第176話 vs 玄武 ②
プルプルと蠢くグラトニースライムは、大きな口から舌を出し主であるグラムの指示を待っているようだ。
「……スライムで何するんだ?」
「玄武の甲羅と思われる部分をよく見てください。ここからでは詳細は分かりませんが、おそらく魔郡帯の島々でしょう。これまでも魔郡帯は謎多き島でしたが、これで判明しました。封じられた玄武の背だったのでしょう。つまり、あの島の下が甲羅本体となる筈です。であるならば、あの背中にあるモノ全てボタンに呑み込ませれば丸裸に出来るかと」
グラムはスライムを優しく撫でながら、自信満々に言う。
嬉しそうにしているスライムを見ると、完全にペットにしか見えなかった。
正直、煉はグラムが何をしようと玄武を討伐できるのならばそれでいいと思っていた。
故にグラムが何をしようと異を唱えることはなかった。
煉は口の端を吊り上げながら、挑発するように言う。
「あれを倒せるのなら、何だっていいさ。まあ、出来なくておめおめ逃げ帰ってきてもそれはそれで」
「……安い挑発ですね。ですが、いいでしょう。おそらく涙を流す羽目になるのは私ではなく、貴方でしょうからね」
「あ゛ぁ!?」
負けじと煽るグラム。
くすくすと笑う声が癇に障った煉は、ものすごい鬼の形相でグラムを睨んだ。
怯むことなく睨む返すグラムと煉の間には火花が散っていた。
「行きますよ、ボタン。今日の食事は大量です」
「……吠え面かかせてやる」
玄武に向かって駆けていく二人を迎撃しようと、玄武は岩塊を飛ばしてくる。
飛来する岩塊は大した速度もなく、ただ巨大であるだけだ。
煉は難なく躱しさらに速度を上げる。
グラムの方では……。
「わざわざ食事をくれるみたいですね。ボタン、〈捕食〉」
グラムを乗せたスライムが大きな口を開け、飛来する岩塊を一息に呑み込んでしまった。
そして何事もなかったかのように進み、世界一の巨樹と言われる世界樹の幹よりも太い足を伝い玄武の背に這い上がっていく。
グラムの行動を気に留めようとしない玄武の殺気は、常に煉へと向いていた。
「あくまで俺が狙いってか。よっぽど封印されたことを根に持ってるみたいだが、俺は大賢者ほど優しくねぇぞ!」
飛来する岩塊を回避し、時に切り捨て玄武の腹付近を走り回る。
その際、『紅椿』によって傷を付けられるか確認するのを忘れない。
常に走り回り切りつけることで、玄武の視界から外れさらに一か所傷がついた箇所を見つけた。
「そこ! 花宮心明流炎の型二の太刀〈紅炎・三日月〉!」
玄武の足に出来た小さな傷をめがけ、大太刀を真横に一閃。
いつの日かゴルゴ―ンを斬った時よりも熱く鋭い三日月のような炎の斬撃が、玄武の足をすり抜け、真っ暗な夜の空を紅く染める。
玄武の足は傷口から炎上し、切り口より下の足先が海に使っているにも関わらず燃えカスとなった。
その結果、玄武の体は支えを失い斜めに傾いていく。
「まず一本……――次ッ!」
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