第316話 眠りについた死界
※短めです。
煉たちが転移で死界を脱出したころ。
別ルートで天使たちも死界から抜け出していた。
「……これは、一体?」
激しく跳ねる水飛沫に目を細め、ミカエルは呆然と呟いた。
三柱の天使たちは、海面を高速で移動する蛇の上に乗って死界から離れていく。
「? 何をそんな驚いている。おかしなことは何もなかろう」
「いえ、明らかにおかしいです。このようなこと、聞いていませんでした」
「あれー。言ってなかったかしら? 来る時もこの子と会って……まあ、細かいことは気にしないことねー」
ミカエルにジト目を向けられ、ガブリエルが目を逸らした。
「この海竜は私のペットだ。楽園都市周辺で襲いかかってきたから躾したのだ。それ以来、こうして海の移動に役立っている」
「そうですか。それはもう別にいいです。気にしないことにします。それより、私たちはなぜ楽園都市から離れているのですか?」
ラミエルが計画準備のための隠れ蓑にしていた「絶海の楽園都市」。
未だ準備は整っておらず、さらに煉から問題点を指摘されたばかり。
しかし、なぜかラミエルはマジックバッグに荷物を詰め込み、妖怪たちをお供に海竜の背に乗り楽園都市から抜け出した。
ミカエルはそれに疑問を抱いた。
「簡単なことよ。かの地は役目を終えた。そうなれば、楽園都市は眠りにつく。あのままいては巻き込まれてしまう。だから、早く距離を取らねばなるまい」
「眠り……?」
どういうことかと首を傾げると、突然海が荒れ始めた。
そして、視線の先で巨大な水柱が噴き上がった。
「な、何が!?」
「どうやら始まったみたいだな」
上がった水柱は空を穿ち、渦を成して海の底へと沈んでいく。
水柱が消えると、荒れた海も凪ぎ何もなかったかのような静けさが漂う。
「今のは……あれ、あそこには何が……?」
「眠りについた結果だな。楽園都市は静かに海の底で揺蕩うことだろう」
◇◇◇
「絶海の楽園都市」は、あらかじめ仕掛けられていた結界によって、海の底で眠りについた。
海のそばで生きる人々は、噴き上がる水柱を目にしたことだろう。
不可思議な自然現象に恐怖、もしくは好奇心が刺激された。
あの水柱の下には一体何があったのか、と。
だが、誰もそこに辿り着くことはなかった。
「絶海の楽園都市」は、人々の記憶から人知れず消えていった……。
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