は宝探しなんだ。魔獣と戦うこともあるにはあるが、どちらかと言うとそっちはついでみたいなものだ。俺たちにとって戦うことは自衛の手段でしかない。今回はついてなかった。しっかりと準備していたはずが、まさかサンドワーム三体に同時に襲われるだなんて……本当に助かった! 感謝する!」
「別に気にしなくていいさ。依頼のついでだからな。正直言うと、あんたらが三体も引き連れてきてくれてよかったよ。こんな砂漠の中、歩き回るは面倒だからな」
「そ、そうかい……。あんな怪物相手に余裕だなんて……冒険者ってのはすげぇな」
煉の戦闘を思い出し、ダイレンは身震いした。
これまで見たことのないほど、衝撃的な力。自分にもあんな力があれば……と、羨望せずにはいられない。
「ところで、お前さんの名前を教えてくれ。街に戻ったらちゃんと礼をしたいからな」
「ああ、そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺は、煉。ただの冒険者だよ」
「そうか、レンだな。サンドワーム討伐の依頼だっけか? 三体も倒したし、街に戻るのか? それなら一緒に……」
「いや、最低討伐数は五体だから、まだだな。しばらくこの辺歩き回って、手当たり次第燃やしていくさ」
「ご、五体も!? やっぱり冒険者ってのは……いや、そういうもんか。分かった。俺たちは先に戻ってるぜ。戻ってきたら飯でも奢らせてくれ」
「ああ、期待してる」
珍しく好意的な対応をする煉。
イバラが側にいれば、何か企んでいるのではないかと疑われることだろう。
そのままダイレンらと別れ、煉は再びサンドワームを探し砂漠を歩き回るのだった。
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