第267話 vs 金獅子
二人の戦いに誰もが息を呑む。
飛び交う金の閃光と紅蓮の炎。ぶつかり合う二つの拳。
そして何よりも、お互いに笑みを浮かべていた。
「――ははははは!! 楽しいね!!」
「悪くはないが、いい加減疲れてきただろ? もう終わらせてもいいんだが」
「絶対に嫌だ! ……それとも、お兄さんが負けを認めてくれるのかな?」
「はっ、まさか。それは絶対に……ない!」
煉が腕を振り下ろすと、コノハの頭上に炎矢の雨が降り注ぐ。
コノハはそれに視線を向けることなく、真っ直ぐ煉へと肉薄する。
そして小さな拳を突き付けると黄金の波動が煉へと迫る。
それを躱しつつ煉は地面に手を付いた。
「――〈噴炎・槍柱〉」
すると、煉が手を付いた地面からコノハに向け数十本もの炎槍が噴き出した。
回避しきれないと判断したコノハは、咄嗟に神気を腕に集中させ体を小さく丸め両腕で顔を覆った。
炎槍は神気の壁を突き抜けることなくコノハによって防がれたが、脇を抜けた一本の槍がコノハの頬を掠める。
頬を伝う血を拭い、コノハは笑みを深めた。
「う~ん……お兄さんの炎はちょっと厄介かも。でも、ウチの神気を壊すほどでもないみたいだし、大丈夫かな」
「随分と余裕みたいだが、その状態を保つのはきついだろ? 持ってあと五分ほどか」
「五分もあればお兄さんを倒すのは十分だよ♪ ――〈獅震脚〉!」
「おっと……」
コノハの強烈な踏み込みが地を揺らす。
そして煉が態勢を崩した瞬間を逃すことなく、一瞬にして煉の懐に入り込んだ。
「まずっ――」
「〈金獅子・正拳〉!」
コノハの正拳突きが、ガードする煉の両腕に突き刺さった。
咄嗟に後ろに飛んで威力を弱めたが煉は腕に痺れを感じ顔を顰める。
その隙に、コノハは畳みかけるように追撃。
「〈金獅子・乱打〉!」
コノハの小さな拳がマシンガンのように放たれる。
力の入らない腕を無理矢理動かし、コノハの拳を辛うじて受け流す煉。
「くっ……」
「まだまだぁぁぁぁ!!」
腕に走る痛みを堪え、コノハの乱打を受け流し続ける煉の顔が歪む。
その様子にコノハはさらに笑みを深めた。
そして楽しそうに煉を煽る。
「お兄さん、これでお終い? やっぱりウチの方が強かったみたいだね♪」
「……調子に、乗んな!」
煉の声と同時に、足元が爆発しお互い距離を取った。
突然爆発したことに吃驚したコノハは、煉から離れた時視線を外してしまった。
顔を上げた時にはすでに煉の姿はなく、どこに行ったのかと視線を巡らせるとステージの至るところに蒼い炎の残滓あるのに気が付く。
「これは――っ!?」
「こっちだ!」
コノハの背後から声、そして背中に強烈な衝撃。
コノハの背を取った煉の蹴りをまともに喰らってしまった。
「がはっ――!」
吹き飛ばされるも態勢を立て直し、煉の気配を辿る。
本能で危機を察知したコノハが空中で体を回転させた。
するとコノハのすぐ側に、煉の踵が振り下ろされ地面を叩き割る。
その衝撃でコノハはさらに吹き飛んでいく。
「く――!」
転がりながら受け身を取り立ち上がるコノハの目前に、すでに煉が迫っていた。
その煉の脚は蒼炎に包まれている。
「お兄さんが速くなったのはその蒼い炎だね! いいね、それ。ウチも真似する」
「できるもんならやってみろ」
そう言って煉はクルっと体を回転させ、回し蹴りを放つ。
すると、それに対応してコノハも同様に回し蹴りをぶつけた。
煉の蒼炎に対して、コノハの脚は金色の光に包まれている。
「……これなら追いつける」
「これだから”天才”ってやつは……いいぜ、第二ラウンドだ――!」
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