第278話 順序

 翌日、三人は再び長い階段を上がり、地上のジャングルへと戻り探索を始めることとなった。

 イバラとしては、記憶の無い煉を連れて探索をするつもりではなかった。

 しかし、煉の懇願に折れ、三人で探索することとなった。

 グーっと伸びをして、アイトがおもむろに呟く。


「さて、どこから行くか?」

「分担して動くのは得策ではありませんし、効率を考えるなら、遠いところから順に。ということでよろしいのでは」

「それもそうか。じゃあ、こっから一番奥の」

「ちょっと待って」


 鈴を掲げ、歩き出そうとしたアイトに待ったをかける声。

 振り返ってみると、思案顔の煉が俯きつつ何かを呟いていた。


「こういう場合は……アイトさん、他の階段の場所ってどの位置にあるかわかるよね?」

「あ、ああ。わかるが……」

「それならここも含め、全体的にどの配置に階段があるか教えてほしい」

「わ、わかった」


 煉に頼まれ、アイトはジャングルの簡易的な地図を作り、その上に五つの点を書き足した。

 ジャングルの中心に一番大きな点、それを囲むように四方に散りばめられるような配置となっていた。

 ユウ少年らが生活している「蒼鉱の洞窟」は、三人が漂着した浜辺に一番近い地点にあった。

 イバラの魔法で俯瞰視点から確認してもらっても、アイトの地図と誤差はなく、煉は納得の表情を浮かべ頷いた。


「――真ん中から行こう」

「……理由は?」

「大体こういう場合は、ゲームでも中心に一番重要なものが置かれるケースがある。そして、中心に入るには何かの鍵が必要とされることが多い。その鍵は、大抵四方の場所から何かを持ってくるとか、そういう試練をクリアするとか。なら、最初に必要な鍵を知るべきじゃないかな、と思うけど」


 煉がそう言うと、二人は呆気にとられたような顔をする。


「……ほ、本当に記憶ないのか?」

「レンさん、記憶ないって嘘なんじゃ……」

「記憶喪失を偽るって意味が分からないでしょ。残念ながら、未だに記憶は戻ってないよ。……自分でも不思議だけど、なんか思いついたんだ。前にこういうゲームをしていたのかも」

「まあ、レンの言う通り、真ん中から行くか! 実際、俺が見てきた時も階段に入れそうもなかったからな。その鍵とやらが必要なのかもしれねぇ」

「アイトさん、そういうことは最初に言ってくださいよ。とりあえず、行きましょう。――ソラ、おいで」


 イバラの目の前の地面に、魔法陣が出現し光を放つ。

 光が収まると、ダークグレーの毛並みをした大型犬サイズの狼が姿を現した。


「おお。これがイバラさんが言っていた狼か~。可愛いなぁ……モフモフじゃん」


 ソラはされるがまま、煉に撫でまわされ、腹を見せて寝転がる。

 和やかな雰囲気が漂い始めたのを感じ、イバラとアイトは苦笑した。

 煉がソラのモフモフを堪能したところで、再び三人はジャングルへと足を踏み入れた。





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